第二章 情報収集の結果
あらすじ
突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話
第二章にはいりました。
周囲の人々から優しく時に厳しく生暖かい目で見守られながら、王妃のエルが国王ケレとゆっくりと愛を育んでいきます。
愛されてこなかった王妃エルが、愛されることの幸せと喜びを知っていくお話です。
長兄にアークレイリ国の内情を伝えた。
アウグスリンデ国を見てきた私からすれば、戦争などとてもできそうにない国である。
恐らく国王はそのような計画を企ててはいないように感じる。
騎士のころは、戦地に向かう前は誰もが緊張感を持っていたし、綿密な計画や策略も立てていた。情報も出来るだけたくさん集めた。
しかし、現在この国ではそのようなことは全く行われていない。
反対に心配になるほど国全体に活性力がない。資源はあるのに勿体ないことだと思った。
長兄から帰還命令がでたので、王宮を辞することになった。
家族の住む村に帰ることになったと話すと、ここでも非常に残念がってもらった。
以前行っていた諜報活動とは全く異なる内容で、スワツール国での経験から観察する眼も感じ方や考え方も変化していたことに気が付いて成長しているのかなと思った。
以前の私は、任務をこなし結果を出すことが全てだった。
スワツール国の帰還して私が一番にやってみたかったことすることにした。
マチルダ達侍女に頼んで、王妃らしい装いをしてもらった。
そして、ケレの執務室を訪れる。
「ケレ、ただいま帰りました。寂しかったですか?会いたかったですか?」そう言って、ケレに飛び込んで抱き着いた。
執務室にいる秘書官や文官はポカーンとした顔で抱き合っている二人を見ている。
今日も執務室のソファーを陣取っているニルマニ王女は、誰が何をしているのか分からないようで、抱き合う二人を凝視していた。
「ケレ、聞いてください。アークレイリ国の第一王子のガーナム様が公爵令嬢とご結婚されるそうです。」
この言葉を聞いた瞬間に、ニルマニ王女が豹変した。
「あなた、誰?今の話は何処の誰から聞いたのかおっしゃい。」と顔をゆがめて詰め寄ってきた。
私が、おっとりと「あら、ニルマニ王女様ではございませんか。わたくしに見覚えがございませんの?もう一度自己紹介いたしましょうか?」とにっこり笑って言った。
ケレが「王妃、帰ってきてのか?疲れてはいないか?」そう言って額にキスをした。
秘書官や文官が目をむいて驚く姿がおかしくて肩が震えた。
ニルマニ王女が、ハッとした表情で「取り乱して申し訳ございません。突然の入室でしたので驚いたのでございます。ところで、先ほどのお話はどちらでお聞きになりまして?」と聞いてきた。
私は少し惚けたふりをしながら「先ほどの話とは、私と会えなくてケレが寂しかったという話ですか?」と首を傾けてみた。
ニルマニ王女が目を吊り上げながらも声は抑えめに「いえ、アークレイリ国の王太子の話です。」といってきた。
私は「王太子?誰のことかしら?」「私が聞いてきたのは第一王子の話だったと思うのだけど。」とゆるーく返事をする。
ニルマニ王女が唸るよな声で「第一王子でも王太子でもどっでもいいのよ。ガーナムが誰と結婚するって言ったの?」
私「怖いです。ねえ、ケレ、何でニルマニ王女は怒っているのかしら?私が何か怒らせるようなことをしましたか?」とケレを見上げて悲しそうな表情をした。
明らかにニルマニ王女は我慢の限界を越えていそうだった。
酷く険しい顔になり、「だから、ガーナムが誰と結婚するのかいいなさいよ。」と身体をブルブルと振るわせて叫んだ。
初めて見たのだろう、これには秘書官や文官もドン引きしている。
私が「ガーナムって呼び捨てにしているけど、アークレイリ国の第一王子のことなのかしら?ニルマニ王女は第一王子とは呼び捨てで呼び合う関係なんですか?」とまたゆるーく聞いた。
