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戦国Trilogy  作者: 白猫
12/49

第12話:藤吉郎の覚悟


濱嶺の家を後にした俺らはこのまま村に帰っても

特にすることもなかったので

どちらから言った訳ではないが

二人で町を歩いていた。


「刀が出来たら藤吉郎ともサヨナラだな」


「ああ・・・・そうだな」

気の入っていない言葉が少し寂しかった。


「あのさ・・・」

二人同時に発した言葉だった。


「何?」


「いやそっちこそ先言えよ」

と言った瞬間なんだかおかしくなった。

昔も日常においてやってること同じということが

こんなしょうもないことで実感している自分に

気付いたのが可笑しくて仕方なかった。


「あはははは・・・」

俺は大声で爆笑していた。


「何が面白いんだ?」


「わりぃ~わりぃ~何でもねぇ~んだ

 昔を思い出してな、いやまだ来ていない時代だから

 未来を思い出してか ・・・

 そんなことより藤吉郎何か言いかけただろ?

 なんだったんよ?」


「なぁ良、自分と一緒に何処かの君主に仕える気はないか?

 お前となら、きっと時代を築ける気がするんだよ」

唐突な話ではあったが、俺も似たようなことを考えていた。


「どっかの君主ってあれだろ?殿さんのことだろ?

 あてでもあんのか?

 本当に強いかどうかわからないおっさんの命令なんて

 俺は聞けんぜ」


「そんなこと言っても家系が良いわけでもない

 はじめは武功を重ねてそのうち・・・」


「おいおい、藤吉郎、お前歴史に名を残すんじゃなかったのかよ

 んな、ぬるい事言ってて大丈夫か?

 どっかの君主を倒すってんなら力にもなるけ ど」


「二人でか??無茶をいうな到底無理な話だ」


「そりゃ、当然そうなるわな!

 まぁ、さっきのは例えの話だよ

 でも俺もお前とならなんかやれそうな気がするのは

 一緒なんだ、ただ・・・そんな下っ端になった所で

 名を残せるなんてのは考えられねぇ~よ

 コイツになら命かけれるってヤツが

 いるんであれば話は別だが・・・

 そういうヤツがいるのか?」


「いや・・・・今は・・・・」


「だろ、だったらよ二人で商売でもしねぇ~か?

 俺には勉強の知識はないにしろ、未来を生きてきた

 経験があんだよ!絶対に稼げるし話題にもなるはず!

 んで稼げるだけでなく色々な情報も手に入るだろ

 俺は力には自 信あんだよ!どうせならこっちから

 頼みに行くんじゃなくてよ

 向こうからスカウトに来させよ~ぜ!」


「すかーと?」


「バカ、そりゃ女の子が穿くやつだろ!スカウトだ!

 ようは向こうから俺たちに来てくれって頼みにくんだよ」


「そんな事が可能なのか?」


「だから、可能にするため頑張んだよ」


「何を頑張るんだ?」


「んぅ~???いろいろだよ!!」


「良の言う通りになるなら願ってもないな

 こっちから頼むんで家来にしてもらうのと向こうから

 頼まれて家来になるのでは確かに違うからな」


「いやいや、まぁ家来でもいいんだけどよ

 まずはてっぺん目指そうぜ!

 んで妥協ラインで家来って感じじゃなきゃ

 やる気でないだろ?」


「おぉ・・・そうか・・・

 恐れ多い気もせんでもないがそういうことにしとこうか」


「おっ!?その気になってきたか?」


「確かに良の言うことにも一理あると思っただけだ」


「だろ」


「不思議だな、未来人を差し引いて考えても

 お前の言ってることは無茶苦茶なんだが

 何故か、その気にさせられる。」


「褒めてる?バカにしてる?」


「いやいや褒めてるんだよ」


「そっか、ならいいや」


「そうと決まればまず何をする?」

嬉しそうに藤吉郎が尋ねてきたが


当然今の俺はノープラン!!

即答できずにしばらく考える。


さすがに強いヤツに喧嘩売っていくってのは駄目だ ろうしなぁ~

今の時代になくて・・・・未来にあったもの

未来で流行ったもの・・・・

名を轟かすことができるもの・・・

考えるよりも行動が先の俺に素敵なアイディア

が出るはずもなく

「やっぱりそのような都合のよい話はないかぁ~

 何するかも決まってないんではのぉ~」


「!?そうか藤吉郎ナイスアイディア

 何するか決まってないんだからなんでもやろうぜ!

 トラブルシューター的な・・・」


「とらぶる・・・なに??」


「簡単にいうと何でも屋だな

 犬探しから浮気調査までなんでもOKみたいな!」


「未来の人間は犬を探しているのか?」

不思議そうにしている藤吉郎を横目に

俺は一人で盛り上がってい た。


「そうと決まればまずは事務所だな

 さすがに藤次郎の家では人も来ないし所詮村だからな

 せめて事務所は町とは言わないまでも町の近くがいいな

 うん、うん」


「なぁ良?一人で盛り上がってるとこ悪いんだけど

 まったくついていけてないんだが・・・」

そんな藤吉郎の言葉などお構いなしに話を続ける。


「なぁ、藤吉郎お前、金いくらもってる??」


「いや・・・まったくないけど・・・

 さっき見とったじゃろ濱嶺に全部渡したのを」


「そうだったな・・・ちょっともっかい濱嶺の所いってよ

 半分くらい返してもらおうぜ!」


「一度出したものをそう簡単に引込められるか!」


「いやいや、藤吉郎ちゃんよぉ~

  そんな肩に力入れて言わなくてもよ

 ならさ、お前は濱嶺に刀代としてお金を渡した。」


「さよう」


「んで、俺が濱嶺から金を借りるってのでどうだ?」


「それならいいか・・・」


「よっし決まり、すぐ戻ろうぜ!」


俺たちは来た道をすぐさま引き換えし、再び濱嶺の家に行った。

事情を話すと濱嶺はすぐに金を出してくれ

さらに返さなくてもいいとまで言ってくれた。


どうやら藤吉郎が渡した金額は相当なものだったらしく

今度俺らが来たときに返そうと思っていたらしい。


それでも藤吉郎はそれを受け取らなった。


なのでありがたく俺がそのお金をもらったのである。


「なぁ、藤吉郎お前なんであんな大金持ってんだ?

 それこそどっか から盗みでもやったか?」


「無礼な!あの金は家を含め家財道具一式全ての金だ」


「マジで??」


「ああ大マジだ」


「じゃあお前家とかはもう・・・」


「もうない、帰ることろも当然ない」


「な~んだ、結構な覚悟してんじゃん!

 こりゃ何が何でも成功させねぇ~とな」


「当たり前だ!」


胸をはった藤吉郎がそう答えた。

コイツに初めて会ったときに感じたオーラはこういう

覚悟のものなんだと改めて思った。


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