1、起こり
「こんなことってあるかよ…」
雲ひとつない青空の下、一人の男が頭を抱えていた。
「オーマイゴ…いやゴッドはオレだしな…オーマイ、オーマイなんだろうな…」
なんだこいつ、今悩むべきはそこじゃないだろ。だが「ゴッドはオレだしな」という言葉から、このバカが神であることが判る。こんなバカでも神が出来るんだな。
さて、このバ神がほんとは何に対して頭を抱えるべきなのか。その答えは神の目の前にどっかと鎮座している。鎮座?鎮座じゃないかもしれない。だって神の目の前にいる、いや、あるのは
トラックだからだ。
え?トラックだよ。いや競技場のやつじゃない。荷物を運搬するのに使うデカくて四角い車だ。
「トラックに轢かれて転生は最近多いけどな…。トラックの方は初めて来た…。来ると思わなかったもんな…」
そりゃそうだ。轢かれて転生は最近の流行りだけど、トラックは「転生させる立場」であって「転生する側」だなんて話は聞いたことがない。驚きもするし困惑もするだろう。神でもね。
正直に言うとこのバ神、このトラックの処分に困っている。トラックを転生なんて前例がないからね。ただ、だからってかわりにどうすればいいのか全く検討がつかない。バカだからね。神様なのに。
「うるせえな、勝手に信仰されてるだけでこっちはただの仕事なんだよ」
うるさい。地の文と会話するなバカ。
「まあ新規でトラック用に書類作って上に提出するのめんどいな。今まで来たやつと同じ感じで異世界に飛ばしとくか」
そんな適当でいいのかよ。呆れたもんだ。
兎にも角にも、哀れにも死んでしまったトラックくんは異世界に転生することに決まった。
死んでしまったと言ったけど、トラックくんがなんでこうなったか、そもそもの話をしよう。
あれはある日のことだった。
こういうのだとさっきも言ったように、主人公がトラックに轢かれるのが定石だが、この日も同じだった。
人が歩いてて、十字路にさしかかり、そこに居眠り運転のトラックが突っ込んできた。ただ運の良いことに、トラックくんからすれば運の悪いことに、轢いた相手は全身が鉄でできていた。
鉄の人だ。マン・オブ・スティールと言ってもいい。体の表面から筋肉の隅々まで。もちろん脳だってカチコチだ。
そういうこともある。筋肉の隅々まで鉄でできてる鉄の人の密度の前にトラックくんはあえなく敗北、今に至るという訳だ。
たぶん今まで送られてこなかったここの管轄にいきなり送られてきたのは、轢いたところまでシチュエーションが一緒だったからだろう。死んだものを仕分けをして各部署に送るAIはたまにこうやってガバる。
とまあ、こういうわけだ。哀れなトラックくんはこれから新たな世界で人生(トラック生?)を謳歌してもらうことになるだろう。
「ほいじゃ、送りまーす」




