第二章 改革 第二話
あらすじ
第二章にはいりました。
周囲の人々から優しく時に厳しく、時に生暖かい目で見守られながら、王妃のエルが国王ケレとゆっくりと愛を育んでいきます。
愛されてこなかった王妃エルが、愛されることの幸せと喜びを知っていくお話です。
スワツール国の騎士達に、騎士団というものを理解してほしいと思っていた。
そして、アウグスリンデ国騎士団員から、やる気がない団員に教える意味がないと厳しい評価が出された。
私は、スワツール国から送られた個人票を読み、個人の動きや生活態度をみながら、数人の騎士と面談を行った。
長兄も同席してもらった。スワツール国の王妃として、これからの騎士団に変革をもたらすことができる人材を求めた。
最初の面談では、どの騎士も現状仕事に問題がないのに、何故アウグスリンデ国に来てまで訓練をしなければいけないのか理解できていないことが分かった。
私は、災害後に他国から狙われていたこと、それにより戦争が起こる可能性があったことを話した。
これまでは魔獣にも襲われたことがなかったが、今後はその可能性があることも話した。
変化していく情勢を騎士団にはいち早く対応してほしい。そのことが伝わっていないことが問題だと説明した。
可能性がどのくらいあるのかと聞いて来る騎士もいた。
長兄が他国はいつだって、安寧の地があればそこに付け入る。
自国が貧しければ貪欲に戦ってでも手に入れようとする。その心理も理解できていないのか?と反対に聞いていた。
数回面談していく中で、アウグスリンデ国の騎士からの話も聞いたからなのだろう、少しずつ変化が見られた。
訓練に真剣に取り組むようになり、実戦さながらの模擬戦では勝つことに意識が向くようになった者もいた。
全員を面談していき、意識を変えることができない者はスワツール国に帰した。そして代わりの騎士に来てもらった。
はじめに面談した者の中から班長になる者を決めて、チームを作った。
アウグスリンデ国では、森に行けば常に魔獣がいる。チームで遠征して、森で魔獣と戦った後から、明らかに意識が一変した。
アウグスリンデ国の騎士も、やる気の見られない騎士達に拒絶さえ見せていたが、変わっていく姿を見て自然と受け入れて助言などもしてくれるようになった。
幸せな国でよかったな。だがその分何かあれば他国が攻めてくる。用心に越したことはないと同じ騎士からの言葉が響いていたようだった。
何とか戦闘が出来るくらいまで育った第一陣は、半年間をアウグスリンデ国で過ごした。それでもまだまだ足りないことが多いが、本人たちも理解しているので、第二陣を受け入れるために帰国させた。
そして、第二陣も同じようなことが起こったのだが、アウグスリンデ国の騎士も第一陣で理解できていたからか、早い時期から容赦なく魔獣討伐に送り出し、荒療治の方が成長が早そうですよと言って鍛えてくれた。
スワツール国では、メルカトル侯爵令嬢の件が大きな問題になっていた。
調査団が派遣されて他国との交易について、いくつかの不審な取引があった。
大規模な山火事で、焼けた住宅などの建設のための木材が調達ができないと考えていたが、木材と一緒にお香やオイルなどが大量に輸入されていた。
食料についても取り扱いのなかった食材が購入されており、メルカトル侯爵に経緯を確認したが明確な答えが返って来なかった。
お香やオイルについて分析が行われた。お香は頭痛や眩暈を起こす物。オイルは深い眠りに陥る物であることが分かった。
最近、メルカトル侯爵領やその近隣で行方不明者がでていた。
お香やオイルの使用について侯爵からは、災害のショックで体調不良者がでている。癒しの効果があるから使っているだけだと説明している。
全く間違っているわけでもない。確かに一部では民間療法で使用している。しかし、それは極少量であり輸入量とは釣り合わない。
なかなか確証が得られない状況だったのだが、貴族牢に押し込められていた令嬢の1人が耐えられなくなったようで、メルカトル侯爵令嬢から頼まれたと自白を始めた。
そうすると、他の令嬢もメルカトル侯爵令嬢からの依頼だった、証拠もあるなどと少しでも罪を軽くしてもらうことを考えたようだ。
中にはメルカトル侯爵令嬢から受け取った依頼文を持っている者もいた。
メルカトル侯爵領に捜査員を増員して聞き込みを行い、使用人からも事細かに事情聴取を行った。
そして、侯爵の執務室の隠し部屋から裏帳簿が見つかった。
更に挙動不審に陥っていた執事を拘束した。執事は、誰かと待ち合わせをしていたらい。捜査員を執事と間違えて話し始めた他国の商人から人身売買の証拠が出てきた。
メルカトル侯爵本人が、やっと事実を話し始めた。
山火事が起きた後、復旧作業も思うように進まなかった。
そんな時に他国の伯爵家の当主と名乗る男性が来て、援助してくれると言う。
初めは疑心暗鬼だったが、物資の援助が始まり、家屋の建て替えもどんどん行われて言った。
こちらも資金の事があるので、伯爵に準備できるお金の話をしたところ、人材をいただけたらと申し出があった。
そこからは、言われるがまま行動した。
必要な人材の年齢や性別と必要数が知らされる。
私達、侯爵家はお茶会や復旧活動の懇親会と称して人を集めて、めぼしい人がいれば、会場から連れ出してお香を嗅がせる。気分が悪いと言えばオイルを炊いた別室に案内して眠らせた後に、迎えに来た他国の商人に渡した。
相手側から国王にも同じ手口が使えるはずだと言われて、そこまでは出来ないと断った。しかし、一度汚した手は、綺麗にならない。自分達を守るためには、やるしかないと言われた。
娘を側妃にできるなら悩む事はないとも言われて、指示されるがままやるしかなかった。
相手国については詳細が分かっていない。捕縛した商人が亡くなったからだ。
やり取りしていた書類も正しいものなのか不明。 隣国の名前が書かれていたが、隣国にそのような伯爵家の名前はなかった。
今後も調査を続けていかなければならない。
災害発生後、直ぐに動いていることから日頃から情報収集に余念がなかったと考えられる。
痕跡を残さず手を引く辺りも、かなり慣れていると考えて恐ろしくなる。
捜査員も調査団も今回の件を経験した者は、国の安全性について考え始めたようだ。




