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戦国Trilogy  作者: 白猫
38/49

第38話:その後


「ひけぇ〜、ひけぇ〜!!」

信長軍がとたんに慌ただしくなり土煙が上がる。

各馬、Uターンをし下がっていく。

号令からものの数分どんどん軍が小さくなっていくのが見え

ポツーンと俺と信長だけがその場に取り残される形となった。


「楽しくなってきたのぉ〜」

信長からは笑みがこぼれていた。


「全然楽しくないわ!」

俺は即突っ込んでいたそして義龍軍を指差し


「んでどうすんだこれ」


俺が指を指した先には1万を超える義龍軍が攻めて来ているのが目に入る。

大きな土ぼこりと大きな蹄の音が更に迫力を増しているように感じた。


「な〜に心配することはないほれっ」

そう言って信長は俺に一丁の銃を渡してきた。


「これ本物?撃てんのこれ?」


「なに良三?銃を知っておるのか?」


「当たり前ぇじゃん!」

(まぁ、撃ったことはないけどな)


「では心配いらぬな!」


「いやいや、心配いるでしょ!」

確かに銃があればかなり有利の用に思えるが

俺が渡された銃はかろうじて銃と分る代物で、よく見なければ

棒と間違ってもおかしくないくらいしょぼいものであった。

おまけに銃と言えどたかが二丁1万には勝てないのは火を見るより明かだった。


「俺の知ってる銃と全然違うけど、これどうやって撃つんだよ?」


「先程、知ってると言ってたではないか?」


「俺の知ってるのはもっとかっちょいい銃なんだよ、いいから早く教えろよ!」

俺はせかすように言った。

多分、目の前に義龍軍が迫ってきているのに焦りを感じたからだろう。


「では、ワシがやるのをよう見ておれ」


「チッ偉そーに!!」


手際よく信長は銃に玉を込め引き金をひいた。

パァーン乾いた音と火薬の匂いが辺りに広がった。

義龍軍に当たったのかどうかは分らないが明らかに動揺しているのが

ここからでも分った。


「ほれ、良三も撃たんか?」

嬉しそうに信長が言う、本当にこの状況を楽しんでいるように思えた。


「お前、案外大物になるかもな!」


「何を言っておる、良三も早う撃て結構楽しいぞ」


人に向けて銃を撃つのが楽しいと言ってる時点でかなりヤバいのだが

目の前の大軍を見てるとそんな気も失せていた。

俺も早速見よう見まねで準備する。


この火薬をまず入れて、玉を入れる、んでこの棒でつっつく

次はどうだっけ?


「そっちの口薬をここに入れるのじゃ」

とろとろしてる俺をみかねて信長が手順を説明する。

すばやく火蓋を開き火皿に口薬をいれ、火縄を差し込む

早くも信長は次を撃つ準備が済んでいた。


「なんだか面倒くせぇ〜な」

文句も言いながらも俺もなんとか準備が出来た。

そのとき既に信長は3発の玉を発射させていた。


「やっと出来たか?ほれ撃てぇ」


「何処狙うんだよ」


「狙いなんて何処でも良い、とにかく撃て」


俺は狙いを定めるでもなくとにかく引き金を引いた。

パーン!

乾いた音、火薬の匂い、ずしんとくる反動

(やばい・・・これ楽しいかも?)


「どうじゃ、良三楽しかろう?」


「ま・・・まぁな・・・」

そう言いながら俺は次の発射の準備をすでにしていた。

不謹慎かもしれないが、確かに楽しかった。

ただ準備が面倒くさいのが難点だな、そう思った。


俺達は楽しむかのように銃を乱射していたが

まぁ乱射という程の球数は撃ってはいなかったが流石に

義龍軍もアホではない、たかが二丁の銃にいつまでも驚いている

訳ではない、何せ1万からの兵がいるのだから。


義龍軍はじわじわと俺らに攻めよってきた。


「はははは、流石にここまでじゃな」

目の前には義龍軍が迫って来ているというのに

信長は楽しそうにそう言った。


「じゃあ、後一発だけ撃たして」

楽しくなった俺は名残惜しく最後の一発を嘆願していた。


「仕方ないのぉ〜ではワシも」


俺と信長は最後の一発を空に向け同時に撃った。

示し合わせた訳ではないものの同時に同じ行動をとっていたのが

さらに可笑しかった。


そして俺は大きな声で

「さぁ〜て次の手は・・・・」


俺と信長は顔を見合わした。


「逃げろぉ〜〜!!」

「逃げるぞぉ〜!!」

またも俺と信長は同時に同じ行動、言葉を発していた。


当然と言えば当然の行動ではあったのだ。

そもそも俺らは、信長軍が撤退する時間稼ぎをしていたのだから

時間さえ稼げればあとは逃げるだけだったのだ。


こっちはたった二人、向こうは一万からの軍

逃げるのは断然俺らが有利だった。


「あはははは、はははっはは」

俺らは笑いながら逃げていた。


「楽しかったのぉ〜」


「楽しくねぇ〜よ!!」

俺はつっこんでいたが、やはり笑いが止まらなかった。


それよりこの信長という男、

大将にも関わらず殿を自ら引き受け自分の味方を逃がすなんて

中々出来る事ではない。


初めてあった時に感じたこの男からの凄みは一段と強いものに

なっているように感じた。



(むしろ感謝しておるぞ、お前との話は本当に楽しかった)

「えっ!?道三??空耳か?」


「良三、何か言ったか?」


「いや・・・何も・・・」

道三もこの結末に満足とはいかないまでも

納得はしているのだろう、そう思った。

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