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魔法チートのなれのはて  作者: ナベのフタ
義手と奴隷編
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第10話 指名依頼

 ― Side ラウス ―

 久しぶりにギルドへ行くと周りがやけに俺たちに注目していた。セノビアがダークエルフだからといって注目しているということはないだろう。対策としてローブと仮面で念入りに姿を隠しているのだから。

 周囲の反応が気になるがとりあえずセノビアの冒険者登録に行く。


「『宝石の腕』のパーティーですね。ギルドマスターがお待ちしております」

「…はい?」


 いきなりギルドマスターのイベントがきた。



「貴様らが『宝石の腕』だな?」

「ど、どもリーダーのラウスです。こっちの一人はまだ登録していませんけど」


 部屋に案内されるとギルド長が椅子に座っていた。ギルドマスターは威厳のある40代のおっさんだ。


「済まないが腕を見せてもらえるか?」


 いきなりだなおっさん。

 まあギルドマスターに隠し事というのもイメージが悪そうだし見せても問題はないか。俺は腕に巻いた白い布を取ってやる。

 赤い戦闘用アームが顕になり、俺は指を動かしてみせた。ギルド長は目を見開いて驚いている。


「赤い腕。情報ではピンク色だと聞いていたが…」

「イメチェンですよ。もういいですか?」

「あ、ああ。本当に義手なのだな。驚いたぞ…」


 ギルドマスターはまだ俺の腕を凝視している。

 わかるぜ。男のロマンだからな!


「本当にこんな子供だったとはな」

「は、はぁ」

「貴様に指名依頼がきている」


 指名依頼? なんじゃいそりゃっ!


「依頼内容はある人物の治療。そして依頼主はとある貴族とだけ言っておこう。

 ここから先は貴様が依頼を受けるかを聞いてからでないと答えられない」


 め、面倒くさい気配がプンプンするぞ。


「良く分かりませんが依頼ってことは受ければランクアップします?」

「ああ、それは問題ない。むしろ通常の以来よりも評価点が入るのでランクアップは早くなるだろう」


 それじゃあ受けてもいいけど依頼主が貴族っていうのは面倒だな。自由が売りの冒険者がなんで頭下げてヘコヘコしないといけないんだよ。


「俺今Gランクなんですけどその以来受けたらパーティーメンバー全員Eランクにできたりします?」

「ふむ、何故Eランクになりたい? ダンジョンか?」

「ええ、ダンジョン入ってお宝探すのが夢なので」

「そうか…。…不可能ではないとだけ言っておこうか」


 依頼を受ければできるっぽいな。


「じゃあ最後に依頼にかかる日数と貰える報酬を教えてもらえますか? それ次第では受ける気ないんで」


 これは当然の質問だ。

 何十日もかかる依頼とかだったら地道にランクアップしたほうが楽だし、報酬が少ないのに治療とかしたくないからな。


「依頼にかかる日数は詳しいことは分からんが場所自体は遠いものでもない。貴様の治療とやらの時間を除けば移動は往復で2日もかからないだろうな。

 最後に報酬だがギルドからは依頼を引き受けた時点で金貨2枚を支払い、後は向こうと交渉ということになっている」

「…分かりました。それじゃあ仲間の一人が冒険者登録を終えたら引き受けようと思います」


 やったー! 値段交渉ならブラック・J先生ごっこができるぞー!


「そうか、ならばその時に詳しい依頼内容を説明しよう」


 部屋を出てから受付でセノビアの冒険者登録をする。何も問題はなかったのでギルド長に指名依頼の内容を詳しく聞きに行った。


「依頼内容は隣町のドルジ侯爵家の第一子が落馬で両足が動かなくなってしまいその治療を求めている」

「両足…」


 それって下半身不随じゃね?

 足取っ替えても動かせるか怪しいな。

 やべぇ、まずったかも。


「骨が折れているとかではないんですよね?」

「ああ、詳しいことは分からんがその程度なら回復魔法で治せるだろう」

「…そうですか」


 うーん、神経は回復魔法で正常には戻らないから雷魔法で無理やり電気信号を送ればなんとかできるか?


「分かりました。とりあえず行ってみますね」

「うむ、頼んだぞ。それとこれはギルドからの報酬の金貨二枚だ」


 金貨を受け取り依頼主であるドルジ伯爵家に向かう。

 移動は馬車がなかったので徒歩にした。隣町なので歩いても日が暮れるまでには到着する。


 隣町についたその日は宿屋で疲れを癒した。

 翌日に朝、ドルジ伯爵の屋敷を訪ねた。


「何用か?」

「ドルジ伯爵から指名依頼を受けてやってきた『宝石の腕』です」

「確認する。しばし待たれよ」


 門番は屋敷の確認が取れると俺たちを中へ入れてくれた。

 屋敷に入ると執事に案内されてドルジ氏に会う。


「君が『宝石の腕』かね?」

「はい。『宝石の腕』パーティーリーダーのラウスと申します」

「う、うーむ」


 ドルジ氏はめっさ俺を疑っている。

 そりゃそうだろ。俺まだ10歳だからな。


「治癒魔法が使えるというのは間違いないか?」

「はい」


 敬語とか苦手なので口数少なくしとこう。メルスとは違ってフレンドリーでもないからな。


「噂では君が失った手足の治療が可能だと聞いたのだが?」

「再生というのは無理ですが義手ということなら出来ます」

「その義手というのは?」


 これは見せた方が早いな。

 俺は片腕の布を取り義手を見せる。


「こんな感じです」

「な、なんと!」


 ドルジ氏と執事さんは目を見開いて驚いている。

 もうこの反応にも慣れてきたな。


「凄いな。それは魔法で動いているのか?」

「まあ、はい」

「それならば確かに私の息子の足も治るかもしれぬ」

「ですが旦那様、少々あの義手は形状がいかつすぎるのでは…」


 聞こえてるぞ執事。

 この機能美が分からぬとはお前の目は腐っているのか?

