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Si Vis Pacem, Para Bellum  作者: 黒桃姫
学園編
9/73

7話:過去との再会

 朝、登校すると、俺の席の前には、女性がいた。確か、生徒会長だったはずだ。それなりの容姿を持っているので、支持される理由も分かる。確か、校則改正によって、校風が良くなったとかで、生徒賞という功績を残した生徒に送られる賞を一年生にして、三つ貰ったらしい。今は、二年生になっている。

「貴方が、漣君かしら?」

「そうですけど」

どうやら、生徒会長は俺に用があるらしい。それもそうか、俺の席の前に立っているのだから。

「単刀直入に言うわ。生徒会に入ってくれないかしら」

生徒会に入る。そういうことか。しかし、何だって俺が、生徒会に入れさせられるようなことになっているのだろうか。入学からたったの数日。その間、特に、これといって目立つようなことはしていない。

「学力的な問題よ。貴方の入学試験の成績を見させてもらったのだけれど、全教科九十点以上の学力。生徒会に必要な逸材よね」

どうやら、入試の学力を買われた様だ。しかしながら、あの成績は、《PP》の偽造である。正式な入試は受けていない。学力訓練こそ受けたものの、実際の入試なんかは、ほぼスルーなのである。そもそも、実際に入試なんて受けたら、一般中学生より低い学力の俺には、受かるかどうかすら危うい点になるだろう。

「他には、そうね。一応、承諾を得たのが、このクラスにもいたわね。如月周さん。後は、隣のクラスである境出加奈穂さんと、」

「?!」

思わず、反応をしてしまった自分は、本当に阿呆である。あからさまな反応に、生徒会長は意外そうな顔をする。

「あら、境出さんとは、御知り合いかしら?」

「いえ、別に」

俺は、焦りを内に留めて、否定をする。

「まあ良いわ。では、考えておいてくださいね」


 境出加奈穂は、小学校に上がって、しばらくの後、引っ越した、所謂、幼馴染である。彼女とは、引っ越してから数年間、手紙や年賀状のやり取りくらいはしていたが、周と遊ぶようになった頃から、その手の連絡はしなくなっていた。


 俺の記憶の中の、加奈穂は、赤茶の髪をおかっぱに切っている至極普通の少女だった。今となっては、かなり変わっているに違いないが、まあ、関わらないのが懸命だろう。加奈穂が俺のことをどれくらい覚えているかは分からないけれど……。


 しかし、周と言い加奈穂といい、この学園には、何故、知り合いが多いのだろうか。何か、おかしいと思わないでもないが、まあいいだろう。《運命》とやらなのかも知れないな。


 そして、俺は、加奈穂との再会を果たした。その発端は、藍にあった。藍が、周に差し入れを持っていくと言うのだが、なぜか、俺まで、ついていく羽目になってしまったのだ。そして、生徒会へ向かった。俺の両手には、山のような菓子。藍の手には、茶葉や、ティーカップなど。

「ここが、生徒会室ですかね?」


 俺と、藍は、ノックをして、返事を待った。すると、間もなく、生徒会長の声がした。

「どちら様ですか?」

そして、ドアが開き、生徒会長が顔を出す。

「あら、漣君。もしかして、朝の話、承諾してくれたの?」

「いえ、朝の話は、お断りします。ですが、高野さんが差し入れを持っていくと言うので」

そういって、中に入ると、机に菓子の山を置いた。まだ誰もいないようで、都合が良い。誰にも会わないうちに帰りたい。周、加奈穂、どちらとも積極的に関わる真似は避けたいからだ。

「それでは、俺は、これで」

そうして、ドアのところにいた、生徒会長に声をかけ、外に出た。


「きゃっ」

「あ、大丈夫ですか?」

外に出たところで、人にぶつかってしまった。多分焦っていたからだろう。普段なら、人が来ていることくらい、分かるのに。

「だ、大丈夫です」

そういって、俺がぶつかった相手は顔を上げた。


 時間が止まるような感覚に陥った。息が出来ないような、そんな感覚。頭の奥深くで、何度も思い浮かぶ顔。赤茶のおかっぱの至極普通の少女。髪の長さや、見た目の印象は変わっているものの、間違えようの無い、姿。境出加奈穂だ。

「み、」

「すまない、急いでいるから」

俺は、何かを言おうとした、加奈穂を置いて、先に走る。そのときに、加奈穂が言った言葉を俺は、聞かなかったことにした。

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