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冒険者 傾奇者  作者: 豊葵 月


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第58話

第58話です。


慶次の朝はどんな日でも

同じ様に回っています。

朝、いつも通り起きて鍛錬が始まります。


まるで、主婦の方の日常の様ですね。


では、楽しんでください。


朝、慶次はいつも通り目を覚ます。

そして、当たり前の様に修練場へ向かう。

ドアを開けると静まり返った道場が

慶次を待っていた。

(そういえば、人が変わると言うておったな。)

慶次はいつもの様に『アップ』から始める。

(これを知ってからは体の動きがまるで違うな。)

一汗かいたところに

カツカツと足音が聞こえてきた。

ドアが開き欠伸をしながら男が1人入って来る。

慶次の姿を見て

「え?あ、マエダ様ですか?おはようございます。」

「おぉ、おはよう。其方は?」

「あ、すみません。

第1兵団副隊長のジーク アイゼルベルクです。

お話は隊長から伺っています。

これからよろしくお願いします。」

慶次も

「俺は前田慶次だ。よろしく頼む。」

と手を差し出した。

慌ててその手に握り、ジークは

「マエダ様、もしかしてすでに鍛錬中ですか?」

と聞く。

「あぁ、『アップ』が済んだところだ。」

そんな話をしていると

ゾロゾロと他の兵団員も入って来た。

「副隊長、おはようございます。え?」

慶次を見てみんなが固まる。

「えっと、マエダ様ですよね?

ここで何を?あ、ダリウスが

話していたのがこれか。」

慶次は笑いながら

「ダリウスが俺の事を?」

「あ、いや。激しい手合わせがとか、

朝一番に来られるとか。

あ、自己紹介もせずにすみません。

私はレオン グラディスです。

これからよろしくお願いします。」

「あ、私はノエリア クラウゼンと言います。

よろしくお願いします。」

「私はローカス アイゼンと言います。

よろしくお願いします。」

「では、マエダ様。

私達は『アップ』から始めますので、

どうぞ鍛錬の続きをしてください。

あとでまた手合わせをお願いします。」

ジークが頭を下げる。

「こちらこそ、よろしく頼む。

アルドリック殿からも兵団全員と

手合わせして欲しいと頼まれておるしな。」

そう言うと慶次は自分の模擬刀で型を決めていく。

ふと、《空蝉》を呼んだ。

『お前の起動を忘れておった。

さあ、今日もお前の鍛錬をするか。』

『そうだね。私も頑張らなきゃ。

追いついたと思ったらすぐに抜かれるし。

慶次は戦う時、私のサポート無しの方が

良いかもって思っちゃう。』

『それは無いな。

確かに、攻撃に関しては無意識に体が動く故、

お前の速さを超えておるやもしれんが、

戦い方は全く分からぬからな。

この間は戦って思うだが、

魔物との戦いなぞ、初手が一番大切だからな。

相手の事を知らん俺には

《空蝉》のサポートが無いと困るぞ。』

『そうだよね。弱気になっちゃった。

私、頑張ってきちんと慶次のサポートが

出来る様になる。』

慶次は《空蝉》を作動させ鍛錬をやっていく。

スピードを徐々に上げ風を巻き起こす。

初めて見るジーク達は呆然と立ちすくんだ。

(聞くのと見るのとじゃ、大違いだけど。)

お互いが顔を見合わせる。

ジークは唾を飲み込んだ。

(え?隊長、このスピードについていけたのか。

やっぱ、バケモンだよな。)

一通りの方を終えると慶次はジークに

「アルドリック殿に頼まれたのだが、

誰から手合わせをするのだ?」

と聞いた。ジークは

「あ、では。私からお願いします。」

と模擬刀を手に取った。

お互いに使い合い構えた時慶次は

「ちょっと思いついた事があるのだが、

試しても良いか?」

と聞いた。ジークは訳が分かっていなかったが、

「あ、はい。分かりました。」

と答えた。

「なに。思いついた事柄ゆえ

最初はゆっくりとさせてもらう。」

と話す。

『《空蝉》俺について来いよ。

ゆっくりなのは最初だけだぞ。』

『分かってる。大丈夫。』

慶次とジークは向かい合って手合わせを始めた。

「ジーク殿。向かって来てくれるか?」

「あ、はい。

その前にマエダ様、私達全員は

呼び捨てで構いません。

マエダ様から殿なんて言われたら

こっちが緊張してしまいますよ。」

「ふむ。そんなものか?分かった。

では、ジークからきてくれるか?」

「分かりました。では。」

ジークはわざと上からの構えで走り出した。

『上からくると見せかけての、下からくるよ。』

慶次は後ろに一歩下がり模擬刀を横から振る。

次の瞬間、模擬刀がジークに向かってきた。

ジークは慌てて走るのを止めた。

「ふむ。思っとったのと違うな。」

慶次は考え込む。

『慶次、それってこういう感じ?』

《空蝉》がイメージ画面を出す。

「ジーク、ちょっと待ってくれ。

動きを止めさせてすまん。」

ジークは理解出来ずにその場に立ちすくむ。

慶次は画面を見る。

「おぉ、そうか。なるほどな。

ジーク、すまんな。

もう少し付き合ってくれるか?」

「あ、はい。大丈夫です。」

「すまんな。もう一度かかってきてくれるか?」

慶次はもう一度構え直した。

ジークは再度、剣を横から薙ぎ払うのを

変動させ上から振り下ろす。

慶次はそれを軽くいなし

そのまま柄を手からスライドさせる。

模擬刀はジークに向かっていく。

ジークはそれを後ろに飛びかわす。

「なるほど、これはいい感じだな。」

慶次は満足そうにニヤリと笑う。

「ジーク、かたじけない。

いい鍛錬になった。

ここから本気で行っても良いか?」

その言葉にジークは驚きながら

「分かりました。私も本気でやります。」

と腰を落とし剣を横から斜めに振り上げる。

慶次はそれを簡単に上から振り下ろし

模擬刀をに斜め上に振り上げる。

模擬刀同時が鈍い音を立てる。

ジークは一歩、前に足を進め

模擬刀を下から振り上げながら横に薙ぎ払う。

慶次はそれを軽く受け止めて上に振り上げた。

慶次のスピードは徐々に上がっていく。

ジークもそれに合わせてスピードを上げていく。

2人は風の渦の中にいる様に見えた。

2人の鍛錬を見ていた他の兵士は青ざめる。

(これが、みんなの言っていた圧倒的な強さ。)

