表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/13

特殊廃棄物処理施設

時刻はゼミの後の深夜二十二時。場所は回転するステーションの中心部に近い第六居住区。

ケンはエリックと一緒に薄暗い場所へ忍び込んでいます……


12


ゼミが終わったあと、俺とエリックは夕方の実験でゴミとなったパーツを捨てて新たなパーツを探すために第六居住区へ来ていた。


第六居住区は回転するステーションの中心に近いため、発生する疑似重力も地球の六分の一程度の低重力環境だ。

俺は地球の月には行った事ないが、ここはその月と同程度の重力らしい。


時間は深夜二十二時。

ステーション内の通路も夜間モードになっているので照明も少し暗めの設定になっていた。


俺たちは隔壁(かくへき)の壁一面が可動式シャッターになっている場所に来た。ここのシャッターは基本的に施錠されていないので誰でも入ることができる。

シャッターを開けて中に入ると薄暗い空間が広がっており、どこかの計器のパイロットランプなのか、赤く小さな光がいくつか点滅していた。


ここはローウェル3特殊廃棄物処理施設、通称「粗大ゴミ置き場」

処理施設という名前は付いているものの実際には簡単に再利用することは難しいと判断された粗大ゴミを溜め続けているだけのなんとも名前負けしている場所である。

ステーションで出たゴミは素材ごとに分解され再利用するためにリサイクルに回されるが、そのままリサイクルできない有機物系のゴミなどはいったんここに集められた後、ステーションの中央部にある太陽光処理施設で加熱分解され、ガスや炭素として回収される。

資源の乏しい宇宙空間に浮かぶステーションでは、物質そのものが貴重な財産なのだ。


俺たちは夕方に壊れたエンジンやいくつかのパーツを雑にその他のゴミの上に放ると、使えそうなエンジンの物色を始めた。


「この前、飛行艇のイオンエンジンが捨ててあったのって、この山の上だったよな?」


俺は着ている耐衝撃スーツに装備されているヘッドライトで粗大ゴミの山を照らしながら歩いているエリックに言った。


「うん、たぶん。あの装置には見覚えがあるし……あ!」


俺と同様に耐衝撃スーツに身を包んだエリックが数メートル先にあるデカいガラクタを指差した途端、声を上げて駆け出した。


「お、おい! ちょっと待てよ!」


慌ててエリックの後を追いかけようとしたが、普段、第四居住区で生活をしている俺にはいつもよりも低重力環境であるこの粗大ゴミ置き場は走りづらい。

俺は何度も転びそうになりながらエリックの背中を追いかける。どうしてあいつはあんなにポンポンと動けるんだ……。


「ケン!! ちょっとこれ見てよ!」

やっとのことで追いついた俺に向かって、エリックが興奮気味にまくし立てる。


「これって地球製じゃない!?」

エリックが指差しているのは、どうやら製品についているロゴマークだった。水色の丸の中に白いグニャグニャした線が何本か描かれている。昔の文字の文体だったはずだ。

ところどころ(かす)れて見えにくくなっているものの有名な電機メーカーのそれのようだ。


「ああ、確かにこのロゴは地球のメーカーだな。よくそんな細かいマークをあの距離から見つけたな……」


「だよねだよね。いいなぁ。持って返ろうかな。って、ああ、目だっけ? 左目は二十倍の望遠機能付けてるからね。便利だよ。いやぁ、ラッキーだな……」

「は? え? お前、目を移植してたのか?」


エリックはまるで宝物を見つけたように喜び笑っているが、意外な情報を急に知らされた俺はひどく動揺した。

確かにケガや病気で人工臓器を移植することは一般化している。ただそれはケガや病気をしたときの話だ。

全身のパーツを機械に置き換えてサイボーグに……なんてSF映画のような風潮は現代でも無い。


「いつからだよ。病気だったのか? 目のケガなんかしていなかったろ?」

「いや、病気でもケガでもないよ。単純に便利だから半年前に交換してみたんだよ。交換も今じゃ自動手術機(サージェリーマシン)で簡単にでできるからさ。」

「交換ってそんな……簡単に言うけど。って元々の眼はどうしたんだよ。ちゃんと見えていたんだろ」

「交換した時に医者に買い取ってもらったよ。生の眼が欲しいって患者さんもいるみたいでさ。眼の買い替えの下取りみたいな感じかな」

「下取りってそんな。……はぁ、まぁ、そうなのか」


ため息が出たが、まあ、エリックならやりかねない。

大学に入り二年間一緒に過ごしてきたので、ある程度やつの行動にも慣れてきたつもりだったがまさかここまでとは……。

うん、まあ、いいや、納得したことにしよう。リコだってピアスぐらいあける。ユマ教授だって手にインターフェースケーブルを埋め込んでいる。


「まあともかくお前が地球製にこだわるのも分かるがそれ多分食器洗い機だぞ。料理しないんだからやめとけって」


「んー、確かにそうなんだけどね……」


「それに今日はさっきの爆発でイカレたエンジンの替えを探しにきたんだろ? 研究室にももう使えるエンジンは無いからって、わざわざ粗大ゴミ置き場まできたんだ。もう一回往復するのなんて俺はご免だぞ」


一分ほど悩んだ末にエリックは諦めたように

「うん……そうだね。今日はエンジンを探さないといけないよね」

とつぶやいた。


しかし言葉も虚しく、その後も予想以上に地球産の機器がエリックにより発見され、そのたびに機械に関する蘊蓄(うんちく)や豆知識の説明、そして諦めるための説得が繰り返された。

俺たちが代わりのエンジンを見つけて接続区画の実験倉庫に持ち帰ったのはそれから三時間後のことだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
エリック型破りでええキャラですね~ この子怖いかもって思いましたけど、やっぱ魅力ありますね〜(//∇//) 便利だと思ってって理由だけで健康体なのに義眼に異色しちゃうぶっ飛びさ、結構好きですw(…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