↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レフ・アネモヌンの事件簿〜転生探偵は現代知識で異世界の殺人事件を謎解く〜  作者: 和泉 弘幸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/30

レフ・アネモヌンの過去 1




 教会の事件を解決し、父から受け取った姉の事件の資料に目を通した俺はカレウスとお茶を飲んでいた。

 

「ねぇレフちゃん。事件の詳細は見たんでしょ? 犯人わかった?」


「おいおい。当時の騎士団が必死になって捜査した事件の犯人を素人がすぐ分かるわけないだろ」


 姉の事件資料を読み、当時のことを思い出しているとお茶を持ってきてくれたカレウスが話しかけてくる。


「それもそうね。ねぇレフちゃん、前から気になったんだけど聞いていいかしら?」


「いいぞ」


「レフちゃんとサラクタ様の話を聞かせて欲しいわ」


「そうだな。たまには昔話も悪くないな」


 そういえばカレウスにはちゃんと話したこと無かったと思いながら、俺の中にある思い出を話すことにした。

 どこから話すか迷ったが、転生した時のことなどは言う必要が無いので、初めて姉とあった日のことから話すことにした。



 

◇◇◇


 


「お初にお目にかかります。サウダーデ・アネモネーとペルンが子、レフ・アネモネーと申します」


 初めて会う姉に頭を下げて挨拶をする。

 5歳にしては偉く流暢な言葉遣いをしているなと思うが、たまに離れに来て話してくれる父の話では、嫡男である長男と長女はかなり聡いらしいので、ある程度のアピールはしておいた方がいいだろう。

 俺と同じ歳の次男はやんちゃざかりでまだ分からぬらしいが、上2人は将来を有望視されているので、賢さをアピールして文官かそれなりの街の代官に収まりたい。


 返事がないな。

 やはり実母が亡くなってから父が作った子というのは複雑なんだろう。

 そりゃそうだよな。よりにもよって側室じゃなくて妾だもんな。

 成人したら家を出ることも考えなきゃな。

 それより早く返事をしてくれないと頭を上げれないから、気に食わないにしても返事が欲しい。


「か、、、可愛い! あっコホン! 貴方がペルンの子なのですね。確かに彼女の面影がありますね。ペルンは私たちの世話役でもありました。彼女には面倒を見てもらった恩があります。何かあれば私を頼りなさい」


「サラクタ様。寛大なるお言葉深く感謝致します」


 最初は年相応の明るく元気な様子だったが、すぐに立場を弁えた振る舞いをした。

 確か8つ上なのでまだ13歳とはとても思えない落ち着きがある。

 これは父が賢いというのも分かるな。

 

「姉上と呼びなさい。ペルンが儚くなったことは聞いております。そしてお父様が紹介したということはレフはもう家族であり、私の弟なのです。お父様がその様なことをなさるとは思っていませんでしたが、それでも貴方は私の弟です。私は姉として、アネモネー家の直系の者として貴方たちの見本となれるように振る舞います。だからレフ。貴方が困っている弱い人を見かけたら助けてあげなさい。それが貴族の役目なのです」


「サラクタ姉上の言葉、しかと胸に刻みました」


 この方、実は転生者じゃないのか?

 父上に少々流れ弾が飛んだが、それでもあまりに人が出来ている。

 この分だと長男も期待できそうだが、高位貴族がみんなこんな感じだと、俺もしっかり勉強しないとまずいな。

 命に関わるマナーと宗教と歴史は多少は付けられたメイドや執事に聞いたが本格的にやらないと危ないかもしれない。


 まずは生き残ることが第一。

 そして次に出来るだけ裕福にのんびりと過ごしたい。

 この野望のためにも受験の時より本気を出さないと取り返しのつかないことになるかもしれない。


「お父様。聞けばレフは礼節も熱心に学んでいると聞きましたが家庭教師はもう付いているのですか?」


「いや。メイドや執事たちが教えているが、自主的にも聞いており、学習意欲がかなり高いらしい」


「この子にも家庭教師をつけてください。5歳でここまで饒舌に目上の者に対する話し方を出来る子はまずいません! 私や兄もそれなりに出来ていた自負はありますが、この子は輪をかけて優秀です。今のうちに教育をしっかりと施して、兄の側近に取り立てるべきです」


 この人すごいな。

 上が尊敬に値する人というのは本当に嬉しいことだ。

 俺はこの日初めて、この世界で誰かの力になりたいと思った。





◇◇◇

 



「と姉上との出会いはこんな感じだった」


「5歳でその挨拶してくる子いたら怖いというか気味が悪いのに、すぐに受け入れて将来性を見出すのは流石サラクタ様ね」


「そうだろ。姉上は凄い人だったんだよ」


「それでサラクタ様の意見が通って、家庭教師をつけてもらったの?」

  

「もちろんつけてもらった。そこで本格的なマナー、歴史、法律を重点的に学んで今の基礎が出来たんだ。家督を継げないと分かった時から、文官になるか市井に下って法律家か錬金術師になろうと考えていたからな」


 この世界に神に与えられたジョブみたいなのはなく、普通に親から継ぐか、努力して得た物で生活を立てる。

 俺は伯爵家のコネと財力で錬金術師と学者を招いて、書物を買い漁って錬金術師になった。

 ちなみに魔力の使い方さえ分かれば、錬金術は書物に従ってやるとそこそこ出来た。


 「判断が早いわね。冒険者になって一旗揚げようとか思わなかったわけ?」


「武芸の練習なんてしたら義母と2番目の兄がうるさそうだったから選択肢から外したんだ。変に腕に覚えがあると合法的に消すために山賊討伐や変な疑い掛けられても嫌だったからな」


