答え
戦いは一進一退の攻防を繰り広げた。
両者は共に息ひとつ乱さずに、睨み合っていた。
「娘よ」ライラが口を開いた。「そなたは何故、戦う?」
はぁ?と、レーミアは声をあげた。
「言っただろ。貴様が〈世界〉を壊そうとしてるのを阻止する為だよ」
ライラは首を横に振った。
「違う。我が聞きたいのは、そなたの本心だ。そなたは、〈そなた〉の生きてきた〈世界〉を壊したい、と願った事はないか?」
沈黙が降りた。
レーミアは、ため息を吐いた。
「そりゃ」コクンと頷く。
「あるさ。...数え切れないくらいな」
ライラの瞳が光る。
「ならば、何故〈壊そう〉としなかった? そなたならば〈可能〉であったろう?」
レーミアはボリボリと頭をかいた。
「んー、まぁ、〈出来る〉だろうな...」けど、と続けた。
「私さ、〈本〉が好きなんだよ。本を読んでればさ、お姫様にも悪女にも、天使にも悪魔にも...なんて言うかな...」レーミアは言葉を切った。
天を仰ぐ。
「自分の置かれてる境遇を忘れさせてくれる、からさ」でもさ、と続けた。「仮に〈世界〉を壊すとさ、いままでの積み重ねの歴史?みたいなもんも消え失せるだろ? それは嫌なんだ」
上手く言えないんだけどさ、とレーミアは言った。
「私は〈自分〉を否定したくはないのさ。だから私の力で〈世界〉を壊しはしないよ」
その言葉にライラはわなないた。
「ならば、どちらかが死ぬまで、だな」
レーミアの言葉に人々は―見張りたちも―しん、となっていた。
その瞳には、確かに〈聖女〉の姿が映っていた。