彗星国家エルス
第36話
同じ頃。
ウラニス7の外宇宙では別の脅威が迫っていた。
彗星国家エルスである。
かつて巨大な彗星群を拠点としていた国家は居住圏を失いつつあった。
資源不足は深刻化し、希少鉱物や情報資産だけでは国家を維持できなくなっていた。
彼らは新たな土地を求めて各惑星へ侵攻を開始する。
ウラニス1とウラニス6では抵抗が強く、早期撤退を余儀なくされた。
だがウラニス2とウラニス7には執拗な攻撃を続けていた。
ある夜。
警戒網に異常反応が発生する。
村の上空を赤い光が横切った。
「敵襲!ゲート発生!」
警鐘が鳴り響く。
空から降下してきたのは兵士ではなかった。
大型のメレピー群だった。
土地開拓と住民排除を目的とする非武装型個体。
だが、その巨体だけで十分な脅威だった。
畑は踏み潰される。
家屋は破壊される。
逃げ遅れた住民が次々と襲われる。
ヒュラとネラは防衛隊を率いて応戦した。
激しい戦闘の末、侵入部隊は撃退される。
しかし犠牲は小さくなかった。
誰もが理解し始めていた。
次の戦争はすでに始まっている。
本部は来るべき遠征に備え、大規模な模擬戦制度を導入する。
外ではエルスが迫る。
本部
ヨダ「一般街に敵襲が現れるとは珍しい」
セルラ「最近の奴らは法破りが過ぎるぜ」
ルーク
「奴らエルスの目的は民の地そのものだ。一般街に侵略するのはなんら変な事ではない。」
ハレク
「我々も軍部としてだけ動いていると痛い目に遭うわけだ。
一般人を守るための戦い方を身につけなければな。」
数日後。
エルスから侵略型メレピーが送り込まれる。
2級のタコ型のオクトパと、1級モウセンゴケ型のモウセンゴとミサイル型のミサイ、0級のハエトリソウ型のフィルトリソ、準1級ウツボカズラ型のウツボカヅである。
ナークがオクトパの口からの攻撃を、フィールドでバリアしながら弾き飛ばす。
モウセンゴが針状に葉から強力な粘液を出す。ナークの針状フィールドを溶かす。ウツボカヅが、袋から粘液を出す。同じくナークのフィールドを溶かす。
ナークは槍にフィールドを纏わせて遠くから突き刺していく。
ミサイが発射してナークに体当たりしに来た。ナークは間一髪で交わし、折り返してくるミサイを高速の槍で仕留めた。
その槍でフィルトリソを突くが、葉が閉じてフィールドを纏わせた槍からフィールドをむしり取ってしまう。ナークは槍に力を込めてぐるぐる回し、フィルトリソを切り刻んだ。粘液が飛びかかるのをフィールドのバリアで防ぐ。
ギークが横で爆弾を作ってあちこちに飛ばし、食虫植物群は次々と倒れていく。
強力な爆発である。
衛星国家からの侵略者も多数。
ラムとテルセウスが空からバリリオンズを観察する。ラプラ国とシュバルツェ国からそれぞれ来た者だった。
食虫植物群に指示を出す。
前線にネバナが防御層を張る。
ウツボカヅが後ろで待機する。
モウセンゴとフィルトリソが中央で陣取っている。
そこに、ティーラとミサイが攻撃に出た。
衝撃波とミサイの高速攻撃を必死にシールドで受けるナークとギーク。
ナーク
「こう連携されると厄介だな。一体一体がそこまで弱くないからな。複数だとだいぶ堪えるな。」
ギーク
「数で勝負に来るなら、こっちも物量でねじ伏せるまでだ」
ナーク
「市街地だとそうもいかないぞ」
ギークが手から爆発物を放つ。ネバナの前線が崩れかかる。
ナーク
「今のうちは敵陣が市街地から離れているから強力な攻撃で敵を一掃することも可能だが、今後こいつらの侵攻を許してしまえば、そう単純な戦いとはいかない。特にこいつら、メレピンを吸収して栄養補給するようなタイプだから、一般人に交わらしたら厄介だぞ」
彗星国家エルスでは、失われた居住地を巡って、内部で、反乱が起きていた。
その中でも、強硬派が、他国家への侵略という形で外交権を握り、最も支持を集めていたのだった。
ジスがエルスの民に呼びかける。
「諸君。我々は何年も、飢えてきた」
「何年も、子どもたちの泣き声を聞きながら、何もできずに空を見上げてきた」
「何年も、故郷が崩れ落ちるのを見てきた」
静まり返った広場で、ジスは民衆一人ひとりを見渡した。
「世界は我々に同情したか?」
「違う。誰一人、我々を救わなかった」
「強国は資源を抱え込み、豊かな星は食料を蓄え、我々には憐れみの言葉だけを寄越した」
「飢えた子どもは、その言葉で腹を満たせるのか」
「老人は、その言葉で冬を越えられるのか」
誰も答えなかった。
「答えは、否だ。」
ジスは拳を握る。
「だから我々は立ち上がる」
「これは略奪ではない」
「生きるための権利を取り戻す戦いだ」
「我々は他者の未来を奪いたいのではない」
「我々自身の未来を取り戻したいだけだ」
群衆の中から賛同の声が上がる。
「ウラニス7は豊かな星だ。」
「巨大なメレピン資源。安定した生産能力。発達した都市」
「そして、それを守る軍」
「彼らは持っている」
「我々には、ない」
「故に、戦う」
「それだけの話だ」
歓声が広場を揺らした。
ジスは声をさらに強める。
「我々は侵略者と呼ばれるだろう」
「略奪者とも呼ばれるだろう」
「好きに呼ばせればいい」
「歴史は勝者が書く」
「だが、敗者には歴史すら残らない」
「我々は子どもたちに、飢えだけを遺すわけにはいかない」
「ここで立ち止まれば、エルスという国家は滅ぶ」
「ならば、私は滅びを選ばない」
「家族のために。祖国のために。未来のために」
「我々は生きる」
「そのために、戦う」




