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第一章 オーレンスト国王夫妻 No.4

あらすじ

 突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話



 今日の病院の視察をどうするのか?マチルダと相談する。昨日のマッサージの結果から、スカーレット王妃は、もう長い間しっかりした睡眠がとれていないと感じた。マチルダも同じ意見だった。

 マチルダは、公爵家の令嬢だが双子の子供を出産した後、ベビーマッサージを会得していた。小さく産まれた子供達に母のスキンシップ(手当て)は有効で、必要なことだと教わったからだ。子供たちが成長すると今度は両親から頼まれるようになった。特に母親と義母は二人揃って、マッサージの後は体調がいいのとか、風邪をひかなくなったとか、頭痛が起こらなくなったなど、とても褒めてくれるので、家族だけだからと独学で習得したという。かなりの腕前で何度かマッサージを受けた私は、その力量が本物であると知っている。

 そのマチルダから、「今日は病院視察には行かず1日ゆっくりと湖で過ごすのはどうか」と提案された。そして、「明日は温泉施設でクレイマッサージの体験をしてもらってはどうかしら、随分長い間ストレスに晒されていたご様子だけど」とスカーレット王妃を心配しているようだ。

 クレイは、視察に来ていた公爵家の奥方たちから「自宅でもできないか」とマチルダに相談が持ち掛けられているようだ。1日だけの体験だったが、翌日の肌の調子に明らかに変化があったようで、自宅で毎日したいくらいだわと商品化してもいいから手に入れたいと希望されたようだ。


 薬草茶のこともあるので、滞在期間の延長が可能か確認することにした。病院視察はスカーレット王妃の希望でもある。近衛師団長のお兄様から「スラジェ病院のリハビリの効果はかなり評価されていると聞く。どのようなもので何が違うのか、オーレンスト国にも取り入れることができるか見てきてほしい。同僚や部下が救われる道があるなら、これからしっかり騎士団でも取り組んでいきたい。」と頼まれたから、私もしっかり見学して、兄に良い報告ができるようにしたいと話していた。その思いを考慮すると、今日の病院視察の予定変更はせず、できるなら滞在期間を1日延長してもらう方が良い気がした。マチルダも頷いたので、スカーレット王妃に交渉してみることにした。

 スカーレット王妃からの返事が直ぐにあり、このまま二国間条約を締結する可能性があるから滞在期間が延びるかもしれないというのだった。病院視察の時にケレに確認してみるとマチルダに告げた。


 病院の視察では、ヴィクトール医師と薬師のアリス夫妻が出迎えてくれた。私も久しぶりの訪問でかなり増えている患者さんや職員さんに戸惑ってしまった。リハビリ室の見学では、温泉室では温泉に入った状態で水中運動やウォーキング、関節運動が行われていた。トレーニング室では、歩行訓練や器具を用いた筋力訓練や補助具を使って機能回復訓練などが行われていた。

 ジギワルド医師とタバート医師もいて、オーレンスト国の外交官にお礼を言っていた。前回、外交官と共に帰国した際に、職場や国への届け出など外交官の口添えがあったから、直ぐにアルドアルに来ることができたそうだ。 

 そんな時にタバート医師が、セキュリゼ病院に呼ばれた。タバート医師は「救急班出動」と号令をかけ数名のスタッフとセキュリゼ病院へ向かった。ジギワルド医師にどういうことかと質問すると、アルドアルはまだまだ技術者や作業者が多く、体調不良や不慮の事故で運ばれてくる人が多い。医師が3人いても足りない時がある。その時は、自分かタバート医師が呼ばれる。救急班と呼ばれていたのは、医師1名と看護師3名とリハビリ職員2名で構成された緊急時対応の医療班で、日替わりで対応している。と説明された。外務大臣が「随分と検討されたのでしょね、オーレンスト国の大きな病院でも、救急班の存在はないと思いますよ。急ぐ時には、患者さんも病院の職員さんも大変心強いでしょうね。オーレンスト国でも考えてもらいましょう。」と外交官と話をしていた。

 「スラジェ病院は、リハビリ目的の状態が落ち着いた患者さんが多いから、そんなに救急班の出動はないが、セキュリゼ病院は、病気や怪我で緊急を要する患者さんが来ることが多いため、最近は1日に3~5回出動することがある。困っているのは連絡方法で、毎日、朝礼で日程表と役割分担表の確認を行うが、予定通りにいかないことが多くて、人を探す時間が勿体ない。」とジギワルド医師が本当に困った問題ですよと皆に向けて発言した。「療養環境で煩いのは良くないでしょうが、駅舎で使っている音響装置は使えないでしょうか?」とディルが言った。「駅舎では、乗客に発車時刻や案内を音響装置を用いて行っています。音量は調節できるはずなので、各部屋に配置すれば呼び出しができるんじゃないですか?」とディルが説明した。そして、この発言をしたためディルは、音響装置設置に向けて病院に残ることになった。


