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Si Vis Pacem, Para Bellum  作者: 黒桃姫
死の結晶編
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49話:戦い―《神道》と咲耶、《藍》

 私は、走っていた。敵を見つけたからだ。ここは、部室塔。私が、ここに来たのは偶然に近かったが、しかし、敵を見つけたら、戦うしかない。ワルサーを抜き、威嚇射撃を撃つ。

「止まりなさい。それ以上動くと撃つわよ!」

相手はおそらく、《死の結晶》のメンバーだ。ワルサーを二丁とも構え、私は、聞く。

「ここで何をしようとしていたの」

「ただ、この建物を破壊しようとしていただけだ」

中年の男。それも、鍛え上げた体がよく分かる。まるで軍人、いや、傭兵のような、体つきだ。かなり強い。だが、引かない。

「おとなしく捕まれば、攻撃はしないわ」

しかし、男は、私の方に向かって歩き出す。殺気を感じた。間違いない。この男、私を殺す気だ。


 銃声が鳴り響く。その数、二十一発。その二十一発の弾が、お互いを弾いたり、壁に当たって跳弾したりして、相手に向かって飛んで行く。この技は、《千本桜》。一見バラバラに撃ったように見えて、正確に狙って撃つ技よ。その跳弾して広がる様子は、桜の枝が、どこまでも広がっていくようで、跳弾の際に飛び散る火花は、まるで桜の花が咲いて散る様。それが、《千本桜》という名前の由来。


 男は、その銃弾の複雑で読めない軌道を見抜いたかのように、するりとかわす。そして、男は、銃を抜いた。トリガーが引かれ、弾が飛び出す。その弾は、見事に、私の元へ飛んでくる。だが、それを、ギリギリ避ける。髪の毛が数本持っていかれたが、私には傷はない。

「ほう、なかなか。だが、そんなものか」

男の膝がこちらへ向かってくる。そう認識したときには、意識を失った。



 私が意識を取り戻したとき、男の拳銃が、私に向いていた。もう、発射直前。しかし、どこからか足音が聞こえる。男は、少し、そちらを見るも、すぐに私に視線を戻す。そして、引き金が引かれた。しかし、私の意識が途切れることがなかった。急に、私の前に、誰かが飛び出してきたのだ。その飛び出してきた誰かは、倒れる。

「情に流されたか、《群青》」

高野藍。その少女が、倒れている。腹から血を流して。彼女は、何故私を庇ったのだろう。


 男が、この場を去っていく。そして、藍は、意識が朦朧としているようだが、それでも、何かを話そうとしているようだ。

「ねぇ、咲耶。一つ、昔話をしましょうか」

急に、何を言い出したかと思えば、そんなことだった。

「昔、ある家に、双子の姉妹がいたの。その家は、不思議な家。昔から、《不思議な力》をもつ子が生まれる家だった。姉は、その力を全然継げなかった。だから追い出されてしまったの。妹は、大事にされた。でも、その《不思議な力》のせいで、鮮やかに染まった《桜色》は、奇異の目で見られた。そんなすれ違いの姉妹は、今はどこにいるのかしら」

何を、言っているのだろうか。私には、分からない。いや、分かれない。

「姫野飛鳥。それが、私の本名よ」

高野藍、いや、姫野飛鳥。私の姉。そして、その姉は、倒れている。誰のせいで。私のせい。だから、私は、あの男を、ぶっ殺す。何故だろう、胸が、体が、怒りに震えている。そして、身体に痛みがないことに気がつく。そして、自分の髪が、一瞬見える。それは、自分で染めた《漆黒》の髪ではなく、鮮やかな《桜色》。私は、髪を結っているリボンを解く。意識が覚醒する。殺意、怒気、いや、違う。これは、意志。


 私は、廊下を駆け抜ける。そして、しばらく進んだところで男に追いつく。

「待ちなさい」

私の声に男は、少し、驚きを示すが、すぐにもとの顔に戻る。

「どういう原理だ、その髪は」

どうやら、この男は、私たちの《力》は知らないらしい。《桜》、《朱》、《緋》の三色が現れるこの力。超回復能力。自分、もしくは、他人の傷を直すことの出来る力。今の私に、攻撃は効かない。だから、人間の本当の力が使える。人間の力は、百パーセントではないとよく言われる。それ、百パーセントの力を使うと、身体が耐え切れないから、脳が勝手に抑えると。だが、今の私は、それが、ない。百パーセントの力を使っても、瞬時に回復する。

「一撃で、決めるわ」

「ほう、先ほど、手も足もでなかった者の言う台詞か?」

そして、私は、駆ける。男との間を。そして、重い一撃を食らわせる。

「グハッ」

男が、血を吐き、倒れる。だが、それは一瞬。すぐに立ち上がり、壁を蹴り、私との距離をとった。

「お前、いったい何者だ。まあ、いい。俺は《神道》。またいずれ、会うかも知れんな」

男は、窓を破り逃走する。私は、姉の元へと戻った。


「ありがと」

姉の傷は私の力を使って治した。姉のお礼が、ここに染み渡る。気がついたときには、また、《漆黒》の髪に戻っていた。


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