第二章 マルガリータ王女
マルガリータ王女の検証結果で、その能力が貴重であるということが分かり、今後は、農政局研究室職員主導で継続して検証を行なってくれることになった。
ディルには引き続きマルガリータ王女の補佐をお願いしたいと話した。そして、私はロペス王子を連れて王宮に帰り、今後のことをケレと相談しようと思うとディルとロペス王子、マルガリータ王女に説明した。
ディルから直ぐに「分かった。」と承諾の返事が返ってきた。
するとロペス王子とマルガリータ王女二人が一斉にディルを見た。とても驚いた表情をしていた。
何かおかしかったか?と呟くディルにロペス王子が、侍女が付いているとしてもマルガリータ王女と成人男性がペアで行動するのが納得できないようだった。
マルガリータ王女は、ディルに迷惑がかかるのではないかと心配したようだった。
マルガリータ王女がロペス王子にディルのことは信頼している。侍女が付き添ってくれるので心配ない。それよりもロペス王子と自分の今後についてしっかり相談してほしいと希望を話していた。
悩んでいたロペス王子が、心配ではあるがマージがいいというならアイスラー侯爵令息にお任せしよう。自分はスワツール国王と話し合って、マージをスワツール国に受け入れてもらえるようにお願いする。
じぶんじしんについては、サレルノ国の第一王子との約束もあるから帰国は避けられないだろう。一反は帰国する。と意思表明のように私たちに向けて告げた。
準備が整った翌々日に私とロペス王子が王都に向けて出発した。
マルガリータ王女のことは、マチルダとメリッサが暫くの間残り、マルガリータ王女の専属侍女を教育するそうだ。
私付きの侍女の中には、婚約期間中という侍女もいるのでマチルダとメリッサ以外の全員が一緒に王都に帰ることにした。
私の名前は、マルガリータ。16歳、一応サレルノ国の第六王女。
自国では平民と同じような生活をしていた。使用人たちが私にそのように話していたからそうなのだと思う。
王族の証を持たないマルガリータは王女と言えない。平民と同じ生活をしてもらわないと。税金を使うようなことがあってはならない。とそう言われていたので、自給自足に近い環境でひっそりとした生活を送っていた。
兄のロペス王子が何かと気にかけてくれて差し入れもしてくれていたので、これといって不便なことは何も感じなかった。第一王子と兄が取り計らってくれて、教育担当者がいたので王女としての最低限の学びはしてきたつもりだった。でも、スワツール国の王妃の足元にも及ばない内容だったことが分かった。
スワツール国に来てからというもの驚きで毎日が忙しなく過ぎていく。見るもの聞くもの全てが新しい発見と体験だらけで、楽しくてしょうがない。
私が持つ能力、緑の指もサレルノ国では自分が食べる作物を育てるくらいしか使うことがなかったので、どのような力があるのか考えたことがなかったから分からなかった。
デーメーテールで研究員の方々と色々な実験をして自分の能力を理解していくことができて、嬉しくて楽しくて有難いなと感じている。
ディル様にもたくさん迷惑をかけてしまっているのだが、全く嫌な顔をされたことがない。
少しの変化も見逃すことがないくらいに気を付けて私を見てくれている。私がいつもと少し違うかなとか、これは少しきついかなと感じると必ず手を握って、ここまでにしましょうと言ってくれる。何故ここまで私のことが私以上に分かるのかしらと思ってしまう。
疲れているときは誰よりも一番に気が付いて、休むように声をかけてくれて段取りをしてくれる。
食事も力を使いすぎると疲れてしまって食べることが苦痛に感じるが、そんな時も今日はさっぱりした食事にしよう。無理に食べようとしなくていい。食べられるだけ食べられるものを食べるようにと声をかけて、同じ食事を一緒に食べてくださる。
衣装もデーメーテールで実験をするなら動きやすくて楽な恰好がいいと言って、侍女の方々と相談して洋服も見繕って準備してくれた。
最近は私も何となくこれ以上は力を使わない方がいいという限界値が分かるようになってきてはいる。
それでも何度か実験中に倒れかけた時には、ディル様が毎回抱きかかえて医療室に運んでくれて、以前のように意識がなくなるようなことが起きなくて良かったねと言ってくれるのです。
侍女の方にディル様はお気遣いのできる方なのですね。いつも助けていただいて申し訳ない気持ちです。と相談事のように話した。
侍女のマチルダさんは、マルガリータ王女様がお気になさることはないと思いますよ。
ディルは、エル王妃がマルガリータ王女の為にと人選してディルを選んで依頼をしたのです。彼は引き受けたのですから忠実に仕事をして当たり前です。
ディルは、細かいことに気配り目配りができるというところは優れていると思いますね。と話してくれた。
しかし、いくらお仕事とはいえ迷惑をかけていることに変わりない。私にはお返しするものがないから。と少しだけ気弱になってしまった。
ディル様にいつも助けていただいてありがとうございます。今は何もお返しできませんが、いつか必ずご恩に報いたいです。と気持ちを伝えた。
ディル様は少し驚いたあとに笑いながら、マルガリータ王女様は素直な可愛らしい方ですね。そのまま真っ直ぐに成長して下さいね。と言って頭をポンポンとしてくれました。
何だかその笑顔と言葉と行動にドキドキしてしまって、顔が熱ってしまいました。
兄以外で異性の人と近い距離で話をすることなど経験がなくて、そう考えて意識してしまうと隣にいるディル様を益々意識してしまう。挙動不審に見えるんじゃないかと焦ってしまう。
そんな私を見て、今日は少し休んでから実験をしましょうかとお茶の時間を提案された。
恥ずかしい。とにかく恥ずかしい。どうしたらいいのか分からない。そんな気持ちがダダ漏れのようだった。
実験は順調に進んでいますから心配されなくても良いですよと毎回優しくアドルフさんが声をかけてくれます。
そんなアドルフさんが今日は、心境の変化があったのかな?緑の指の力にも影響するのか?新しい発見があるかもしれないね。とワクワクした顔で呟いていた。
ディル様がアドルフの話は気にしなくていいからね。彼は根っからの研究者だから、新しい発見があるかもしれないと思うと自分を抑えられないんだ。と優しく背中をポンポンしてくれた。倒れそうなくらいにドキドキして身体が熱くなった。恥ずかしいのか嬉しいのか分からなくなった。
実験が始まる。今日の種子は、かなり成長させることが難しいと説明を受けた。
成長が難しい種子の時は、かなりの力が必要なので集中しながら鉢から手を離す頃合いを見極めないといけない。そして、1日では発芽しないため数日に分けて行うこともある。
いきます!と言って、鉢に成長の力を込める。
いきなりズドンと力を持っていかれた。ディル様が慌てて私の手を鉢から話した。
最近は、自分でも注意してコントロールできるように試していたので、倒れることがなくなっていた。今回の種子は非常に難しい相手だったようだ。
私はディル様にすみませんと誤って意識をなくした。




