第一章 オーレンスト国王夫妻 No.3
あらすじ
突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話
二日目の夕食も昨日と同じ人達が集まった。随分と打ち解けた様子だった。スカーレット王妃から、今日は一緒じゃなかったんですね。とても残念でした。と言われた。
私は、明日の打ち合わせで農場に行っていました。すみませんでしたと謝罪した。スカーレット王妃は、気を使わないでくださいね。それから。私のことはレッティと呼んで下さい。私もエルと呼んでもいいですか?と言われたので、勿論です。と答えた。スカーレット王妃は、公爵家の長女だが、兄が4人いてとても可愛がってもらったが、女の子の姉妹が欲しかったんです。無い物ねだりだと今なら分かりますけどね。だから、エルといると妹ができたみたいで、嬉しいわと言ってもらえた。
国王との馴れ初めも話してくれた。カルとは、私のすぐ上の兄二人がカルの側近で、今は一人が宰相で、もう一人は近衛師団長をしているの。その兄二人に連れられて王宮に行ったのが、私が10歳の時で婚約者を決めないといけない年齢のカルに紹介されたの。兄を通して話を聞いていたから、お互いに結構すんなり受け入れられたと思う。そうなると外堀を埋められるように婚約者になり結婚することになり、みたいなね。私たちは、政略結婚みたいに思われているけど恋愛結婚でもあるの。カルと話すんだけど、政務で行き詰ったときに、お互いを支えることができる存在がいると心強く感じて愛おしいと思うことが増えていったの。人を愛することは、いつとか、このときとかなくて気が付いたら愛していたって感じだった。といって少し顔を紅くして少女のような顔で笑った。私にはまだ、よく分からない感情だったが、とても幸せなんだろうということは理解できた。
翌日は、デーメーテールの訪問だった。オーレンスト国は広大な穀倉地帯を有する農業大国でもあり、銅や鉄、石炭といった鉱物資源も豊富で他国へ輸出を行っている、豊かな国という印象が強い。
デーメーテールでは、カール国王の『オーレンスト国は、米や麦を育てて収益を得ているが、畜産や耕作にも力を入れていきたい国の方針がなかなか浸透しない。穀倉地帯は持っている土地を代々その家が引き継いでいるため、新しいことへの取り組みをしなくても生活が潤っているから新規改革を望む者が少ない。ここで何かヒントになることがあれば国に帰って試してみたい』という希望があり牧場から案内が始まった。
牧場はミッケルさんが案内をしてくれた、広大な牧草地を馬や牛がゆったりと草を食んでいる。鶏は鶏舎が真ん中にありその周囲をかなり広い範囲を柵で囲っている。平飼いをしているようだ。豚も飼育し始めたと養豚場も案内してくれた。環境が良いからなのか動物たちがのびのびしているように見えた。
搾りたての牛乳を飲ませてもらったが、味が濃く甘みが強かった。牛の種類によって牛乳の味がかわるので、さっぱりした味が好きな方はこちらをと言われ別の牛乳も飲んでみた。確かに全く違う味わいだった。バターやチーズも作り始めていて、市場では人気になってきているらしい。今日の夕食の卵料理はデーメーテールの鶏の卵を使うらしい。味の違いが感じられますよとミッケルさんが嬉しそうに説明してくれる。
ここは、野花もたくさん咲いているから養蜂も考えているんだよ。とミッケルさんがいうと、アナベル、アンソニー、マイアが養蜂ができるなんて、なんて素敵でしょうと喜んでいた。
カール国王が、ここは職員が働きすぎなんじゃない?とケレに話しかけていた。王宮ではできない経験がここではできるので、王宮の研究室からここに代りたいと要望が殺到している、局長が泣いているよと笑って話していた。
農場見学があらかた終了すると、昨日アドルフとアナベルが相談してきた荷台の試運転が始まるので見学しますかと問いかけがあった。皆が興味津々で見学に参加した。
駅舎からデーメーテールまでの長い距離を滑車を使って荷台を動かす。距離が長いから心配していたが、4台連なった車輪付き荷台が駅舎側から出発し、デーメーテール側に到着した。デーメーテールから駅舎への折り返しも問題なく、無事に駅舎に到着した。馬車よりも速度が速く、多くの荷物も運べることをデーメーテール職員は非常に喜んだ。見学者も一様に自分の領地にも導入したいと興奮していた。
