第4話:移動開始です
初めて乗る夜行汽車。どうやらゆっくり眠れる様に、ベッドが準備されている様だ。ただ、2段ベッドになっていて、知らない人がもう1つのベッドを使うみたい。私は上を使う様に言われたため、階段を上がって上へと向かう。
少し狭いが、まあ何とか寝られそうだ。ただ、このまま眠る訳にはいかない。とりあえずもう一度、レックスィンまでの道のりを確認する。何度も何度も汽車と馬車を乗り継がないといけないため、かなり複雑なのだ。基本的に夜行汽車がレックスィンの近くまでは出ているが、最後の2日間は夜行汽車がないため、2日はホテルに泊まらないといけない。
お金はありったけ持ってきた。
そう、もう1つのカバンには、ぎっちりお金が詰まっているのだ。正直重たくてたまらないが、生きるために必要な物なので、仕方がない。万が一盗賊に盗まれたら大変なので、バックもしっかり布団の中に入れている。
さらに念のため、お金の一部を、帽子の中や靴の中、洋服の中にも忍ばせている。万が一鞄を盗まれても、レックスィンの街までたどり着き、その後の当面の生活費はこれで賄えるだろう。
色々と調べている間に、辺りは真っ暗になっていた。ふと窓の外から空を見上げる。
「なんて美しい星空なのかしら」
ルイード殿下と婚約してから、こんな風に星空を眺めた事があっただろうか…毎日時間に追われ、書類に追われ、王妃教育に追われ、父親や継母、王妃様からの嫌がらせに耐えた。正直辛いとすら感じる余裕がないほど、追い詰められていたのだろう。
あの頃の私は、本当に感情のない操り人形だった。でもこれからは…
美しい夜空を見つめながら、久しぶりにゆっくりと眠りについたのだった。
翌日、早めに目が覚めてしまった。そう言えば私、ここ数年3時間以上寝たことがなかったものね。こんなに長い時間眠ったのは、久しぶりだわ。
ゆっくり伸びをする。でも、まだ外は真っ暗だ。本でもあれば、色々と調べられるのだが、生憎本は持ってこなかった。仕方がない、もう少し寝るか。そう思い、再び目を閉じた。
次に目を覚ました時は、朝日が降り注いでいた。
「なんて気持ちのいい朝なのかしら」
急いで起き上がり、汽車の中で朝食を頂く。こんなにゆっくりと食事をしたのも久しぶりだ。何もしなくてもいいという事が、幸せでたまらない。お昼過ぎまでは、汽車の窓から景色を楽しみながら過ごした。
そしてお昼過ぎ、最終の街で汽車を降り、馬車に乗り込んで移動する。いくつかの馬車を乗り継ぎ、再び夜行汽車に乗り込んだ。高貴な身分とバレない様に、ストールを被って移動する。悲しいかな、今まで次期王妃になる為、徹底的にマナーを叩き込まれたため、どうしても動きが丁寧になってしまうのだ。
万が一どこかの貴族に見られでもしたら…とにかく、レックスィンに着くまでは、誰にも怪しまれたくはないのだ。街まで行けばきっと、もう大丈夫だろうが、それまでは油断は出来ない。
特に王都に近い街であればあるほど、警戒しないといけないのだ。極力目立たない様に速やかに移動しないと!
緊張しながらの移動だが、それでも今までに見た事がない様な街並みを見られたり、その土地と美味しい食べ物を頂いたりと、楽しい時間を過ごしながら移動していく。
そして王都を出てから5日目、今日は初めてホテルに泊まる事になった。あまり安すぎるホテルは、セキュリティがしっかりしていないとの事なので、出来るだけ大きなホテルに泊まる事にした。
見た感じ、このホテルがよさそうね。ホテルに入り、今日の空き状況を確認する。有難い事に空いていた様で、すぐに部屋に案内してもらうことが出来た。
王都を出てから、ずっと夜行汽車で寝泊まりしていた為、久しぶりに部屋でゆっくりできる事が嬉しくてたまらない。早速部屋に鍵を掛ける。
さすが、大きなホテルだけあり、立派な浴槽も付いている。ここ数日、お風呂にも入れていなかったのよね。早速お風呂にお湯を沸かし、ゆっくり浸かった。平民として生活をさせられていた事もあるため、こういった知識をしっかり持っているのだ。
「王妃様には随分と虐められて恨みしかないけれど、こういった部分は感謝しないといけないわね」
ここ数年、食事すらままならない生活を送ってきたせいか、改めてやせ細った体が目に入った。さすがにこの体ではいけないわ。これからはしっかり食べて、しっかり休んで健康的な生活を送らないと。
湯あみ後は、ホテルのレストランに向かい、食事を済ました。やっぱりゆっくり食べる料理は美味しいわ。明後日にはついに、レックスィンの街に着く。調べた情報によれば、とても住みやすい街の様だ。
まずは街役場に行って、移住の手続きを取らないと。調べたところによると、手付金を支払えば、移住権が与えられるそうだから、移住に関しては問題ないだろう。その後は家と仕事探しね。
まあ、とりあえず着いたら考えよう。
お腹もいっぱいになったので、今日は大きめのベッドでゆっくり休むことにした。
翌日、ホテルで立派な朝食を頂いた後、再び汽車に乗り、移動する。そしてその日もホテルでゆっくり過ごす。
そしてついに、レックスィンの街に入る事が出来たのだった。




