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おっさんとフレブル  作者: 水前寺鯉太郎
第1部 いい日旅立ち・西へ

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広島県呉市①

2027年4月1日

 仕事から帰ると、テーブルの上に緑色の紙が置かれていた。琴音の荷物はもう、どこにもなかった。

靴箱は妙に軽くて、いつもそこにあるはずのスニーカーが一足足りない。

何がいけなかったのか。

 問いかけても、答えは返ってこない。ただ、空っぽの部屋の音が耳に残る。

 思い当たる節など、ない。――いや、ないはずだった。

 けれど最近の彼女の帰宅時間、増えていた外出、知らない服。全部、どこかで見て見ぬふりをしていた気もする。

 いつも通り鍵を回し、「ただいま」と言ったとき、返事がなかったのは初めてじゃない。

 ただ、それを“初めてちゃんと気づいた”だけだ。

テーブルの上の離婚届が、やけに軽く見えた。

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