表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/59

第10話 その夢を叶えるために

第10話 その夢を叶えるために

1

「二年もあれば何か変わってるのかと思った。けれどあなたは何一つ変わってない! 怖い事から逃げて、現実から目を背けて、私からも拓君からも逃げて…どれだけ逃げればいいのよ!」

千代が怒鳴り声をあげたことによって、周りのカップルがざわつき始める。だけど彼女はそんなの気にもしていなかった。

「お前に何が分かるんだよ…」

「え?」

彼女が怒ったことに対して俺もそれに乗ってしまう。

「お前に何が分かるってんだよ!」

千代が言っていることは確かに間違っていない。けれど…。

「俺だってここに来る時はすごく悩んだ。仲間を捨ててまで叶えたい夢なのかって。けれど俺は決めたんだ、自分が選んだ道は決して踏み外さないって。たとえその選択が周りを傷つけたとしても」

「確かにあなたの医者になりたいって夢は、簡単に叶えられるものではないと私も分かってるよ。でもそれを言い訳にしてるのはどこの誰よ!」

「言い訳ってお前…」

反論しようとしたが、言葉が出なくなってしまう。微かだが、千代の目からは涙が流れていたからだ。

「私、決めてたの。雄一君が壁にぶつかってくじけそうになった時、絶対に側にいて支えてあげようって。それなのに、あの日別れを切り出されて、すごく辛かった」

それは俺も同じだった。千代や拓也に別れるのは辛かったし、こっちに来た頃は後悔もしていた。でもそれが自分の選んだ道だと決めて、今日までやって来れた。

「だからこうして再会できたのはすごく嬉しい。もう一度私にチャンスが回ってきてくれたんだって。二年間我慢してきたかいがあったんだって」

自分から電話してきたくせにと心では思ったが、口にはしない。

「お前の気持ちはよく分かったよ。けどな、俺にはお前ともう一度恋人になれる気がしないんだよ。茨の道を進むって決めたからには、引き返せないんだよ」

「……」

「せめて今だけは、俺に夢を打ち込める時間をくれ。家に居候したって構わない、でも今だけは俺に…」

「分かった」

「え?」

「今は雄一君が頑張れるために、我慢するよ。私も叶えたい夢がないわけでもないから、お互い夢を叶えられるまでは我慢する。だからせめて…」

少しの沈黙。俺は彼女の次の言葉を待つ。

「せめて…あなたのそばに居させて」

何かを決意したかのように、千代がこちらを真っ直ぐ見つめてくる。その視線に、一瞬心が揺らいでしまうが、すぐに立ち直す。

「分かったよ。ただし、あの姉妹の面倒も見てほしいんだ。俺は普段大学に行ってるから、結構心配してんだ」

「うん。分かった」

この選択が本当に正しいのかは不確かかもしれない。けれど、彼女が側にいてくれればきっと、その答えも分かってくるはずだ。

だから今はそれでいいんだ。

続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