耕作地では、薬草栽培と温熱利用の倉庫に関心が向いていた。貴重な薬草はどの国からも需要があるため、順調に育成出来たら輸出してほしいと希望が出た。ここの薬草は森から少しずつ採取しては移したもので、中には管理の難しい種類のものもある。ここに移した薬草は枯れることなく成長していた。アドルフが、薬草に関してなら農政局からやっとレイフが到着したから任せられる、と言った。ライが、お目付け役の到着ですか?とアドルフをからかっていた。
温熱利用倉庫には、クライスト公爵が最初に入って「かなり希望する温度になっているね、あとは日照時間をどうするかというところか、非常に楽しみだね。ところで、温度調節はできるの?」とアドルフに聞いていた。アドルフが見学者向けに温熱倉庫の構造を説明して、温度調節は可能であり、ガラスの確保ができれば日照時間も確保できるが、ガラスの入手までもう少し時間がかかりそうですと補足した。クライスト公爵が楽しみにしているよとアドルフの肩を叩いた。
視察を終えて迎賓館に帰った。レッティから相談があると伝言が届いた。直ぐに部屋を訪問するか問い合わせると、ゆっくりした時間を希望すると返事があった。夕食後にお茶室に集まることにした。迎賓館を建てた時に、アンゼリカにお願いして小規模だが落ち着いて少人数が話せる場所を作ってもらった。一人になりたい時やゆっくり考えたい時にお茶を飲みながら過ごす時間が欲しかったからだ。
約束の時間前にお茶室でハーブティーの準備をする。ハーブティーは好き嫌いがあるが、香りの強くないリラックス効果のある飲みやすいブレンドを用意した。香りは大事だ。部屋の香りもほのかにカモミールが香るくらいにした。レッティが時間通りに部屋に入ってきた。「いい香り、落ち着くわね。」といってソファーに腰かけた。
ハーブティーを1口飲んで、時間をとらせてしまってごめんなさいね。と言って話し始めた。今日、薬草園で聞いたのだけど、あそこの薬草はエルが植えたものなの?薬草にとても詳しいと職員の方が言っていたわ。もし、薬草に詳しいのなら相談に乗ってほしいの。
薬草の勉強は小さいころからしていたし、薬草採取にも頻繁に行っていたから詳しいと思う。薬師ほどの知識があるかと問われたらそこまでではないかもしれないけれど。と答えた。
レッティが、ハーブティーをゴクゴクと飲んで、実は子供ができないことで少し悩んでいるの。と言いにくそうに話し始めた。結婚当初は王妃の仕事もあって慣れることで精いっぱいだったから、忙しくて考える暇もなかった。1年半過ぎると周りが騒ぎ出した。気にしないようにしているけれど、どうしてもね。意識してしまうと心配になってきて、カロは気にしなくても自然にできるからと言ってくれる。神経質にならないようにしているんだけど。と肩を落とした。
次のハーブティーを注ぎながら、私が知っていることは、妊娠しやすい身体を作る薬草茶があるということ。妊娠しやすい身体作りを応援する薬草茶なので、絶対に妊娠するかといわれるとそうではありません。それに、女性だけの問題とも言えませんから。ただ、身体を整えていくというのは、日常生活も送りやすくなるので試してみてもいいかもしれません。あと、環境作りは大事です。リラックスしてと言っても難しいでしょう。月のものが終わって1週間したら、その後の1週間は周囲にうるさい人を置かないとか、休憩を細目にとるとか、好きな香りの中で生活するとか、環境に気を使ってみてください。その1週間は、いつもよりリラックスした環境を作ると思ってください。
薬草茶は明日から試してみましょう。合う合わないがあるので、ここに滞在中に飲んでみましょう。少し身体の確認をしていきますが、よろしいですか?脈を診たり、少し身体に触れます。簡単な問診もさせてください。答えにくければ答えなくても大丈夫です。と言って、薬草茶を作るための診察をした。
かなり、ストレスが溜まっていて身体がこわばっている。手足も冷えていて気の滞りがある。マチルダにマッサージができないか相談しよう。今日は深く眠れる環境を作ろうと考えて、そのことを伝えると快く受け入れてくれた。
準備ができたら自室に行きますと約束して別れた。マチルダにマッサージの準備をお願いして、眠りやすくなる薬草茶を準備した。初めての薬草茶はお茶を入れるようにして準備する。緩い寝衣に着替えて、薬草茶を飲んでもらう。違和感がないことを確認した。ベッドに休んでもらい、背中から手、足とゆっくりほぐす様にマッサージしていく。オイルは香りがきつくないものを選択した。マッサージの途中から眠りに入っていったので、かなりのストレスと疲れがあったのだろうと思う。翌朝まで熟睡できたようで、顔色が良くなっていた。




