第39話:再び
後に長良川の戦いと呼ばれたこの戦いはこうして一応の幕を下ろした。
ここから時代は更に加速し戦乱になっていく事を俺はまだ知らない。
俺はしばらく、信長の所に厄介になっていたが、流石に飽きてきたので
いや、信長の家臣としてしつこく誘われるのが面倒になったというのが
本音かもしれなかったのだが俺は俺の仕事があるということで自分の家兼
事務所に帰る事にした。
久しぶりに帰った我が家は当然ながら埃まみれの状態であった。
部屋に入り足を踏み込むたびに埃が舞い上がる。
「うぅ〜プップッ、こりゃまずは掃除からだな
にしても、藤吉郎ヤツいったい、いつになったら帰ってくんだよ」
藤吉郎が今川の内偵に出かけすでに何年もの月日が流れていた。
「まぁ、俺も色々あったからなぁ〜」
この前起きた出来事が俺の中では既に何年も前の出来事の様に感じていた。
そして、この世界にきてから時間が過ぎていくのが異様に早く流れて
いたことも俺は気づいていなかった。
「さぁ〜て、部屋も奇麗になったことだし、看板でも出しますか」
俺は看板を出し万屋を再開店させた。
が、当たり前のことだがこれだけ長いことほったらかしにしている
所に客が来るはずもない。
暇になった俺は良い天気だったこともあり居間でウトウトしていた。
多分、色々なことが片付いた事での安心感も手伝ったのだろう
昼寝を通りこし既に陽は傾きかけていたころだった。
「うわっ!」
殺気?寒気?異様な気配を感じ俺は飛び起きた。
「なんだ?今の感じ・・・夢か・・・?」
俺は腕でよだれを拭いながら辺りを見回した。
「うわっ!誰だお前!?」
俺の目の前には薄汚れた男が無言で立っていた。
一瞬夢かとも思ったがこれは夢ではない、西日に照らされ
顔はよく分からなかった、確実に足はついているが一応聞いてみた。
「幽霊じゃないよなぁ?」
「・・・・・・・・・」
その男は相変わらず無言である。
「もしかして・・・本当に幽霊?足ついてるよな??」
「某の頼みを聞いてくれませぬか?」
そう言ってその男は膝をつき頭を下げた。
なにやら聞いた事のある声だった事もあり、俺は記憶を探っていたが
声の主を思い出すのにそう時間はかからなかった。
「えっ!?その声もしかして明智?」
「やっと気づきましたか」
そう言い明智は顔をあげた。
確かにその男は明智光秀だったが、初めて会った時と180度違うと
いっていいほど変わり果てていた。
話し方、言葉遣い、異様な雰囲気は変わっていない。
変わっていたのは見た目だった。
初めて会ったときの明智はしっかりと着物?を着こなし、
どこか小綺麗な感じだったのだが
今、目の前にいる明智の格好はボロボロであり顔も薄汚れている
しっかりと結わえられた髪も今は乱れている。
普通ならば何があったか気になる所なのだが
コイツの話を聞くのは直感的にヤバい感じがしたので
その事については触れない方向でいこうと思った。
その時、瞬間的に思い出した。
「おい、お前、道三の軍にいなかったか?」
「・・・・・・」
明智は黙ったまま何も答えなかった。
コイツが道三の所にいたことが本当だったとしても俺にとっては
実際どうでもいい話なんだが、始めに依頼を受けた斎藤探しも含め
何かを企んでいるのは間違いなく、何だかすっきりとしない気持ちがあった。
「まぁ、答えたくなきゃそれでもいいんだけどな」
と言ってはみたものの正直な所、本当の答えを聞きたい気持ちが
半分はあった。




