表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season3 ― 青い残響 Blue_echo ―   作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season3 ― 青い残響 Blue_echo ―
11/12

第7章 reconnect ― つながる光 ―

失われた信頼、揺らぐ理想、見えない絆。

この章では、そんな“断たれた線”がもう一度結ばれ、

彼らがそれぞれの立場で“進化”を選ぶ姿を描きます。


午前10時。

アークシステムズのオフィスには、久しぶりに穏やかな空気が流れていた。


窓の外では、春の陽射しがガラスをやさしく照らしている。

数日前まで鳴り続けていた警告音も、いまはもうない。


なぎはデスクに座り、ノートPCを開いた。

画面の向こうには、「blue_echo」の通信ウィンドウ。

桐生蒼真きりゅうそうまの姿が、淡い光の中に映っていた。



◇◇◇



「改めて、助けてくださってありがとうございます。」

凪が深く頭を下げる。


蒼真はいつもの無表情のまま、ほんの少しだけ口元を緩めた。

「礼を言うのは僕のほうだよ。

 君が動いてくれなければ、僕もここまで踏み込めなかった。」


「……芹澤せりざわさんの件、聞きました。」

凪が静かに言う。

蒼真がうなずいた。


「彼は取り調べを受けている。

 放火、不正アクセス、そしてアークへの侵入――すべてmirror_coreを使ったものだ。

 でも、僕はまだ彼を“完全な敵”とは思っていない。」


凪はその言葉に、少し驚いたように顔を上げる。

「どうしてですか?」


「彼もまた、理想を追った人間だった。

 ただ、信じる対象を見失っただけだ。」


蒼真の声は、いつになく静かだった。

その声音に、どこか深い哀しみが滲んでいた。



◇◇◇



しばらく沈黙が流れる。

凪はディスプレイの中の蒼真を見つめ、

胸の奥で言葉を探していた。


「……僕、ずっと誤解してました。

 蒼真さんがクロノスに残ったのは、

 僕たちを裏切ったからだって、ずっと……。」


蒼真は首を横に振る。

「裏切りなんてなかったよ。

 君が外に出て“自由”を選んだから、僕は“中”に残る必要があった。

 君が動けるように、僕が止まる。

 そうやって、ひとつの理想を守っただけだ。」


凪は目を伏せたまま、唇をかすかに噛む。

「……ずるいですね、それ。」


少しだけ笑って、顔を上げる。

「そんなふうに言われたら、

 もう何も言い返せないじゃないですか。」


蒼真は、ふっと小さく笑った。

モニター越しでも、それは確かに“微笑み”だった。



◇◇◇



「今度こそ、正しい進化を見せてください。」

「ええ、蒼真さんも。」


 > 【進化は、止まらない。】

  ― blue_echo



通信が切れると、画面はゆっくりと暗転した。


凪は椅子に深く身を預け、

静かに息を吐く。


部屋の隅には、たまきが入れてくれたコーヒーの香り。

しゅうが窓の外を見ながら、穏やかに言った。


「……また、ここからだな。」


凪は頷く。

「はい。今度は、ちゃんと自分たちの手で進化させます。」


外の空は、どこまでも青かった。

その青はまるで、画面の向こうに消えていった蒼真の残響のように、

静かで、あたたかく、まっすぐに広がっていた。


凪の胸の奥で、何かが確かに再起動した。

それはコードではなく――希望の音だった。

裏切りや誤解の中でも、

“信じる”という選択を手放さなかった凪と蒼真。

そして、彼らを支え続けた環と柊の存在が、

まさにこの世界の「光」そのものでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