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この石には意志がある!  作者: 一狼
第3章 ブロークンハート大陸・海渡編
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038.VSリヴァイアサン2

ジル:引き続きご都合主義発動中ー

 ぼーちゃんの伸縮突きがリヴァイアサンに突き刺さった。


 その反動で、支えにしていたへきちゃんにぼーちゃんの衝撃がドンッと伝わる。


「やったかっ!?」


 マックス、そのセリフはお約束(ダメ)だ。


 俺は【望遠】と【鷹の眼】を使いその結果を見る。


 くそっ、マックスのお約束の所為か、リヴァイアサンの眼を狙っていたぼーちゃんの先端は眉間に突き刺さっていた。


 攻撃の瞬間、危険を察知したのか、リヴァイアサンは僅かに首を傾げ避けたのだ。


 リヴァイアサンの硬い鱗を多少へこました程度で、多少脳を揺さぶられた程度でそれ程ダメージはなさそうに見えた。


 その手応えに、ジルも失敗を悟ったのか、直ぐに次の狙撃する。


「もう一回ー!」


 一瞬でぼーちゃんを元の長さに戻し、再び伸縮突きを放つ。


 流石S級と言うか、2発目の狙撃はリヴァイアサンには通じなかった。


 再び眼を狙ったジルだが、ぼーちゃんの先端はリヴァイアサンの口の中を攻撃していた。


 古今東西、口の中は柔らかく攻撃が通じる唯一の手段でもある為、俺は一瞬やったと思ったが、リヴァイアサンは意にも介さず口の中に入ったぼーちゃんを咥え込む。


 ――――――ッ! ヤバいッ!!


『ジル! ぼーちゃんを放―――――――――』


 俺が言い終わる前に、リヴァイアサンが首を振る。


 ジルとリヴァイアサンを繋ぐぼーちゃんの長さはおよそ3km。


 つまり、リヴァイアサンが少しぼーちゃんを振るだけで、3km先に居るジルは一瞬にして数km振り回されるのだ。


「―――――――――ッ!!」


 一瞬にしてジルは小舟を含む凍らせていた足場から飛ばされ、海の上を石切りのようにバウンドする。


 俺は咄嗟に【レビテーション】の魔法でジルを海の上に浮かべた。


『ジル、ふーちゃんを呼び戻せ!』


 ふーちゃんはリヴァイアサンを海上に浮かび上がらせるために今は手元に居ないが、石空間に仕舞えば直ぐにまた石空間から取り出せる。


 ジルは俺の声に反応して直ぐにふーちゃんを呼び出し、その上に蹲って咳き込む。


「げほっ、げほっ」


『ジル、作戦は失敗だ。直ぐに逃げる―――』


 俺はリヴァイアサンを【望遠】と【鷹の眼】で注視しながらジルに撤退を促そうとしたが、当のリヴァイアサンはジルを敵と認識したのか既にこちらをターゲティングしていた。


 そしてリヴァイアサンの喉が膨らむ。


 おい、まさか―――


 ゴウッッ!!


 吐き出されたのは巨大な火球。


 って、海龍が火の玉ブレスを吐くのかよっ!!!


 3km先からでもあっという間にジルに迫る巨大な火球。


『ちぃっ! 【バリア】! 【シールド】!』


 俺は【バリア】と【シールド】の複合防御で火球を防ぐ。


『ジル、今の内に逃げるぞ! まずはふーちゃんでマックスの―――』


「ごほっ、違うよー、きゅーちゃんー。向かうのならあっちー」


 そう言ってジルが指差す先はリヴァイアサン。


『お前何を言って……』


「私まだ生きているよー。S級と言われるモンスターの攻撃からー。つまり私達、まだやれるんだよー」


 あー、そうだった。このお姫様は勇猛果敢で引く事を知らないのかと言わざるを得なかったが、それがジルの強みでもあるんだよな。


 それに俺はジルの勇猛さに付き合おうって誓ったっけ。


『分かった、こうなったらとことんやろう。逃げるのはそれからだ!』


「うんー!」


 先程の火球で仕留められなかったのを悟ったのか、リヴァイアサンは次のブレスを放つ。


 ゴゴゴゴゴウッ!!


 ちょっ!? 5連発!?


『ジル、避けろ!』


「ううんー、違うよー、きゅーちゃんー。こうするのー」


 俺は【バリア】と【シールド】の準備をしながらジルに避けろと言ったが、ジルは何を思ったか、迫りくる火球の1つに向かって行く。


『ちょっ! 何をするつもりだっ!?』


「きゅーちゃんー、私が攻撃したら直ぐに防御をお願いー」


 そして巨大な火球に向けてぼーちゃんの伸縮突き。


 ぼーちゃんの弾丸のような伸縮突きは火球を突き抜けブレスを吐いた直後のリヴァイアサンの口の中に突き刺さる。


 今度は咥えられない様に直ぐにぼーちゃんの長さを戻した。


『ゴァァァァッ!?』


 まさか二度も口の中を攻撃されるとは思わなかったリヴァイアサンは、驚きを顕わにする。


 そしてこちらは巨大な火球を盾代わりにして攻撃の瞬間を見られないようにしたわけだが、その代償として巨大な火球が目の前に迫っていた。


『無茶が過ぎるぞ、ジルぅ!! 【バリア】【シールド】【温度管理】【水温調整】!!!』


 ほんの十数m先で辛うじて火球を防いだ。


「うぁっぷー」


 その衝撃で周囲の気温は一瞬にして上がり、飛散した海水は高温となってジルを襲う。


 が、咄嗟の【温度管理】と【水温調整】のスキルの使用でジルには被害は及ばない。


 戦闘スキルじゃないが地味に役に立っているな。


 とは言え、このままじゃジリ貧だ。


 唯一のリヴァイアサンの遠距離攻撃の手段であるぼーちゃんは警戒されている。


 どうする―――?


 こんな時の為の俺だろう。何か手を思いつけ!


 広い大海原、降り注ぐ太陽、戦闘により荒れ狂う烈風、何でもいい、何か手は――――――


 あった、1つだけリヴァイアサンに通じるかもしれない魔法が。


『ジル、これから大技を放つ。ジルは俺の攻撃の後にリヴァイアサンに止めを刺せ』


「流石はきゅーちゃんー。きゅーちゃんの後に攻撃をすればいいんだねー」


『但し、俺はこれからその大技に意識を集中するからジルのサポートが出来ない。ジルはリヴァイアサンの攻撃を躱し続けなければならない。出来るか?』


「大丈夫だよー。任せてー。ふーちゃんが居ればお茶の子さいさいだよー」


『よし、なら行くぞ』


 リヴァイアサンへ反撃開始だ!












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