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第一章 オーレンスト国王夫妻 No.2

あらすじ

 突然、王命で隣国へ嫁ぐことになった第3王女が、自身の能力を活かしながら活動する中で、周囲の人々と心を交わし愛と幸せを知っていくお話



 オーレンスト国の国王夫妻は、国王がカール・ヨーゼフ・オーレンスト29歳、王妃がスカーレット・アリス・オーレンスト27歳とまだ若い国王と王妃だった。

 王位継承が早かったのは、前国王が前王妃の身体が弱かったため、心置きなく二人の時間を過ごさせてほしいと早くから譲位を推し進められていたそうで、2年前に「退位させてもらう」と言って、さっさと前王妃を連れて領地に籠ってしまった。その頃には政務も現国王と王妃が行っていたので問題が起こることもなく、前国王の希望通りに王位の継承が行われた。早い即位についてオーレンスト国王が語られた内容だ。


 夕方からケレの挨拶を開始の合図に歓迎の晩餐会が始まった。国王夫妻には、まだお子さんはおられなかった。外務大臣夫妻には、成人した子供さんたちがおられるが、今回は、自分たちがしっかり見学したいので夫婦で来ましたと話された。大人達だけの晩餐会だったが、オーレンスト国では、外交官から前回の視察の報告が、あまりに熱意に満ち溢れており周囲が圧倒されたこと、その時の様子や報告の内容を面白おかしく披露されたことをきっかけに会話が途切れることなく、対話が弾んだ。

 28歳のケレと29歳のカール国王は、お互いに若くして即位したという共通の背景もあってか、話が尽きないようだった。スカーレット王妃は、物腰が柔らかく穏やかな雰囲気の女性だった。出された料理にオーレンスト国の材料が使われていると感謝されたり、口直しに出てきた米酒のゼリーはとても気に入ったようで、レシピを知りたいと言われた。自国の品物が他国で評価されて嬉しいと喜ばれた。私が年若いため話題に困るのではないかと思ったが、アルドアルの街のことや迎賓館のこと温泉のことと話を先導してくれた。非常に興味深いお話を聞くことができました。有意義な時間が過ごせました。ありがとうございますとお礼を言われたのである。打ち解けた雰囲気で、無事に晩餐会が終了した。


 翌日は、鉄道の見学に付き添う予定だったが、デーメーテールから至急確認したいことがあると連絡がきたので、向かうことにした。ケレが心配ないので、デーメーテールを優先していいと言ってくれた。馬でデーメーテールに向かった。到着するとアナベルが「申し訳ありません、視察が優先なのは分かっていたのですが」と恐縮した表情で謝罪してきた。緊急の要件か確認すると、「実は、デーメーテールの視察を明後日にしてほしい。」と相談された。理由を聞くと、駅舎から荷物を運ぶのに量が多くてどうにかならないか困っていた。そしたら研究室を建ててくれている大工のミゲルさんが、仲間のボビーが丸太の上を転がす荷台を作ってくれというからどんな物を作るのかと見に行ったら、駅舎から迎賓館まで動力で動く荷台を走らせていた。ここにも同じようなことができたら、たくさんの荷物が運べると思うと言われた。そして、ミゲルさんとボビーさんが相談して駅舎からデーメーテールまでの荷台を作ってくれたんです。こちらです。と言って案内してくれた。

 馬車や馬が走る道とは別の場所に丸太が土に半分埋め込まれていて、その上を車輪付きの荷台が滑車を使って走っている。アナベルが「勝手なことをしてすみません。」と顔色を悪くしている。私は「大丈夫よ。すごいわね。心配しないで、ここで、役に立つと思ったことはどんどん推し進めてもらって大丈夫。」と伝えた。「ミッケルさんから報告を怠るんじゃないと怒られました。」としょんぼりしていた。

