プロローグ
ある日の午後、ヨシュカ村の近くに「そいつ」は現れた。
そいつは金属で構成された大きな身体をしていた。
ヨシュカ村の人々は最初こそ遠巻きに見ていた。だがどうやらそいつが動かないらしい、ということがわかるといっせいに近くによって観察し始めた。
四角い巨体に短い四肢、こいつは一体なんなのだろう。人々の間では憶測が飛び交った。
─魔物の死骸だろう。鉄でできた魔物だ。
─いや、まだ生きてて眠ってるのだろう。
─大きなゴーレムのようなものかもしれない。
─神様の使いだろうか。
─いや、神様そのものだ。
─ものしりユホルに聞いてみよう。
ユホルというのは、この村に住む亀の獣人だ。長く生きていて、ヨシュカでいちばんものを知っている。
村人達はユホルの家に向かった。
─ユホル、あれがなにかわかるか?
窓からそいつを見たユホルは、首をゆっくり横に振った。
村人達は困り果てた。ユホルが知らないことならば、村人達が知っているわけがない。あれは一体なんなんだろうか。
ひと月半後、そいつはヨシュカ村の待ち合わせ場所になっていた。
結局そいつは動かなかったし、その巨体はやたら目立つからだ。