第1話:全て殿下の仰せの通りにいたします
「マリー様、申し訳ございませんが、この書類の確認もお願いできますでしょうか?」
「分かったわ、そこに置いておいて」
私の机には山の様に書類が並んでいる。その書類を、今日中に処理しないといけないのだ。必死に書類を片付けていく。
私はマリー・シャラティア。シャラティア公爵家の公爵令嬢で、この国の王太子でもある、ルイード様の婚約者だ。
ルイード様は私の2歳年上の18歳なのだが、少し抜けているというか、のんびりしているところがある。そんな彼を助けるために、私は彼の仕事を必死で片づけているのだ。さらにルイード様の母君、王妃殿下の仕事まで、押し付けられてしまった。その為、毎日寝る間も惜しんで書類の整理をしている。
少しお節介で何でもそつなくこなす私は、陰で完璧令嬢なんて呼ばれている。でも…私はそこまで完璧な人間ではない。ただ、未来の旦那様の為に、必死に毎日を生きているのだ。
今日も徹夜になりそうだわ…そんな事を考えていると
「マリー様、殿下がお呼びです」
この忙しいときに、一体何の用なのかしら?そう思いつつも
「分かったわ。すぐに行くわ」
そう伝え、ルイード様の待つ部屋へと案内された。あら?今日はいつもルイード様と過ごす部屋ではないのね。そう思いつつ、案内された部屋に入ると、そこにはルイード様となぜか彼の隣には、伯爵令嬢のカリアナ様。さらに陛下と王妃様、それに不機嫌そうなお父様の姿が。
一体どうしたというのだろう。そういえば最近、ルイード様とカリアナ様が、密かに恋仲なのではないという噂があると聞いたことがある。
「マリー、よく来てくれたね。さあ、座ってくれ」
ルイード様に促され、席に着く。すると
「殿下、どうか考え直してください。娘にはきつく指導いたしますので…どうかもう一度チャンスを」
なぜか必死にお父様が訴えている。一体どうしたのだろう?
「公爵、悪いが僕は、全く僕に興味を示さない可愛げのないマリーよりも、ここにいるカリアナと結婚したいと思っているのだよ。マリー、悪いが君との婚約を破棄させてもらう事にした。君だって自覚はあるだろう?僕はね、君に構ってもらえなくて、本当に寂しかったのだよ。だから僕は、ずっと僕に寄り添ってくれるカリアナを選ぶ事にした」
そう言うと、ルイード様がカリアナ様の肩を抱いた。カリアナ様も、ルイード様に寄り添い、なぜか勝ち誇ったような表情で私を見ている。
私がルイード様に構わなかったから悪いですって?私はあなただけでなく、王妃様の仕事まで押し付けられ、必死にこなしてきたのに…
毎日毎日寝る間も惜しんで、体調がどんなに悪くても、必死にこなして…
さらに王妃教育も必死に受けて来た。やりたい事も我慢し、友人たちとの時間も、全て犠牲にして生きて来た。王妃様からの暴言や酷い虐めにもただひたすら耐えて来た。ルイード様の事を思い、婚約してから8年もの間、必死に生きて来た。それなのに、この仕打ち…
私の中で、何かの糸がプツリと切れる音がした。
どうして私はこんな男の為に、寝る間も惜しんで公務をこなしてきたのだろう…この男は、感謝するどころから、別の令嬢と浮気して、その事すら私のせいだと言っている。こんな愚かな男、こっちから願い下げだ。
スッと立ち上がると
「婚約破棄の件、承知いたしました。カリアナ様、どうか殿下の事をよろしくお願いいたします。そうそう、殿下と正式に婚約をなさるのでしたら、ぜひ私が1人でこなしていた殿下のお仕事、さらに王妃殿下のお仕事もよろしくお願いいたしますわ。既に執務室にございますので。それでは失礼いたします」
笑顔でそう伝えてやると、足早にその場を後にする。
「待て、マリー!」
「えっ?マリー、待って…」
お父様とルイード殿下の叫び声が聞こえたが、私の知った事ではない。もう私は、殿下の婚約者ではなくなったのだから…
新連載始めました。
よろしくお願いしますm(__)m