 あと生き物を殺すのはちょっと気が引けたというのもあるが、情けないので黙っておくことにした。


「ふ〜ん。サラクタ様は側妃として嫁入りする前はどうだったのかしら?」


「そうだな。普通に可愛がってもらったが嫁に行く前の日のことはよく覚えているよ」




◇◇◇





「レフ。私は明日から殿下の側妃となるから貴方のことを表立って守れなくなってしまうわ。正直貴方は賢いからどこでも生きていけるし、その気になれば、この家だけじゃなくて国にも害を与えて何か大変なことやれるだろうから余裕はあるだろうけど、だからこそ、貴方は自分に対する悪意に対して疎いから気をつけなさい」


「自分に対する悪意ですか?」


 

 サラクタ姉上が淑女の仮面を脱ぎ捨てて、素の状態で俺に話しかけてきた。

 明日から側妃として王城に移り住み、忙しいはずなのに時間を作ってきてくれたらしい。

 それはそれとして一応血の繋がりがある弟に対して、なんという事を言うのだろうか。

 まだ8歳にも関わらず、気味悪いくらいに落ち着きがあり、その年齢にしては賢いから仕方ないか。


 

「そうよ。貴方は周りをよく見ているから他者に対する悪意には敏感で、上手く立ち回ってるけど、自分に向けられるのに慣れてないし、生まれからか大したことはされないと思ってる。だから義母であるナタリア様と弟であるリアソンと、そのお付きのメイドたちに嫌がらせを無視してるでしょ」


「まあ家族間で事を荒立てても良いことはありませんし、別に継承順位も低い俺を害することもないでしょ」


「甘いわよ。ナタリア様もあのクソガ、、、コホン! 弟も甘やかされてるから自分の思い通りにならないと機嫌を悪くするし、何より自分より優秀なレフに対して何もしないはずがないわ」


 そういえば姉は後妻であるナタリア様と折り合いが悪く、よく対立していたな。

 確かに俺もナタリア様とはあまり仲良くは無いが、仮にも向こうも貴族として教育を受けた方だから、些細な嫌がらせ程度で済むと思うのだけど、他人の忠告は聞いておいた方がいいか。


「ご忠告ありがとうございます姉上。念の為に用心して何かあればすぐ逃げられる準備をしておきます」



「そうしなさい。もし何かあったら私を頼りなさい。手紙くらいなら返せると思うし、私も貴方の知識や考えを頼りにすると思うわ。貴方には悪いけど私は陛下に選ばれたのなら国のために、貴方が隠している爪も使わせてもらうわよ」


「姉上のためと言うのであれば、出し惜しみはしませんのでご安心ください」



 姉上とは家庭教師が共通しており、俺の勉学状況は筒抜けな上に、何度がうっかりこぼしてしまった案や解決策として話したことで、父と長男と姉上には才を隠していることがバレている。


 もっとも底は見せてないし、高校生程度で習う、経済の簡単な仕組みを答えたりしただけで、習っていないことも知っているや、深く考えているくらいで収まっているはず。

 

「正直ね。貴方と初めて会う日は本当に嫌だったの。父上が私たちのお世話をしてくれたペルンに手を出したことも、家族に迎え入れることもせずに離れて生活させてしまった負い目もあったし」


 そういえば父は本当なら本邸に迎え入れるはずだったが、後妻であるナタリア様が出産したばかりで、彼女のメンツを潰すことになるから母に頭を下げて離れで住んでもらったと後から聞かされたな。


「いきなり見知らぬ人間が家に来るのは難しいですし、ナタリア様との生活に慣れてきた所で、また他者が増えるのを拒絶したいのは仕方ないことです」


「それでもよ。けどね初めて会った時にレフの方が緊張しているはずなのに綺麗な挨拶をしてくれて、呆気にとられちゃったし、顔を見たら私達がお世話になったペルンの面影もあったけど、それ以上に私達の弟だって認識して、その時初めてペルンがよく言ってた、弱い人を守るということを理解できたのよ」

「レフ。私の可愛い弟が成長した姿を見る前に家を出る私を許してね」


「姉上。別に今生の別れという訳では……いえ、姉上、この家に来てからずっと気にかけてくださりありがとうございました。貴女のお陰で十分な知識と生きる力を得ることができました」


 言い終わる前に甘い香りに包まれる。

 後宮は魔境とも言われる世界。

 何があるか分からないし、姉も不安なのだろう。

 無粋な言葉ではなく感謝を綴り、より心の臓を近づけるようにこちらも強く抱き締め返した。



 


◇◇◇




「ふふっサラクタ様は愛の深いお方だったものね。後宮と言うけど側妃なんてサラクタ様だけだったのにね♡」


「まあほら当時はまだ増える可能性もあった訳だからな」


「でも一夫多妻制だけど、それって乱世とか魔物がもっとうじゃうじゃいて、男がどんどん死ぬからそうなっただけで最近は高位貴族でも多くて正室と側室1人くらいだけどね」


「それはそうなんだけどな。しかし姉上がこんなに言ってくれたのに、まさかその数年後に家から追い出されるのは思わなかったな」


「サラクタ様の見立てが正しかったのね。でもそんな隙のある抜けてるレフちゃんも素敵よ♡」


「言い返したいが追い出された間抜けだから言い返せないのが辛い……」


「それでおうちを追い出されて、どうやってサラクタ様のいる後宮に潜り込んだの?」


「あぁそれはだな」


 カレウスが淹れてくれたお茶で喉の乾きを潤しながら、俺は話を続けることにした。



 

 



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。