第二章 改革 第三話
あらすじ
第二章にはいりました。
周囲の人々から優しく時に厳しく、時に生暖かい目で見守られながら、王妃のエルが国王ケレとゆっくりと愛を育んでいきます。
愛されてこなかった王妃エルが、愛されることの幸せと喜びを知っていくお話です。
私の背中の傷もすっかり癒えた。治癒魔法を使えば綺麗に治るが、魔法のない国の王妃なので、できるだけ自然に任せることにした。
1年近くスワツール国に帰っていない。ケレとは手紙で近況を伝えあっている。
自然に、寂しとか会いたいという台詞を書いている自分に笑ってしまう。
ケレからも辛い寂しい会いたい愛しているが、毎回綴られていて嬉しいと思ってしまう。
騎士団員は第三陣が来ている。第三陣は第一陣から指導を受けてきたようで、心構えから違っていた。
魔物討伐も覚悟を持って参加していた。
長兄が、まあ。騎士団もそれなりに形になってきことでもあるし、メルカトル侯爵家のことも片が付いたようだ。そろそろ帰国するか?と聞いてきた。
帰りたい気持ちはあるが、騎士団を任せたまま帰国するのも無責任な気がした。
長兄は、今回の騎士団員はそれほど時間が掛らないで帰国するだろう。今後は、指導を受けたものが、次の者を導いていけばよい。と言う。
帰国して、今の騎士団の現状を確認して見ろ。まだ駄目そうなら次を送ってきてもいいから。と言ってくれた。
私はスワツール国に帰国することにした。
長兄が、護衛に慣れるためとアウグスリンデ国では、常に騎士3名が私の周りを守ってくれていた。
帰国の際も問題ないからと断ったが、そんな問題じゃないと
一年経って帰国したスワツール国は変わっていた。
大半の者が目的を持って動いているように見える。
前がダラダラとしていたという事ではないが、今の動きがキビキビと見えるので、無駄がないように感じる。
笑顔で挨拶をする、その表情が引き締まって見える。
ケレに帰国の挨拶をするために執務室に向かう。護衛も一緒だ。
執務室には、ケレ以外にもマチルダ達侍女、ディルやファビやライが待っていた。
護衛の2人は執務室の扉の外に1名が中に待機する。私が指示を出さない限り、この体制は崩さない。
みんなに、ただいまの挨拶をする。ケレにも只今帰国しましたと挨拶をする。
ケレが椅子から立ち上がり、私に近づいて笑顔でお帰りと言って抱きしめた。よしよしと撫でたくなるような動作だった。
ソファーに腰かけて話をする。マチルダ以外の侍女は部屋の準備があるので退室していった。
私とケレが1年間の振り返りをする。追加情報があれば各々が説明と報告を行う。
メルカトル辺境伯の事件は、関係者に相当な衝撃を与えた。
この国の中枢の一端である辺境伯家が、他国に操られるという事態に危機感を持ったものが大勢いた。
事件、事故、災害、犯罪、小さな出来事は起こっても、重大な問題になるような事が起こることがなかった。
国や国民全体が、善良と言えば善良だったのだろう。
これまでとは認識を変えていかないといけないということを、多くの者が学んだ。
そして騎士団も再編成された。辺境伯領主が中心になって、アウグスリンデ国で訓練を受けた騎士を主軸にして団の構成が行われた。毎日の厳しい訓練に、向いていないと退団していった騎士もいる。
王宮内は、特に精鋭を揃える必要があると言って、騎士団とは一線を画すことにした。王室近衛兵と称号を与え、王宮内で護衛任務をおこなうように準備を急いでいる。第三陣が帰国次第、追加の人選を行い王室近衛兵の任務が開始になる。
騎士団員もアウグスリンデ国の教育計画を基に、経験年数ではなく実力差で組み分けを行い訓練に参加している。
街中では、警ら隊を置くことにした。毎日の小さな事件や事故は警ら隊に対応してもらう。騎士団を退団した者や地域の希望者から領主や騎士団員が人選した者を各街に配属して働いてもらっている。
メルカトル侯爵家の事件についての処罰だが、国王と公爵と辺境伯の面々で話し合った。
メルカトル侯爵家は、末端まで含めてこの件に関わっていた。勿論使用人も含めて全ての者が何らかの役割をしていた。役割の重さには違いがあったとしても、重大事件であったことから、全ての者に毒盃を仰いでもらった。
王妃を突き飛ばし怪我を負わせた令嬢は、家族全員の身分剥奪。王妃に失礼な発言をした令嬢たちは、家族から貴族籍を抹消させられたため、修道院もしくは教会で修行に勤しんでいる。
メルカトル侯爵領については、領民を不安にさせないように、暫くの間は近隣の公爵家と侯爵家で援助と執務の肩代わりを行っていくことになった。
ただ、メルカトル侯爵家は他国との関係性が不安であるため、早急に次の後継者を任命することになるだろう。
公爵家や辺境伯と相談して、お互いの連絡や報告、相談などが簡易にできるような手段を考えているが、なかなか良い案がなくて困っているようだ。
定期的に会議に参加することになったが、辺境伯領から王都まで足を運ぶにしても時間がかかる。会議以外でも報告や相談があることが多いから何とかしたいようだ。
魔石を利用すれば手紙の連絡が可能になる。使用する人の登録が済めば手紙のやり取りが出来ることを提案した。しかし、魔石もいつまで手に入るか分からないが、当面の間はそれで連絡方法の問題は対処できるはず。その内に便利な器具が発明されることもあるだろうしと説明した。
連絡を行う人達の登録を行い、使用方法を説明した。貴重な魔石なので管理だけはしっかりしてもらうことを約束した。
これで、ケレの負担が少しでも軽くなることを祈った。
アウグスリンデ国から来てくれている護衛も、明日には帰国していく。
スワツール国の王室近衛兵から護衛担当を選ぶことになる。出来れば女性騎士がいればいいのだが、そこまで人材は豊富ではない。
アウグスリンデ国で面談した騎士の中から選ぶことになるだろう。行動を共にするから負担に感じない人選をしたいと思うのだった。
国王と王妃の部屋で就寝前にケレと話をする。
ケレが、1年間も離れることになるとは思わなかった。義理兄の怒りの深さを思い知らされたよ。
エルが自分自身を守ることに躊躇することはないが、それ以上に周囲を守ろうとする。でも、それは当たり前のことではない。安全な場所にいると勘違いするなと教えられた。
周囲もそういったことに気づいて、危機感を持てたことで、国の安全面の見直しができた。協力もしてもらった。まだまだ足りないことも多いが進んでいる。
エルにも義理兄にも感謝しかない。ありがとう。
エルの傷が増えていくたびに苦しくなる。そう言って私の傷に口づけるのだった。
翌朝は久しぶりに起き上がることができなかった。謝るケレに怒る訳にもいかなかった。
午前中はベッドで過ごして、午後から執務を行った。
今日は護衛を決めなければいけない。マチルダ達侍女にも協力してもらう。
彼女達とも連携をとっていかないといけないから、相性が悪そうな騎士は避けていきたいと考えている。




