第60話
第60話です。
今回は女性が好きなショッピングです。
ヴァルデォオルで服をあれこれ見ます。
戦国時代の着物と
この世界の洋服は全く別物なので
慶次の着物はこの世界の人達には
斬新で華美な物ではないかなと思います。
では、楽しんでください。
昼食を終えて慶次達はソルメラへ向かった。
通りを一本入るとカティアが怖そうに周りを見渡す。
街の人々は慶次を遠巻きに見る。
誰も近づいて来なかった。
カティアはホッと胸を撫で下ろす。
それを見て慶次は笑って
「だから言うたであろう?
もう、この通りもうお前達は大丈夫だ。
まぁ、それでも、女子だけで入る事は
おすすめしないがな。
俺の事を知らない者もおるだろうし。」
カティアは頷く。
「は、はい。分かりました。」
ミレーナはそれを不思議そうに見る。
慶次は笑って
「心配するな。ミレーナには何も起こらん。」
と話す。慶次達はヴァルデォオルに着いた。
店に入るとレオンが待っていた
「いらっしゃいませ、マエダ様。
お待ちしておりました。
今日は直垂をお持ち帰りいただけます。
それに合う組紐も出来上がっております。
蜻蛉柄の服も一応、
仕立ててありますので見てください。」
「そうか。それは楽しみだ。」
慶次は店を見渡し楽しそうに品物を手に取る。
レオンが台の上に蜻蛉の柄の服を広げる。
灰色にオニヤンマの柄が鮮やかに彩られていた。
「これは良いな。
しかし、鎧を着るとこの柄は見えないな。
これはこれで着る機会があるか?難しいな。」
慶次は考え込んだ。レオンは
「そうですね。
柄をもう少し下に描きましょうか?」
「そうだな。
これはこれで着る機会もあるだろうから、
別で仕立ててもらおうか。」
慶次が話す。
カティアはキョロキョロと店を見渡す。
「男性の服しかありませんよね。
確か、女性への贈り物が
置いてあると聞きましたが。」
ミレーナは驚いて店を見渡す。
「ここにこんなお店があるなんて。」
ミレーナは目をキラキラさせて
店の品物を見ている。
そこへセレーネが店内に入って来た。
「マエダ様、いらっしゃいませ。
あ、こちらの方が。」
「そうだ。この國での俺の家族だな。」
慶次は当たり前の様に話す。
カティアとミレーナは驚いて慶次の顔を見る。
慶次は同然だと言う顔をする。セレーネは
「マエダ様に頼まれていた組紐です。
実はあれから色々な色でもやってみました。
女性にも好まれると私は思っているのですが、
どうでしょうか?」
おずおずと聞く。
「それなら、カティア達に聞けば良い。」
セレーネは店の奥から組紐を幾つか持って来た。
綺麗な色で編まれた組紐に
カティア達の顔が明るくなる。
「綺麗〜。手に取っても大丈夫ですか?」
セレーネは
「はい、大丈夫ですよ。試してみてください。」
それを聞いたカティア達の顔が明るくなった。
2人で手に取りながら髪に当てていく。
カティア達の明るい色の髪色に
セレーネの作った組紐は見事に合っていた。
「そうだ、マエダ様。
この間のドレスも見てください。
これは絶対に流行りますよ。」
セレーネは再び店の奥から
ドレスを持って戻って来た。
台の上に広げられたドレスは腰から
色が何色も重なっている。
慶次は公家の姫の着る十二単を思い出していた。
御簾から覗く色とりどりの袖口。
公家の姫は美しさをその袖口に表す。
季節を考え重ねていく彩。
公家の姫達は御簾から見せる袖口と
自身の漆黒の髪の毛をチラリと見せる事に
奥ゆかしさを表していた。
あの國の女性の美しさは
教養と奥ゆかしさ以外は必要なかった。
詩で自分を表現し、
着物の彩りで自分の美しさを表す。
あの国の女性は自分の意思を話す事も
自分の意思を持つ事も恥ずかしい事だとされていた。
しかし、こ国の女性は色とりどりの服を着て
外を普通に歩いている。
そして、自分の意思を自分の言葉で話す。
男性も同じ事。
自分をよく見せるために
