エピローグ
ゴールマ辺境伯たちを告発してから数ヶ月経ったある日、俺とカレウスは王都の郊外にある禁足地の霊廟に来ていた。
霊山の麓に位置するその場所は気温が安定し、暖かく安らぎを与えてくれる。
そんな場所に眠っている姉上に事件の後始末の結果を伝えに来たのだが、墓前には生花が供えられており、誰かが来たことが伺える。
花の種類と数から察するに陛下と殿下だろう。
俺も持ってきた白いアネモネの花を供える。
「姉上、聞いたかもしれませんが、姉上の殺害に関わった者たちの大方の処罰が終わりました。主犯格であるゴールマ元辺境伯は爵位と私財没収の上、拷問付きの絞首刑、その妻子も成人している者は連座して絞首刑、未成年は修道院預かりとなりました。ジュアルブ元枢機卿は破門され、拷問付きの絞首刑、私を教会で襲った騎士たちを始めとする彼らに付き従った者も多くが連座しました。遅くなりましたが、ようやく事件を解決できました。その影響で勢力図が一変して父上も忙しく、こちらに来る余裕が無いそうです。陛下と殿下がこちらに来れたのは父に仕事を押しつけたからですね」
「クリュザンテーメ殿下も健やかにご成長なされてますし、王妃陛下も気にかけてくださっているようですので、どうか心置きなく、安らかにお休み下さい」
手を合わせて祈りを捧げた後に心の中でこっそりとお経も唱える。
俺も転生させた神様がいるなら、きっと姉上も救われているはずだからな。
「……レフちゃんってお墓参りの際に全部口に出して言うタイプなのね」
「口にしなきゃ伝わらないことも世の中多いからな。それに言わなくても姉上なら見ていただろ。あの人はあの手のタイプの断罪劇も好きだからな」
「ふふっそれもそうかもね。そういえば全部言ってた割に自分のことは言ってなかったでしょ。ちゃんとこれからどうするかも言っておきなさいよ」
「うぐっ、、、なんか自分のことは恥ずかしいんだよな」
「あら? 大好きな姉上様に心配を掛けるつもりなの?」
「まあそれは良くないよな」
「大好きなのは否定も肯定もしないのね」
「そうじゃなきゃリスクを冒して自分で告発しないさ。状況証拠固めて陛下に任せたら済んでたしな」
「姉上、俺はこれからも法律家と錬金術師として人の力になりながら、落ち着いたら世界を旅して民俗学や地方伝承を調べて回りたいと考えています」
「あら? 聞いてないわよ」
「言わなくてもカレウスなら来てくれるだろ」
「御身が望むままに旦那様♡ 嫌がっても絶対ついて行ってあげるわよ」
「カレウスが来てくれるなら安心して旅ができるな。それで俺の未来のことはともかくカレウスはうちでメイド一本で過ごすのか?」
「ふふっふ。実はこの数ヶ月、レフちゃんが忙しくしている時に、こそこそ書いていた本の出版が決まったのよ」
「えっすごいじゃないか! どんな本なんだ?」
「ミステリー小説よ。とても参考になる資料をもらったから、それを参考にして作ったわ。すでに大口のお客様としてクリュザンテーメ殿下がご予約してくださったわ」
「クリュザンテーメ殿下が? 一体どんな本なんだ?」
「アタシが見たことや聞いたことを、カッコよく脚色して仕上げた大作。その名も『レフ・アネモヌンの事件簿』よ」
「ゲホッゲホッ!! お、おい! 恥ずかしいからやめろよ!」
「い・や・よ♡ もう決まって、複製魔術使える魔法使いも手配してもらってるもの♡」
そういうカレウスはにこやかに笑う。
まあ手帳をあげたのは俺だし仕方ないな。
何とも恥ずかしいが仕方ないな。
だが俺が自分でサブタイトルもつけるのであれば、きっと『レフ・アネモヌンの事件簿〜転生探偵は現代知識で異世界の殺人事件を謎解く〜』にするかな。
さて、そろそろ戻ろうか。
家でレリヴァも待っているし、困っている人が待っているかも知らない。
俺は姉上が眠る霊廟に背を向けると、一気に駆け出した。
「カレウス! 先に帰らせてもらうぞ!」
後ろの方で、ちょっとレフちゃん! ずるいわよ! と聞こえた気がしたが、多分気のせいなので無視して走り出した。
(姉上、これからも私は救える限りの人を救っていきます。どうか安心してお眠りください)
何となくそんな気持ちを抱きながら俺は家路へと急いだ。
ちなみに帰るとブーツ卿が事件を抱えて待っていることをこの時の俺はまだ知る由もなかった。
〜完〜
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最後になりましたが、最終回まで読んでいただき本当にありがとうございました!