ジークがそこから仕掛ける。

『慶次、ジークはフェイントをかけるよ。

飛び上がるから、後ろに下がって。』

《空蝉》が慶次に話す。

慶次はそのまま前に進む。

『え?慶次?』

《空蝉》が叫んだ後に上から来た模擬刀を

慶次は軽く受け止めそのまま振り下ろす。

ジークはその勢いで吹っ飛ばされた。

「お、すまん。力加減がうまく出来なんだ。

大丈夫か?」

ジークは肩で息をしながら

「大丈夫です。全てをかわされて

そっちの方が大丈夫じゃないですけどね。」

と笑った。

「お主は面白い動きをするな。

《空蝉》の鍛錬には良い。」

慶次はニヤリと笑った。

《空蝉》は

『慶次、私の言う事聞いてない。

私、まだまだ修行が必要。』

と黙り込んだ。

「ふふッ。《空蝉》が拗ねおったわ。」

ジークは大笑いした。

「これはマエダ様の鍛錬では

無かったという事ですか?それは凄い。」

「そうか?俺は武士もののふとして

色々な相手と戦ったからな。

ジークの戦い方は兵士としての

持論に相反するのではないか?」

「私は元々冒険者としてやっていましたから、

隊長等の戦い方は知らないのです。

魔物に兵士のセオリーは通じませんから。

特に今の凶暴化した魔物は私

が冒険者をしていた時よりも

狡猾だと聞いています。」

「なるほど、冒険者だったのか。

それで納得した。という事は組討の覚えも?」

「そうですね。私は魔法が殆ど使えません。

父親がドラグレイヴ出身だったので

魔法保有量が少ないのです。

母親はシルヴディア出身だったので

日常魔法には困らないのですが。」

ジークは笑って答える。

「という事はジーク、お主。

組討の鍛錬の相手をしてくれるか?

いや、今日はしなくても良い。

明日から相手をしてくれ。

武器も魔法も使えない相手の鍛錬は

ジークには最適だな。」

慶次は目をキラキラさせて話す。

「分かりました。

私もそういう鍛錬はしてみたかったのですよ。」

ジークと慶次は握手をした。

「さて、次は誰が俺の相手をしてくれる?

なに、組討でも良いぞ。」

慶次は兵士の顔を見る。兵士達は慌てて俯く。

「前にもこういう光景は見たな。」

慶次は笑いながら見渡す。ジークは座り込んで

「レオン、お前がやれ。」

ジークはレオンに声をかける。

レオンは死にそうな顔をした。

「え?俺。あ、私がですか?」

「そうだ。良い経験になる。やってもらえ。」

ジークに言われレオンが渋々、模擬刀を構える。

「お主が次の相手だな。」

慶次も身構える。

レオンは戸惑いながら身構える。

「おいおい、そんなに硬くなると

出来る事も出来なくなるぞ。

肩の力を抜いて構えてみろ。」

レオンは大きく深呼吸した。

「では、よろしくお願いします。」

レオンは慶次との距離をジリジリと縮める。

慶次は相手の動きをゆっくりと見る。

《空蝉》が

『レオンが刀を上から振り下ろす。対処して。』

レオンの肩がピクリと動く。

振りかぶり勢いよく振り下ろす。

慶次はそれを避けてレオンの腕の横で刀を止める。

レオンは動けなくなった。

「レオン、お主の動きは単調過ぎるな。

型をきちんと基本からしておるか?

型を正しく扱えなければ

動きがきちんと流れないぞ。

動きが綺麗に流れるからこそ

色々な動きが組み合わさり読まれにくくなる。

レオンはまずはそこからだな。

どれ。他の者達もやってみようか。」

慶次は他の兵士達にも容赦のない

鍛錬と指導を行い。全員がヘロヘロになった。

「これから、ジーク以外は

きちんと型を覚える方が良いな。

無駄な動きが減り体力の温存にも繋がる。

そして、敵に読まれにくくなるからな。」

朝の鍛錬が終了し、

慶次は満足そうに修練場を後にした。

部屋に戻りシャワーを浴びて食堂へ行く。

列に並びおすすめを聞く。

つい数日前に来た世界のそれが

慶次の日常になっていた。

(ついこの間来たばかりのこの國が、

俺にとって数年暮らしていた様に感じるとは。)

慶次は服を着替えて思い耽っていた。

いつも読んでいただきありがとうございます。


今日から別班になりました。

交代制の仕事をパターンを

この交代に割り当てました。

4勤2休ですね。

だから、それぞれの班は3班あります。


新しい兵士との鍛錬の様子を

書きましたが、

言葉は難しいなと思う事が多々あります。

私は頭の中で慶次を動かし

言葉を紡いでいるのですが、

中々思い通りの言葉が浮かばない時があります。


次回はいよいよ新居への引っ越しです。


では、次回をお楽しみにしてください。



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