 病院の視察が終わり、迎賓館に到着した。夕食前にレッティに薬草茶を飲んでもらうことにした。お茶室に来てもらう。1回目なので煎じたりせず、その場で入れた薬草茶を飲んでもらった。室内はミントの香りがする。飲みやすくするために薬草茶に少量のミントを加えた。

 「もっと飲みにくいと思っていたのだけど、これなら毎日飲めそう。」そう言いながら、ゆったりとした様子で薬草茶をゆっくりと飲む。「明日まで様子をみます。体調が悪くならなければ、もう少し濃い薬草茶を飲んでもらいます。回数も3回に増えます。」と言って軽く診察をした。「今日もマッサージを行いたいのですが、」「ぜひお願いします。」と話の途中で返事が返された。「ごめんなさい、今日はとても体調が良かったから。ぜひ、受けたいです。」と恥ずかしそうに笑顔でお願いされた。

 

 今日の夕食には、ディルとライとオーレンスト国外交官が、そのまま病院に残っているので、それ以外の人が集まった。

 二つの国の国王から、「国交開始の調印を行うことにした。」「このまま引き続き調印式を行いたいが、それぞれの国の官僚への周知や文書の準備、他の国への公式発表などを行うとなると一旦は帰国することになる。」「それにあたり、できれば鉄道業だけでも二国間協力の締結をしておきたいと考えている。移動距離を考えると馬車に比べて鉄道なら半分以下の時間で済む。」「これからの3日間で交渉内容の明文化と署名を行いたいと考えている。」と発表が行われた。参列者から拍手が起きた。


 3日間、レッティには体調管理に重点を置いて生活してもらうようにお願いした。スカーレット王妃としての職務は忘れてもらう。カール国王から「レッティは、頑張りすぎなんだよ。今から3日間はエル先生とマチルダ先生に従ってね。政務のことは忘れなさい。」と言われ、戸惑った表情だったが「はい」と返事をしていた。国王と何年間も共に毎日政務を行ってきたため、仕事から離れた生活を思い描けない様子だった。

 今晩もマッサージを行う。昨日よりは幾分か身体がほぐれていたが、長年蓄積された強張りの解消は時間がかかる。丁寧に時間をかけて強張りをほどいていかないと、身体が変化に驚いて体調を崩すことになる。マチルダと頷きあって丁寧にマッサージをしていく。本日も数分後に眠りに入ったレッティを確認し、マッサージを終えると付き添っているオーレンスト国の侍女に、王妃の体調についてとこれからの3日間の過ごし方について説明を行った。国王から指示に従うように言われていたこともあってか、侍女たちは神妙な顔で聞き入っていた。


 私から「レッティ王妃の体調についてですが、彼女は長年のストレスから気滞に陥っています。重病につながることも多く要注意です。僅か3日間ですが、少しでも改善できるように皆で協力して王妃の体調回復に努めましょう。」マチルダから「侍女の皆さんには、今後も継続して施術を行っていただきます。しっかり習得できるように努めてください。」と協力を仰ぐお願いをした。

 今回視察で侍女の統率者を務めているリネアから「王妃様の状態がそんなにお悪いとは気が付きませんでした。何ということでしょうか、私たちはオーレンスト国でも王妃様の最も近くでお世話をさせていただいておりましたのに。是非、教えていただきたいです。これから自国での生活が少しでも改善さるように努力してまいります。」と青い顔で泣きそうになっていた。他の侍女5名も同様の表情だった。

 マチルダから「気を使いすぎるのもよくありません。王妃との距離が近すぎるのも問題ですが、畏まった態度が続くと双方が疲れます。明日は王妃との距離を少し近づけていきましょう。それでは、明日からの予定の共有です。」と3日間の日程について協議が行われた。


 1日目 湖で交流会を開く 目的:私たちが良好な関係を築くため

     1日を通して楽しいことを行う

     水辺で自然を感じながら、ランチやアフタヌーンティーを楽しむ

     ボートに乗ったり、魚釣りや水泳も出来ます

     王妃が楽しむことが目的なので王妃の意向も確認

 2日目 温泉施設でお肌のケア 目的:日に当たった後のお肌ケア

     侍女の方々はマッサージの習得

     いろいろな温泉の効能を楽しむ

 3日目 改善会を行う 目的:問題解決できるか確認

     できること、できないことを整理する

     自国に帰ってからの目標設定

 追加で侍女の方々にお願いしたのは、この3日間、レッティ王妃といるとき以外は、私のことは王妃としてみないこと。施術者として接してもらうこと。難しいことと思うが、言いたいことが言えないような関係性では問題解決できないからと説明した。いきなりは難しいので徐々にでいいからと指示をした。

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