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モテすぎる俺、好意が重すぎて人生崩壊しかけてる ~ その好意、全部バグです~  作者: レモンティー


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第一話:なぜか放っておかれない男

春の夕方。駅前のカフェ。

「……なんでだよ、これ」

神谷 恒一は、カップを持ったまま小さくつぶやいた。

「また見られてる……よな」

ちら、と視線を動かす。

目が合う。

逸らされる。

「ほらな……」

向かいの席は空いている。誰もいない。

なのに落ち着かない。

「俺、なんかしたか?」

誰に言うでもなく、ぼそっと漏らす。

そのとき。

「ねえ」

「……はい?」

「ここ、座っていい?」

顔を上げると、女性が立っていた。

落ち着いた服装。だが目が鋭い。

「どうぞ」

「ありがと」

すっと座る。

距離が、近い。

「……あの、知り合いでしたっけ」

「ううん、初対面」

「ですよね」

「でも、さっきから気になってた」

「気に……?」

「うん。あなただけ空気違うし」

「いやいや、そんなこと――」

「あるって」

即答だった。

「自覚ないでしょ」

「いや、だから何がですか」

「全部」

「全部?」

「見た目も、雰囲気も、あと――」

彼女は少しだけ間を置いて、

「“引き寄せ方”も」

「……引き寄せ方?」

「人を」

コーヒーを一口飲む。

「危ないよ、それ」

「いや、だから何が――」

「無防備すぎる」

「無防備?」

「そう。自分がどう見られてるか、わかってない」

「そんなこと言われても……」

「ほら、今も」

「え?」

「見て」

言われて振り向くと、二人組の女性と目が合う。

「……うわ、また逸らされた」

「でしょ?」

「いや、たまたまじゃ――」

「たまたまでそんなに見る?」

「……」

「ね?」

言い返せない。

「忠告しとく」

「忠告?」

「気をつけなよ。そういうの、トラブル呼ぶから」

「いや、もう呼んでる気がするんですけど」

「ふふ、確かに」

彼女は立ち上がる。

「じゃ、私はこれで」

「え、もう?」

「うん。深入りすると面白くなりすぎそうだし」

「どういう意味ですかそれ」

「そのままの意味」

「ちょっと待――」

「またね」

ひらっと手を振って、去っていく。

「……なんだったんだよ」

ぽつり。

だが、余韻が残る。

「無防備、ねえ……」

その瞬間。

「神谷くん?」

「え?」

「やっぱり神谷くんだ!」

「えっと……」

「覚えてない? 一回だけ話したじゃん!」

「……あー……えっと」

「ひどくない!? あんなに話したのに!」

「いや、あの、すみません……」

「もういい! じゃあこれから覚えて!」

「これから!?」

「うん!」

ぐいっと距離を詰められる。

「今日ヒマ?」

「いや、今日はちょっと――」

「ご飯行こ!」

「いやだから――」

「ちょっと待って」

横から別の声。

「その人、先約なんだけど」

「は?」

「は?」

「え、いや俺は――」

「さっきから見てたけどさ、割り込みはよくないよ?」

「いやいや、あなたこそ誰ですか」

「こっちのセリフなんだけど?」

「いや、俺に聞いてくださいよ!?」

「神谷くん、どっち選ぶの?」

「選ぶって何!?」

「決まってるでしょ」

「いや決まってないです!」

「優柔不断だね」

「初対面で言われる筋合いないんですけど!?」

「じゃあ私と行くよね?」

「いや行かないです!」

「え、なんで!?」

「なんでって――!」

店内の空気が、妙にざわつく。

「……見られてる……」

「そりゃ見られるでしょ」

「こんな状況で見ないほうがおかしいって」

「いや俺が言いたいのはそういう意味じゃ――!」

「神谷くん、早く」

「早く決めて」

「だから決めないって!」

頭を抱える。

「……なんでこうなるんだよ……」

そのつぶやきは、誰にも届かない。

いや――

「だから言ったのに」

さっきの女性の声が、どこかで重なった気がした。

「無防備だって」

「……マジかよ……」

彼の平穏は、今日も崩れていく。

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