ハッとした表情で咳ばらいをした後に「いえ、少し驚いてしまいました。私が聞いていた話と違っていましたので。」「それで、ガーナム様はどなたと結婚されるのですか?」と聞きなおしてきた。
ケレの身体が小刻みに震えている。私も笑いを耐えるのが辛くなってきた。
「私が聞いたお話ですと、アークレイリ国の第一王子は自国の公爵令嬢と婚姻を結ぶ準備をしている聞いています。」と答えた。
ニルマニ王女は「はぁ?何言ってんの?」とドスを利かせた声でボソボソと喋ったが丸聞こえである。
私はニルマニ王女に向けて「どうもですね、アークレイリ国は王太子が決まっていないみたいで、第一王子が強力な後ろ盾を希望されているみたいですよ。自国の公爵令嬢でしたら文句ないですものね。ニルマニ王女もそう思いますでしょう」と笑顔で話を振ってみた。
ニルマニ王女は「私、用事を思い出しました。失礼いたします。」と慌てて執務室を出ていった。
ドアが閉まる前にニルマニ王女の後ろ姿に向かって「誰から聞いたか聞かなくてもいいですか?」と言葉を投げたが、ニルマニ王女はそれどころではなかったようだった。
ドアが閉まった瞬間に私は遮断魔法を展開した。笑いが込み上げてきて我慢できなかった。
ケレと二人でお腹が痛くなるほど大笑いをしてしまった。
大笑いする国王と王妃に秘書官や文官は驚きを隠せないようだった。
私はもう一つやりたいことをしていた。
それは、アークレイリ国に向かう前にベラティ国のラリタ王女に手紙を書いた。
貴方の意地は何のための意地ですか?その意地が愛する人苦しめて、更にその愛も失ってしまっても後悔しない意地ですか?
あなたが後悔しないためには、自分の心にいる人を幸せにしてあげることと、二人の幸せな姿を周囲に見せることではないですか?
どうぞ、一時の感情に振り回されて愛する人の気持ちを見失わないようにして下さい。
聡明な貴方なら、これから自分が取るべき行動の意味を見失わなと信じています。
長兄から伝書魔法鳥が送られてきて、フナフティ国の王太子とベラティ国の第二王女の婚約が整ったと報告がきた。
ラリタ王女がフナフティ国に嫁げば、ベラティ国は独立国のままフナフティ国に守られていくことになるだろう。
ニルマニ王女は、その日のうちに王宮を去っていった。自国に帰ると言っていたようだが、直接アークレイリ国の第一王子に会いに行くのかもしれない。
二人の問題は、二人が解決するしかない。子供の問題もあることなので、しっかり話し合ってほしい。
ベラティ国はニルマニ王女が嫁いでも、フナフティ国の後ろ盾があるので問題ないだろう。
反対にアークレイリ国はニルマニ王女を受け入れても、公爵令嬢との問題を解決しないといけなくなる。
長兄からは、アークレイリ国が何か挑発行為を起こすようなら、アウグスリンデ国からも抗議文を送るので相談するように。
恐らくなのだが、先代国王の崩御の際に宰相も亡くなっており、中枢が混乱しているようだ。
宰相の代わりができる人材育成ができていなかったようだ。
スワツール国は他国とも国交が順調なのだから自国だけで頑張らなくてもいい。
大変な時は、アウグスリンデ国や友好国を頼ることも必要だ。と有難い言葉が届いた。
あんなに噂に振り回されていた王宮が、ニルマニ王女が去ってからは静かになっていた。
ケレは、ニルマニ王女の噂に踊らされて王妃に不敬な行動をとった使用人数名に処罰を行った。
マチルダ達侍女やディルら3人と集まって、ニルマニ王女の訪問からの答え合わせを行った。
今後もこのような事態が起こった時の対策を考えておこうとファビからの提案があったからだ。
心強い仲間がいてくれて、相談できる人たちがいてくれる幸せに感謝しながら
今しか話し合う時間がないかもしれないと、執務後に毎日集合して答え合わせ会を行っている。