 アドルフが来て「この荷台は凄いでしょう。勝手をしてすまなかったと思います。実はライから言われていたんです。牧場は牛乳や卵の収入が入るようになってきたが、耕作地から収益が上がるまでにはもう少し時間がかかるだろう。ここはまだ負債だらけだから、何かをするなら採算を考えるようにしろ。分からなければ役所の会計課のレイリンさんに相談すること。王宮では与えられた課題に取り組んでいればよかったのですが、ここではやりたいことがたくさんあって、それをするには費用がかかる。当たり前のことなのに、研究員の私はこれまであまり考えたことがありませんでした。」「今回、この滑車付き荷台をボビーさんとミゲルさんが考えてくれた時、二人が廃材を使うから荷台と丸太に費用はかからないと言ってくれて、レイリンさんに話したら電気は地熱を利用しているから心配いらないと言ってくれた。滑車の費用は必要でしたが、労働力や時間をかんがえると必要なことだと思いました。」と頭を下げられた。

 「それぞれの場所で、それぞれみんなが考えて、協力しながら行動し、結果良い方向に進んでいく、理想的な展開だと思います。勿論、費用は無限ではありませんが、採算が合うならやっていけばいいと思います。勿論こうして報告していただくことは必要ですが、謝罪は必要ありません。」と答えた。お互いが助け合って、良い意見があれば試してみる。良い結果が生まれて次の縁に繋がる。素敵なことじゃないですかと二人に笑って話すと、二人も安心した表情で笑ってくれ「ありがとうございます」と言った。明日は、荷台の試運転があるので、できればオーレンスト国の方々には明後日に来てもらうと、それもお披露目できるかもしれないので、予定変更の相談をしたそうだ。たくさんの人が関係しているので、急遽の変更は難しいと思う。試運転でも見学してもらえばいいのではないかと返事をした。出来上がったものだけを見てもらう必要はないと思うと話した。二人は少し考えて、「そうですね、全てが完成された状態でなくてもいいんですよね。そうします。」と明るい表情で「明日は、お願いします」と元気な声が出ていた。


 序にというのは申し訳ないのですが、もう一件、報告と相談があります。とアドルフが言った。以前、クライスト公爵が来られた時に提案されたんですが、温泉熱を利用して珍しい果物の栽培をしてみてはどうかと助言をもらいました。

 試しに倉庫の一つに配管を通して温泉を流してみました。ここには、かなり高温の温泉が出ている場所があるので、それを利用しました。倉庫内の温度は上がったのですが日照不足で、天井や側面をできるだけガラスに切り替えたいのですが、費用がかかるため悩んでいます。大工さんたちが、ここでガラスを作ってもらったらいいんじゃないかと提案してくれて。ここにガラスを作る材料の石があるかどうか分からないけど、もしあればガラスを作ってもらえるんじゃないかと話しています。ガラス職人の知り合いがいる方がおられたら、一度相談に乗ってもらえないでしょうか?

 そういえば、アンゼリカがシャンデリアを運んできた女性に職人さんに、才能があるのに勿体ないと言っていたことを思い出した。何か知っているかもしれない。二人に、こちらでもガラス職人について皆に相談してみると話した。


 私は直ぐに鴻臚館で内装の仕事をしているアンゼリカのところに馬を走らせた。デーメーテールでアナベルとアドルフが取り組んでいる新しい事業内容とガラス職人を探していることを説明した。

 アンゼリカが、ガラス職人ね、エルが思い浮かべているのはシャンデリアを持ってきた彼女のことじゃない?ソフィアのことだと思う。彼女はね、ガラス職人の家に生まれてね、父親は末っ子の唯一の女の子のソフィアをすごく可愛がっていたの。どこにでも連れて行ってたわ。ソフィアはね、兄弟の中の誰よりもガラス職人の才能があるの。でもね、職人の世界ってまだまだ封建的でしょう。いくらソフィアに才能があっても兄たちが許さないの。家を継ぐのは自分たちで、だけど、ソフィアの才能は欲しい、だからソフィアには自分たちを助けるためだけに働かせているの。父親はガラス職人の世界では名の知れた人なんだけど、昔気質の人だからソフィアのことは可愛いから傍に置きたい、でも家を継ぐのは長男と決めていてね。全く腹の立つ家族なのよ。ソフィアは素直で健気でいい娘なの。あんな家出ればいいのにって言ってるんだけど、家族のためだからっていうのよ。今回の話は、ソフィアには良い切っ掛けになると思うわ。上手に話を持っていくわね。とニヤリと笑ってウインクして見せた。隣でマルティンもニヤリと笑っていた。

 


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