アレコレと試行錯誤する。
自分の想いを口にする。
(本当に良い國だ。
俺はここに来て本当に幸せだな。)
セレーネが見せるドレスに
カティア達は釘付けになる。
「これって本当に綺麗。
皇女様に似合いそうです。
昨日、一緒に食事をしたのですよ。
本当にお可愛いくて。」
「そうそう。本当に気品もおありで。
それでいてお可愛いところもあって。」
2人は興奮気味に話す。
セレーネは嬉しそうに話す。
「本当ですか?これは献上しようかしら?」
カティアは
「それなら、私達からの贈り物として
購入しても良いですか?」
ミレーナも頷く。
「そうね。皇女様って誰にでもお優しいのですよ。
私達でもご挨拶して頂けるのです。」
セレーネは
「そうですか?では、お包みしますね。
あとは、これもマエダ様のお話しから
ヒントを得て作った物です。」
もう一枚のドレスも台の上に広げる。
真っ黒な生地に真紅の刺繍糸で
辻ヶ花が描かれている。
次の衣装は黒に金色で女性らしき人が描かれていた。
カティア達は息を呑み。
「ヘリアデス様…。」
と呟いた。慶次はセレーネに尋ねる。
「姿を描いては駄目だと聞いたが?」
セレーネは
「そうなんですが、
この程度の描写なら大丈夫なんです。
まぁ、曖昧ですけどね。」
と笑う。
セレーネ曰く、人の目にどう映るかが
問題になるらしい。
黒色の2着の服は誰が見ても綺麗だった。
「黒ってこんな風に変わるんだ。」
ミレーナがため息交じりに話す。カティアが
「皇后様に似合いそうですよね。」
と呟いた。セレーネは嬉しそうに
「そうですか?それは嬉しいです。
皇族の方に着ていただくと
流行すると約束された様なものですから。」
と話す。カティア達も同然という様に頷く。
慶次はそれを聞いて
「俺はこの女性の柄が気に入ったな。
これを買うかな。」
と話す。カティアが驚いて
「女性用ですよ?大丈夫ですか?」
と聞いてくる。慶次は何食わぬ顔をして
「これが傾奇というものだな。」
と答えた。
慶次はその服を見ながらそれに合う服を見ている。
ミレーナも組紐を手に取り、
目をキラキラさせている。
カティアは2人を見て
固定観念に囚われるのを止めた。
台に広げられた服を見て他の服を合わせていく。
ミレーナも一緒に合わせていく。
「皇女様にはこの方が似合いそう。」
「え?違うでしょ。この色の方が…。」
と話している。
慶次はそれを見ながら
自分の目に付いた物を手に取って行く。
今はまだ紳士服が多い店では
慶次の気にいる物が少なかった。
「レオン、もう少し華美な物は無いか?」
レオンが
「華美な物ですか?そうですね。
紳士服だと、貴族の方が
好んで着て頂いているこれが
良いのではないでしょうか?」
と棚から服を出してくる。慶次はそれを見て
「そうだな。俺の思う物と違うな。
セレーネ、女性物でお主が作った物は
どんな物がある?」
と聞いた。セレーネは
「今はまだ、そこまで揃っていないのです。
来年にはお店を出しますが、
これといった物が出来ていないのが現状でして。」
と困った顔をする。カティアが
「でも、このドレスは色々なパターンが
出来るのでないですか。」
とおずおずと尋ねる。セレーネは
「そうなんですが、
これでは足らないという感じです。」
と困った顔をする。
「斬新な物はその瞬間は人々の心を掴みます。
でも、時間が経てば飽きられますから。」
深刻な物事の様にセレーネは話す。
慶次はしばらく考えて
「最初の着物は彩りが変えられるだろう?
それを増やせれば飽きられる事は無いのではないか?
例えば、今の服に少しだけ
セレーネの想いを込めるのもの良いかもしれんぞ。
俺にはこの國の民の服の様子なぞ、
俺は分からんからな。
しかし、この着物では
民は動きにくいものではないか?
それぞれの役割で着物は変わっているのであろう?
そこに流行りを入れたとて、
それは邪魔でしかならないのではないか?