 

「一応普通のモデルもあります。このシャラの腕も義手ですから」


 シャラの生身モデルのアームも紹介してみる。

 見た目は生身の腕と変わりがないので二人はまたしても目を見開いた。


「これほどの腕が作れるとは…それにしても奴隷ごときにはもったいない代物だな」


 あん? テメェー人の奴隷に何いちゃもんつけてんだ。

 帰るぞこら!?


「ドルジ様」

「うむ、よろしい。

貴様に私の息子の治療を任せよう。ついてこい!」

 

 そう言って伯爵は部屋を出て歩いていく。

 伯爵の態度に腹が立つが今はこらえよう。


 伯爵の息子のいる部屋に着くと早速診察してみる。

 ベッドで上半身を起こしてはいるが足は全く動かせずにいる。これはやはり神経がやられているのだろう。


「どうだ? 息子の足は治せるのか?」

「…はい」

「おおっ」


 足を治せると分かって執事は喜んでいる。


「いいだろう。貴様に治療を任せよう。報酬は息子の足が治り次第払うとしよう」


 なんていう上から目線。

 しかも報酬の話を誤魔化そうったってそうはいきませんからね!


「伯爵様。先に報酬の話をしてもよろしいでしょうか?」

「何? それは後で支払うと言ったであろう」

「いえ、失礼ながら私の治療は高額で初めに教えておこうと思いましてね」

「なっ、貴様! 私にそのような事を意見していいとでも」


 へっ、偉そうにしてんじゃねぇぜ!

 俺のブラック・J先生ごっこは権力には負けねぇんだよ!


「そうですね…。両足の治療ですから金貨千五百枚を頂きましょう」

「なっ! ふざけるな! そんな金額を払えるわけがなかろう!!」


 伯爵は顔を真っ赤にして怒鳴る。

 おいおい、メルスはちゃんと払おうとしたぜ?


「嫌ならば構いません。このお話はなかったことにするまでです」

「貴様! 詐欺師として兵士に捕らえさせるぞ!」


 え? それされると俺犯罪者になるんじゃね?

 そしたら一生日陰者? 嘘だよね? 法律はちゃんと守ってくれるよね?


「は、はは。伯爵様も冗談が悪い。いくら治療費が高いからって兵士に捕らえさせるなんてことは職権乱用でしょう?」

「ふふ、この街で私に逆らってどうなるのか試してみるか?」


 ………。


「調子に乗ってすいませんでしたぁぁっ! ご子息様もの足は無償で治療させていただきます!!」


 見ろ! これが土下座だ!

 すいませんJ先生。俺は先生のように気高くはなかった。

 この世界の権力には勝てなかったよ。


「はっはっは。分かればよろしい。さっさと息子の足を治療しろ。失敗すれば貴様の首が飛ぶと思え」

「へへぇっ!!」


 高笑いしながら部屋を出ていく伯爵。

 俺の後ろではシャラとセノビアが怒りで震えているが我慢してくれ。今回は小物モードで行くことにしたんだ。

 やってみると意外と楽しいよ☆


「おい魔術師。さっさと俺の足を治療しろ」

「へいっ! すぐに始めます!」


 こうして俺のタダ働きが始まった。


 執事さんには治療のためといって部屋の外に出てもらった。最初は伯爵の息子を一人にはできないと粘られたがこればかり小物モードでお願いしまくった。

 執事が部屋を出たあとは生意気な伯爵息子に睡眠と麻痺の魔法をかける。


 伯爵の息子の怪我は神経の異常だったので義足にはせず、雷魔法と回復魔法を色々やって最後に闇魔法で強制的に洗脳して足に電気信号が通るようにした。


「ふぅ、これで多分治療は完璧だな」

「流石ご主人様です」

「ええ、足を取り替えずに治せるなんて素晴らしいわ!」


 シャラとセノビアから褒められた。

 まあ、俺って天才だからね。


「それにしてもあの伯爵の態度は許せません。ご主人様に報酬も払わずに治療させるなんて万死に値します! ギルドマスターに講義しましょう!」

「そうね。私もあのおやじが憎たらしくて仕方ないわ。ラウス様、いっそこの屋敷ごとぶっ潰しましょうよ!」


 おいおい、なんて物騒な奴隷たちだ。エルフは戦闘民族か何かだっけか?


「そんなことより逃げるぞ」

「「ええっ!?」」

「ええっ! じゃないよ。さっさとこんな屋敷出ていかないと面倒事にしかならん」

「ですが勝手に帰っても大丈夫なのでしょうか?」


 シャラは不安なようだ。だが「俺が法だ!」とか言っちゃう伯爵のところにいたら絶対いいように利用される。

 ここは治療だけしてさっさとおさらばするに限るぜ。


「大丈夫。置き手紙を書いておけば問題ない!」


 内容は『子猫にえさをやるのを忘れたので帰ります』とかでいいだろ。

 その後、窓から脱出した俺達は文字通り飛んで帰った。風魔法で空を飛べないセノビアはシャラが抱える。


 さて、ギルドについたらギルドマスターとメルえもんに助けを求めるか。





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