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愛を知る時 ~本当の王妃になるまでに見つけた愛に守られるまで~  作者: 与謝野竜胆


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第二章 ロペス王子とマルガリータ王女

 ロペス王子とマルガリータ王女を案内しながら、私はディルと侍女たちを伴ってアルドアルの街に出発した。 アルドアルの街には、ハインリッヒ館長とデーメーテールのアドルフ、アナベル、に先触れを送っていた。

 移動中、ロペス王子とマルガリータ王女が、他国には様々な文化があり発展があるのですね。自分たちは今回初めて自国から出してもらえたので、何もかもが新鮮で驚くことばかりです。こんな風に早い乗り物に乗るのも初めてです。と監視の目がなくなってからは、生き生きと発言して行動している。好奇心旺盛な二人は、誰にでも質問して理解できるまで話を聞いていた。

 ロペス王子とマルガリータ王女は容姿も似ていた。濃紺の髪色、二重瞼に褐色の瞳、二人とも整った顔をしていた。ロペス王子は躯体が細身ながらしっかりと鍛えられた筋肉をしていた。マルガリータ王女は線が細く華奢ながらなかなかに活動的だった。

 ぽつりぽつりと二人から事情が話された。

 私たちは側妃の子供なのです。サレルノ国王には正妃の他に三人の側妃がいます。正妃には第一王子と第一王女と第二王女がいます。それでも後継者の安心のためだと三人も側妃を娶りました。

私たちは第二側妃の子供です。第一側妃には第三王子がいます。第三側妃には第三から第五まで三人の王女がいます。

 そんな中で、何故マージが国王の子供ではないのではと疑われているのは、私たち王族には王家の印と言われる痣があるのです。背中に薔薇の花が咲いているように見える痣なのですが、マージには痣がなかったのです。それで国王が母親の不貞を疑って、マージを離宮に追いやったのです。

 母親は不貞など働いていない、マージの痣ことは何かの事情で痣が見えないだけで皮膚の下にはあるかもしれないと訴えたのですが、認められることはありませんでした。

 初めの頃は母親もマージのところに足を運んでいたのですが、噂が広まるにつれ部屋からでなくなりました。マージの家族は私と母親しかおらず、その母親が訪ねなくなってしまうと使用人たちがマージを蔑ろにするようになりました。

 せめて私だけでもと毎日マージの住んでいる離宮に行き、使用人達を見張るようになりました。

しかし、国王はそれを良しとしませんでした。第二王子である私に多くの執務をするように仕向け、忙しくてマージのところに行けなくなりました。

 それでも、数日に1度は必ず行くようにしていました。私が様子を見ていないとあからさまに使用人が仕事をしなくなります。掃除や洗濯が疎かになり、何日も食事が運ばれてこない日がありました。

 私がマージの様子を見ては、使用人達を叱責するので使用人たちが掃除も洗濯も食事もマージがすればいいと言い出して、そうするように仕向けたそうです。

結果マージは自立できた訳ではあるのですが、食事は食材がないと作れません。使用人たちは、そこら辺の草でも食べるようにと言ったそうです。

 マージは食べるものがなかったので、使用人が置きっぱなしにしていた、干からびたじゃが芋と人参を小さく切って土に植えたところ、翌日には立派に育ったじゃが芋と人参が収穫できたのだそうです。

 私もマージから聞いた時には信じられませんでした。それでもマージが人参を切って植えると直ぐに土から葉がでてきたのです。

 私以外の者にこの力を知られてはならないと思いました。

国王にとって、私達は自分の役に立つための駒なのです。大切なのは、国王自身。そして王妃とその子供達だけなのです。

 側妃の子供は小さい頃から、王族である国王と王妃とその子供達のために働くようにと、何度も国王から厳命されているのです。

 そんな国王ですから、マージの力を知れば何を言い出すか分からない。どんなことをさせられるか分からない。私達、側妃の子供を見ると“私の役に立てよ”としか言いませんから。

 マージの16歳の誕生日の数日前に、他国の要人をもてなす重要な任務を与えてやるからな、名誉なことだろう。しっかり働けよ。と言ったんですよ。

 話しながら拳を握りしめて怒りを抑えているようだった。マルガリータ王女が、その拳を優しく包み込むように握っていた。

 

 アルドアルの街に到着した。

 私も久しぶりに来たので、その変わりように驚いた。

駅舎は人で溢れていて、街中も沢山の商店が軒を並べていて活気に溢れていた。観光地らしく景観が重視されている街づくりに役所の職員の頑張りを感じた。

 迎賓館に向かう道にはレールが引かれており、10人くらい乗れる箱型の乗り物が動いていた。

アルドアルは観光地でもあるが、職人や技術者の街としても育っていているようだった。

 ジスルリッタワーソル迎賓館を目の当たりにして、ロペス王子とマルガリータ王女が圧倒されていた。

なんて素敵な建造物なんでしょうか、この感動を言い表すことができません。

こちらの国に来てからというもの驚くことばかりで、自分達がいかに外の世界を知らずに生きてきたのかを教えてもらえて幸せでしかないです。きらきらと輝くような表情で語る二人を周囲が温かい目で見ていた。

 今日は、迎賓館でゆっくり身体を休めましょう。明日はデーメーテールで農産業を体験しましょう。と提案した。

 列車の旅で、すっかり仲良くなった侍女達とマルガリータ王女。

温泉なんて初めてですと嬉しそうに話すマルガリータ王女に「マッサージ付きですよ。磨きましょね。」と侍女達も嬉しそうだ。

 16歳のマルガリータ王女は、侍女達からも可愛い可愛いと愛でられているようだ。

 

 私はまだまだ本調子ではないが、久しぶりのアルドアルを感じることができて気分が良かった。

 森の主に挨拶に行きたいと考えていたが、森の主からは、出産後に落ち着いてから来るように、産まれてくる子供優先とメッセージがきた。森は落ち着いているらしい。


 ディルは、ロペス王子と今後のことを相談しているようだった。

 マルガリータ王女については、スワツール国に置いていくことにしても、サレルノ国から何かを仕掛けることはないしできない。そもそも軍事が国外に出たことがない。

 そのくらいに文明の進歩に違いがある。帰国した一行に持たせた報告書にもそう書いたし、大臣達も同様の内容を報告するだろう。

 大臣や文官達は他国を見ているので、自分の国が遅れていることを知ってる。だからと言って何か行動を起こすことはしない。

 第一王子は、大臣たちからの報告を聞いて危機感を持っている。

 早く世代交代が行われるとよいが、国王は現状に満足していて、自分は命令をする側だと思っているから他者の意見など聞く気がない。執務も第一王子と私が行っているから、国王が困るような状況が何もなく維持できている。これでは、王位を譲るという気持ちは湧かないだろうと思う。

 今回、スワツール国に私とマージが来れたのも、第一王子が後押しをしてくれたから要望が叶えられた。私がスワツール国にいる間の執務は第三王子と第四王女が代わりを務めてくれている。

 ロペス王子は、一旦はサレルノ国に帰るつもりのようだ。報告義務があるからというようなことを言っていた。第一王子との約束もあるようだ。

 ケレの言葉をどのように受け止めて解釈したのか分からないが、自分たち二人をスワツール国に受け入れて欲しいとは言えないのだろうとも思った。


 翌朝、デーメーテールに出発した。

 いよいよ緑の指について、その力を検証することになる。

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