第二章 改革 第一話
あらすじ
第二章にはいりました。
周囲の人々から優しく時に厳しく、時に生暖かい目で見守られながら、王妃のエルが国王ケレとゆっくりと愛を育んでいきます。
愛されてこなかった王妃エルが、愛されることの幸せと喜びを知っていくお話です。
長兄から国王に苦言が呈された。
本来なら不敬であると言われるかもしれないが、エルの命には変えられないからと厳しい助言をさせてもらったと言っていた。
ケレが私の様子を見に来た。
長兄には頭が上がらないなと苦笑いしていた。
エルを守るために自分も周囲も変わらないといけない。こんな不用意なことが度々起こるような国では駄目だ。
だから、エルがアウグスリンデ国で、我が国の変化を待ってくれるなら期待に応えられるよう努力しようと思う。そう言って額にキスをして抱きしめた。
私はただ頷いた。今は待つしかない。賢王と言われた彼のことだ。信じて待とうと思う。
ファビにはお礼を伝えた。そして、ケレを支えて欲しいとも。
ファビとディルとライが、行くんだなと寂しそうにしていた。変わるから見ていてくれよとも言ってくれた。
国の立て直しなら誰かが頑張るとかではなく、要になる人が集中して協力してほしいから、公爵家にも尽力してもらったほしいと伝えた。
四公爵は既に王宮入りする準備に入っていると返事があり、安心した。
ベルコフ、ムート、ベーレンス、ユンゲス、ライザー辺境伯からも提案があると王宮に向かっていると知らせが入る。
長兄がアウグスリンデ国に帰る前に会議を開きたいという希望が伝えられた。
メルカトル侯爵家には、国王の指示で調査員が派遣された。
災害後の復旧も確認するためだ。災害後に他国と交易を始めている。復旧のためという名目で、これまでになく頻繁に大量の物資の受け渡しが行われている。
国王に4つの公爵家当主と5つの辺境伯領主と宰相と宰相補佐に騎士団総長と法律部署課の課長以上の役職が揃って会議が始まった。長兄も参加している。
私は傷の悪化ということで参加していないが、長兄から参加しない方がいいと言われたからだ。
話し合いは長時間に及んだ。
疲れた顔の長兄にポーションを渡した。
相変わらずエルのポーションは効果が高いなと言いながら飲み干して、明日はアウグスリンデ国に帰ろう。と言った。
もう、日付も変わりそうな時間だった。
アウグスリンデ国に向かう途中途中で、これからの話をしよう。今日の話し合いのことも含めてな。と早々に寝るように促された。
翌朝になると、長兄から支持されていたのか、荷物の準備が出来ていた。
ケレに旅立ちの挨拶をしてから出発した。
馬でも良かったが、話もしないといけないからと、列車に乗ってアウグスリンデ国を目指した。
列車の中で長兄が話し始める。
昨日の話し合いだが
辺境伯領主の方々から、スワツール国の騎士団を数回に渡り、アウグスリンデ国に送るので鍛えて欲しいと要望された。
話が国家間のことなので、即答出来なかった。帰国して体制を整えようと思う。
辺境伯領主達の話しでは、辺境伯の兵は隣国との臨戦体制を意識した訓練を行っているが、それでも危機感が低いと感じている。
王都を中心とした騎士団は、形ばかり。
精々、犯罪者もしくは破落戸や盗賊を捕まえる程度。
1番厄介だと思うのは、騎士団は仕事であるという考え方をする者が大半で、忠誠心が低いこと。
平和に暮らせていることは、有難いことだが、誰のために何のために騎士団が存在しているのか分からなくなっている。
アウグスリンデ国で訓練と実践を経験すれば、自ずと自分自身で向き不向きも分かることだろう。
そんな中から適性に合わせて配属や役職を決めていきたいと言う提案が出された。
アウグスリンデ国には、何の利点もない提案だ。
確かに、今回、森の主に会えて魔獣の制御をしてくれると言ってくれたことは、非常に助かることだ。
エルに感謝している。だがな、それとスワツール国の立て直しに全面協力する事とは話が異なる。
対価交換が当たり前の国家間で、お願いだけされても承諾できるはずがない。
国王から、対価交換の提案があった。
要望があれば教えて欲しい。
鉄道業は、アウグスリンデ国の王都まで開通させてもらうが、他に何か希望がないかと言われ。
流石だな、交渉に慣れている。
何かを望めば何かを差し出す、当たり前だが出来ない者が多い。友好国なら譲歩してくれるだろうと言う考えはないからな。
鉄道の開通は有り難い。後は食品提供だろうな。
アウグスリンデ国も魔物の制御ができるようになれば農作物の被害もなくなるだろう。それまでには、時間がかかる。大きな倉庫を持っていると考えられるなら、有り難いことだ。
ここまで話が纏まっていれば、アウグスリンデ国王の承認が得られるだろう。
これから帰国したら、騎士団の受け入れ体制を行わないといけない。
公爵家は、父親に執務を依頼することになるだろう。エルが関わることなら、積極的に協力してくれるだろう。
公爵家に到着すると前公爵と夫人が待っていた。長兄の奥様も出迎えてくれた。
公爵家には、迷惑ばかりかけてしまい申し訳ないと頭を下げると、それ以上の恩恵も受けている。
それに、こちらこそ国葬では守ることが出来ずに申し訳なかったと言われた。
翌日から、長兄と登城したり騎士団を訪問したりと忙しく動き回った。
国王は酷く窶れていた。
王太子が、これでも回復したんですよ。寝込むんじゃないかと思いました。今、頑張らないでどうするんですかと言ったら、何とか立ち直ってくれました。民の為に頑張らないといけないなと言って。
妹の事は本当に申し訳ありませんでした。第一王女と王妃とその実家の者は斬首刑が執行されていました。
他国の王妃に手を掛けるなどあってはならないことです。
そう言って深々と頭を下げた。
騎士団では長兄が総長と各団長、副団長に説明を行う。
スワツール国は、騎士団とは名ばかりだ。ただの警ら隊と考えてもらって指導にあたって欲しい。
指導によっては、優秀な逸材が見つかるかもしれない。
負担をかけるが、よろしく頼む。
スワツール国から食料の調達ができたから、これからは隊員達に我慢せずに好きなだけ食べてもらって構わない。
皆がどよめいた。魔物が多く出る時期は食料も制限がかかるため、いつもいつも満足に食べられていた訳ではない。それが一気に好きなだけ食べてよいと言われると、身体が資本の騎士団員には堪らないことだろう。
そこからは、元々騎士団が行なっている教育過程をこなす事が難しいだろうからと新たに長兄を中心に教育過程が構築されていった。
騎士団員にスワツール国から来る騎士団員は経験を積む為に来国する。お互いに学んび成長していくことを目的にしよう。と総長から説明が行われた。
3週間後にスワツールの騎士団員が到着した。
基礎訓練に参加したが、新人騎士と同等もしくはそれ以下だった。
アウグスリンデ国の新人騎士は、アカデミーの時から騎士科を選択しており、適性がある者が入隊を許可される。そこから訓練を経て一人前と認められる様になっていく。
スワツール国でも同じだと思っていたが、新人騎士にも劣るようでは、私も国王も護衛など任せられない。反対に私が守る側になり、護衛が足を引っ張ることになりかねない。
技術も未熟なのだが、覇気がない。訓練に参加しているだけという考えなのだろう。上達しようとか認めてもらおうという気概が感じられない。
これでは成長が難しいと感じた。




