第二章 魔法について
あらすじ
突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話
第二章にはいりました。
周囲の人々から優しく時に厳しく生暖かい目で見守られながら、王妃のエルが国王ケレとゆっくりと愛を育んでいきます。
愛されてこなかった王妃エルが、愛されることの幸せと喜びを知っていくお話です。
私が諜報員として他国に赴いていた間にムマキルの生地が染色、縫製されて衣服として出来上がっていた。
マチルダが、侍女で着てみましたが、動きやすいし蒸れないし少しくらいなら濡れないので、早目にクレイのマッサージを開始してみてはどうですかと提案があった。
クレイは温泉成分も豊富に含まれているので、マッサージをしても効果がある。
私は美肌効果のある薬草も混ぜていきたいと考えていた。
マチルダ達侍女はご婦人方から、まだかまだかと急かされていたようだ。
アルドアルからクレイを運び薬草を混ぜて商品にするよりは、アルドアルに行って開発した方がよさそうだった。だが、今はケレから許可が出そうにない。
私が、王宮を離れることを嫌がるようになっていた。
仕方がないのでマチルダ達と相談して、クレイを送ってくれる人と森の主から薬草を採取して送ってくれる人を探してもらった。品物が揃えは、調合は何処でもできる。
マッサージができる人材も必要なので、希望者があれば指導していく準備ができている。
侍女のエヴァから、エミル様はお肌がきれいですけど、日頃のお手入れは何かされていますか?
それから、いい香りがしますが香水ですか?と質問された。
侍女のカリーナからも、そうなんです。私も同じことを思っていました。
王族の方は、お肌も特別なのかしらと思っていたんです。
でも、ニルマニ王女を見た時に、私たちと変わらなかったので驚きました。
エミル様は何か特別なお手入れをされているのでしょうか?
私は、アウグスリンデ国にいる時は闘いの日々が多かったから生傷が絶えることがなかった。
そんな時に祖母が薬草に詳しい人で軟膏を作ってくれたことがあった。
祖母が、私にはもう必要ないからと薬草の調合方法を記した手帳もくれた。
男として育てられたが、祖母は「傷は少ない方がいいだろう」と言って細目に手当もするようにも言われた。
その手帳に保湿効果のある水と軟膏を作る方法があって、それは作って使っているが他は何もしていないかな。
「それ、ほしいです!!」と二人が声を揃えて言った。
誰にでも合うかは分からないが、使ってみると良いよと渡した。
翌日にはメリッサ、ジュリア、ディアナからもお願いされたので、マチルダの分も渡した。
効果があったようで、とても喜んでもらえた。
そんな時にアウグスリンデ国の長兄から伝書魔法鳥が送られてきた。
『国王の体調が思わしくない。出来れば一度会っておいた方がいいかもしれない。今なら話ができる。』という内容だった。
私の異母兄にあたる人だが、会ったこともない人なので会う理由が分からなかった。
しかし、長兄は意味もなく判断をする人ではないので、何かあるかもしれないと考えてケレに相談した。
ケレは公爵家からの要望であれば受けざる負えないか、断れるなら断ってほしいが難しいだろうな。と私がアウグスリンデ国に行くことを渋っていた。
私も何故か今回は気乗りしなかった。長兄の指示であれば、よほどのことでない限りは従うようにしていた。でも、今回は行かない方がいい気がするなと感じるのだった。
この頃は、ごくたまにではあるが森の主から「元気だ」「いつくる」といった短いメッセージが頭の中に届くようになっていた。返事を返したつもりだが、森の主から一方的に届くだけで遣り取りはできていない。
その森の主から「行くな」とメッセージが届いたのもあり、断りたいなと思っていた。
長兄から『今回を逃したら、会うことができないだろう。先代国王が会いたがっている。可能なら話を聞いてあげてほしい。』と再度の依頼が届いた。
長兄がここまで帰国を促すことに何かあるのかもしれないので、行くことを決断した。
渋るケレを宥めながら出国の準備を行った。
アウグスリンデ国の国境で、ナトが待ってくれていた。
何かあるのか?と聞いたが、自分にもよく分からない。ニノが会わせた方がいいと判断したようだ。と答えが返ってきた。
公爵家では長兄が待っていた。
疲れているだろうが、あまり長くなさそうだ。大丈夫なら今からでも王宮に行って先代国王と会わせたいと言われたので承諾した。
消毒薬の匂いがする部屋に通された。痩せた男性がベッドに横たわっている。
長兄に治癒魔法を使うかと問うと、首を横に振られた。
目が開いて私を見ると優しい眼差しで見つめている。
長兄が背中をそっと押して側に行くように促した。
「初めまして、エミル・スワツールです。」と挨拶をした。
先代国王は頷いて、「初めまして。」と擦れた声で挨拶を返した。
手を差し出されたので、戸惑ったが両手で支えるように握った。
長兄が椅子を持って来て座るように目配せをした。私が腰かけたのを確認して席を外した。
先代国王がかすれた声で私に話しかける。
~~~~~~先代国王の回顧~~~~~~
来てくれてありがとう。エミルさんは私とは異母兄妹と知ってるのかな。
貴方のお婆様やお母様には、とても辛い思いをさせてしまった。
そして、あなたにも。謝罪できないほどのことをしてしまった。
今回、こうして来てもらったのは、あなたの意思を聞きたかったからだ。
私はもう長くない。私が貴方にできることはとても少ない。
貴方は初代国王にとても似てる。美しかった初代国王に。
そして、魔法も初代国王から受け継いだことが分かる。そんな貴方だから私から魔力を受け継いでほしい。
アウグスリンデ国の王族は、代々魔力を受け継継いできた。
しかし、時代と共に魔力量に偏りが出るようになってきた。
私とあなたの父親は、魔力量が乏しかった。祖父から受け継ぐことができないほど、魔力を受けとる器が小さかった。
魔力などあってもなくても関係ない時代になってきていたが、父親は納得できなかったのだと思う。
祖父が亡くなる前に私に魔法の伝授を行った。父親は何も言わなかったが、その頃から享楽に溺れるようになった。
仕方がないので私が執務を肩代わりするようになると、益々悪化してしていった。
話をするどころか、顔を合わせることも避けるようになった。
周囲も父親に相談するより私に仕事を持ち掛けてくるようになってしまった。
そんな父親だったが、貴方のお婆様が来てくださった頃は、以前の国王に戻ったのではないかと思うほどに落ち着いていた。
なのに何故あなたのお母様を襲ってしまったのか。何も語らず亡くなってしまった。
私は、貴方にアウグスリンデ国に受け継がれてきた魔力を受け取ってほしいと思うが、負担になるだろうか。
私の息子、現国王は魔力を受け取ることができない。受け取る器を持っていないのだ。
私の代で終わらせることも考えた。これからは魔力を持たない人の世界になって行くことだろう。
だが、貴方が初代国王と酷似した魔力を有していると聞いて、貴方の意思を聞かせてもらおうと思った。
もしかすると、貴方が受け継いだことに何らかの意義があるのかもしれないから。勝手な推測だが。
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暫く考えに陥る。
魔力を受け継いだからといって何かをするとか、しなくてはならないということはないようだ。
そして、私が受け継いだとして次に引き継ぐ必要性もないようだ。
私が受け継ぐ意義があるのか分からないが、こうして此処に来たことにも何かがあるのかもしれない。
その時「受け入れろ」と途切れ途切れのメッセージが流れてきた。森の主からだ。
私は、決意をした。




