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第42話踏み出す一歩

第42話踏み出す一歩

1

「私のお母さんの事で、大事な話があります」

朝起きてくるなり、そんな事を言い出してきたルシアに俺は戸惑った。彼女の目は朝だというのに何かを決意したような目で、何を話そうとしているかなんとなく察したからだ。

「それは…俺だけが聞けばいいのか?」

「はい。 パパにだけ聞いておいてほしい話ですので」

「ローナにも話すなってことか…」

「あの子は巻き込むわけにはいかないので…」

「巻き込むわけにはいかないって、家族なのにか?」

「大切な家族だからです」

彼女の気持ちは分かるが、果たしてそれでいいのだろうか? でも彼女本人が決めたことだし、内容によっては本当に黙っておく必要があるかもしれないし…。

「分かった。ここで話すのもなんだから少し外にでようか」

「はい」

この先何が起こるのか若干不安になりながら、俺はルシアを連れて外出するのであった。

2

「あそこのベンチに座りながらでいいか?」

「はい」

ホテルをでて少しした所に、話を聞くには丁度いいベンチがあったのでそこに俺とルシアは腰掛けた。

「それでその大事な話ってなんだ?」

「……」

すぐに本題に入ろうとさっきの話を切り出すが、ルシアから返事がない。

「ルシア?」

「あのですね私…」

「うん」

「自分の世界、お母さんの元に帰ろうと思うんです」

「え? 今なんて?」

突然の言葉に俺の思考は一瞬ストップする。

元の世界に…帰る?

「昨日の千代さんの話を聞いて私思ったんです。このまま私がここにいても、パパやママの邪魔をするだけなんじゃないかって」

「そんなことない。俺達は家族なんだ。誰一人邪魔だなんて思ったりしない」

流石に驚きを隠せない俺は、思わず熱くなってしまう。だってあんなに自分の母親のことを嫌っていたのに、わざわざ自分から戻ろうとするなんて間違っている。

「パパの言うことはもっともです。皆大切な家族です。昨日言ったことは何一つ嘘ではありません」

「だったら何で…」

「でもそれは私のお母さんも一緒なんじゃないかなと思ったんです。やり方は間違っているとはいえ私達のことを思ってくれている。それだけでも十分じゃないんですか?」

「けどな、お前帰るのを嫌がっていたじゃないか。お前達の世界の現状を聞かされた時だって、戻りたくないって言ってたし」

「確かにそうですね。でもいつまでもマイナスな事ばかり考えていたって、何一つ解決しないと思うんです。自分から踏み出していくのがこれからの人生の新しいスタートになるんじゃないでしょうか?」

「ルシア…」

確かにいつまでも踏みとどまっていたらこの先何も変われない。それは俺自身にだって言えることだ。

それでも俺は…。

「俺はお前と離れたくない。折角出来た家族の形を手放したくない」

「パパ…」

ルシアにはここに残ってほしいと思う。

続く

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