第3話 宝箱見つけた!
ダンジョンの探索を初めて1日目の夜が来た。
ダンジョン内は常に一定の明るさなので昼夜の区別がつかず、時間か疲労具合で休息を決める。俺達は前者だ。
「今日はここで休みましょう」
ダンジョンには小部屋がいくつかあり、適当に空いている場所にテントを張る。小部屋にも勿論魔物は入ってくるので交代で見張りが必要となる。
テントはアイテムポーチに入れておいたので大型で立派なものだ。中に魔道具のトイレ【SUISEN】も設置する。
ここでまたシャラとセノビアにアイテムポーチの有用性について褒められた。
今はアイテムポーチから取り出した食材で夕食を作っている。
ダンジョン内で倒した魔物の肉を鍋で煮込んでいる。
「一日探索して4層か…」
「順調ですね」
「そうね。このペースなら明後日には10層までたどり着けそうね」
「三日で10層か、帰りも合わせると6日かかるな。もう少し進める気もするけど…」
「今回はダンジョンに慣れるため短めにしておいたほうがいいわ。疲労は確実に溜まっていくからね」
まあ俺も初めてのダンジョンだしセノビアの意見は聞いておくけど宝箱のひとつは見つけたいな。
「いい匂いがする!!」
「そろそろ食べごろですね」
「どれどれ…」
セノビアがスプーンで味見をする。全員で料理したスープのお味は表情から見るに満足のデキのようだ。
「早く食おう!」
「お腹すきました!」
「はいはい。今よそおうわね~」
セノビアがお母さんポジションだ。このパーティーでぶっちぎりの年長だしね。
「お~! うめぇ~!」
「本当に美味しいです!」
「ふふん、そうでしょうとも。ダークエルフを見直したかしら?」
「「いや、それはない(です)」」
料理は美味しいけどそこはシャラと否定しておく。
やっぱね、性格だよね。
セノビアは落ち込んでも「ふんっ、これだから下等種族は…」とか言ってすぐ復活するので無視して食事を進める。
精神の強い種族だ。
コケ鰐とクリープの身のスープはとても美味しくて体が温まる。
ちゃんと肉の臭みも取れていてあっさり系のスープと濃い肉の味がマッチングしている。クリープの白身は魚そのもので柔らかく小骨がないので食べやすい。米がないのが残念だがパンでも満足できる味だった。
「コケ鰐は見た目が悪いけど肉は旨いな」
「私はクリープの身が気に入りました」
「そういやエルフは菜食主義だったか? 肉は苦手なのか?」
「そういうわけではありませんけど私はお肉も好きですよ」
「ふふ、コケ鰐の肉は滋養強壮の効果があるからラウス様には元気になってもらわないとね♡」
だってよマイサン。
食事後は川から水を汲んできて体を洗う。
勿論俺の体を洗うのは奴隷のシャラとセノビアの仕事である。
シャラとセノビアは胸と腰に湯浴み用の布を巻いて俺を綺麗にしてくれた。湯浴み中はシャラの索敵魔法で周囲を警戒しているので俺は安心して王様気分を味わえる。
寝る前に見張りの順番を決める。
セノビア → シャラ → 俺となった。
俺は初めてのダンジョンで予想以上に疲労していたのかすぐに熟睡。あまりの快適の眠り心地に交代を知らせに来たシャラにイラっとしてしまったほどだ。自分でシャラにちゃんと起こすように命令しといて身勝手なことだ。
俺に睨まれたシャラが涙目になってしまったじゃないか。
シャラには悪いことをした。
土下座で足りだろうか?
翌日とても落ち込んでいるシャラとそれを見てご機嫌なセノビアの姿が。
まさかセノビアの策略!? ハメられた!
過失百で俺が悪いんだけど…。
今日からは俺が一番に見張りをしよう。
二日目の探索は初日よりしんどかった。
やっぱり魔物が突然現れたり、罠や冒険者に警戒したりで気を張りっぱなしだから疲れるわ。
これで宝箱でも見つかれば疲れも吹き飛ぶのに…。
「それにしてもここのクリスタルは綺麗ですよねー」
シャラが通路の端や壁際から飛び出しているクリスタルに見とれている。
確かに無色透明で淡く輝く幻想的な水晶だ。売れば絶対高値がつくぞ。
「これって持って帰れませんかね」
「やめておきなさい。ダンジョン特産は無理に持ち帰っても消えてしまうだけよ」
セノビアに言われてシャラは残念そうだ。
ダンジョン特産か…そういえばガイドブックにそんなことも書いてあったな。どういう仕組みなんだろ? 感触は普通のクリスタルなのにな…。
「ラウス様、もうすぐ6層へ続くゲートにつきます」
もうゲートか。それにしても…。
「この階でも宝箱なかった…」
二日目にして俺のテンションは下がりまくりやで。
「元気出してくださいご主人様」
そんなこと言っても宝箱がないんや!
シャラの慰めも今の俺には全然足りない。おっぱい揉ませてくれたらやる気も出るかもしれないけどな!
「あっ、ご主人様魔物です!」
シャルが弓を構える。
どうせ魚か鰐だろ。それなら弓を構えているエルフ見ている方が萌えるぜ。
そうしてシャラを見つめていると頭に何かが飛んできた。
「げふぅっ!!」
ドロッとする! なにこれ!?
「ご主人様!?」
「大変! ラウス様が毒を!」
毒!? 毒だって!?
うおおおおおぉぉっ! キュアっ! キュアっ! ヒール!!
俺はアホみたいに解毒と回復魔法をかけまくった。
回復魔法の光で頭が電球みたいになっていたと思う。
「ご主人様! おのれ! よくもご主人様を!」
俺が毒を拭き取る頃にはシャラが一人で魔物を倒していた。風魔法で切り刻まれた大きな黄緑色のカエルの死体が散らばっている。
「どうしてよけなかったのよ!」
「心配しました!」
「…ごめんなさい」
セノビアとシャラにめっさ怒られた。
失敗って集中が切れた頃にやってくるよね。
俺は説教されているにも関わらずアイテムポーチから手鏡を取り出して自分の顔を覗いてみる。
うん、綺麗なお顔☆
「ご主人様!」
「ラウス様!」
ちゃ、ちゃうねん! この美しいお顔に傷が残ったら大変でしょっ!
そんな言い訳は通用せずお説教の時間が増えただけだった。
「全く、ご主人様がそんなことではこれ以上の探索は危険です」
「そんなっ! もう絶対気を抜かねぇ! 24時間感知魔法を展開するから!」
「それは魔力の無駄遣いですよ…」
「ラウス様のお望みの宝箱でも見つかればいいのだけど、この階層も冒険者にはそこまで難易度が高くないから探索されつくしているでしょうね」
ぐぬぬ…。おのれ冒険者どもめ…。
これで宝箱を見つけた冒険者に遭遇したら襲う自信がある。
「なんとかご主人様に宝箱を見つけて欲しいですけど、…何か方法はありませんかセノビアさん?」
「そうね~、他の冒険者がまだ見つけてない場所があれば一番確実だけど…」
…待てよ? それなら一つあるじゃないか!
「俺に心当たりがある!」
「本当ですかご主人様!?」
「本当なの?」
シャルは素直に喜んでセノビアは半信半疑だ。
だが俺には自信があるぞ。
「それでどこなんですかご主人様!」
「ふふ、簡単なことだ! 宝箱は…川の中にある!」
どやーっ!
「「…」」
「…」
「「はぁー」」
…何か二人にため息吐かれた。