俺の様な傾奇者であると、
それすらも誉れなのだがな。」
セレーネは慶次にそう言われ考え込む。
「そうですね。
流行りを追いかけすぎても
自分が煮詰まってしまいますよね。
前の店の事を考えすぎました。
マエダ様、ありがとうございます。
自分の出来る事を無理せずにやってみます。」
慶次はそれを聞いて頷く。
カティア達はドレスに夢中で
2人の会話にも気が付いていない様だった。
「カティア、ミレーナ。
もう大丈夫か?もう少し見るか?」
カティア達は目をキラキラさせながら
「もう少し見たいです。」
と話す。慶次は笑いながら
「どの國でも女子の買い物は
長ものだな。」
と話す。慶次はレオンに
「これから、冒険者として外に出るのに
何枚か着物が欲しいなと思うておるが、
どんな物がある?」
と尋ねた。レオンはしばらく考えて
「防具を身に付けられますから
上はシンプルに機能性を考えた服が
よろしいかと思いますよ。
そうですね。この辺りでどうでしょうか?」
レオンはTシャツを持って来た。
「これはまた面妖な。どうやって着るのだ?」
とレオンに聞くと《空蝉》が作動した。
『慶次。それ、頭から被るの。
頭をその穴に入れて下の二つの穴は手。』
「おぉ、なるほどな。
レオンに聞こうと思うたら、
《空蝉》が教えてくれよった。」
レオンは驚いて笑い出した。
「確か、サポート機能でしたね。
それは便利な。
Tシャツは軽くて動きやすいので
冒険者の方には重宝されています。
色や柄も色々ありますので見てください。」
と別の台に何枚か出してくれた。
慶次は目を輝かせ
「これは良いな。この柄は見た事もない柄だな。」
と迷彩柄を手に取る。レオンは
「この柄は冒険者の方には好まれますね。
森などに入ると目立ちにくいそうです。」
「ふむ、なるほどな。
俺の鎧は赤だからな。目立たなくすると言うのも。」
慶次はしばらく考えて数枚のTシャツを手に取り
「レオン、これを買う事にする。」
とレオンに手渡した。
カティア達がこちらにやって来た。
「ケイジ様、すごく綺麗な色ですね。」
「そうだろう?鎧が赤だからな。
中の着物もそれに合うた色にした。」
レオンはそのTシャツを受け取り袋に入れた。
カティアがそれを受け取り、
ミレーナは皇女の服を受け取る。
「金は後から払いにくる。」
慶次達は店を出た。
家に戻ろうと歩き始めて後ろから声をかけられた。
「マエダ様。良かった、入れ違いにならなくて。」
後ろを振り向くとカインが呼びかけていた。
「カインではないか。どうした?」
慶次はカインの方へ歩いて行く。
カティア達も後ろに続く。
「ギルドマスターが
マエダ様にお話があるからと言われまして。
ヴァルデォオルに向かっていたのですよ。」
カインはカティア達に気が付く。
「あ、お嬢様達も同じでしたか?」
カティア達が恥ずかしそうに俯く。
「そうだ。ヴァルデォオルのセレーネが
カティア達に聞きたい事があると
言うておったから連れて来たのよ。
レオナ殿に呼ばれたという事は魔物の話か?」
「そうです。昨日のスライムの事で
聞きたい事があると言われてました。」
「という事は《松風》が必要か?」
「そうですね。
スライムと話せるのは《松風》しかいませんし。」
「そうか。という事は迎えに行かねばなるまい。
今日はローディンに預けて来たからな。」
「分かりました。
では、マスターにそう伝えて来ます。
マエダ様は《松風》と一緒に
冒険者ギルドへお越しください。」
「分かった。
では、《松風》と共に行かせてもらう。」
慶次達は足早に家に戻った。
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は服の話を色々と広げました。
世界各国、民族衣装や今の流行りの洋服などは
国によって違いますよね。
日本で流行っていても
他の国では流行っていないなんて
普通にありますよね。
最近はSNSで世界で流行るモノが
一緒という事もおかしくはないですよね。
そんな中で洋服の世界観を書いてみました。
では、次回はギルドで色々と話し合いをします。
では、次回をお楽しみしてください。




