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能力教室の号哭  作者: たるたるそーす
立てない子鹿編
1/48

運命の邂逅

本作の内容は作者が構想し、AIを補助ツールとして使用しました。


初投稿です。至らない部分も多々ありますが、大目に見てください。

 ──4月◼︎◼︎-1日・???──



「よし、機は熟した。計画を始めよう。」


腰まで届く白髪を垂れ流した少女が新月の下ではっきりと、力強く宣言した。右目は青、左目は赤の透き通った瞳をしていてどこか異様な雰囲気を一帯に漂わせていた。そんな彼女が考えている計画というのは日本中、下手したら世界中を巻き込むものとなるだろう。


「でもさあミズキ、この計画、すごーく難しく見えるけど...もし失敗したらどうするの?二度も同じ方法が通用しないことなんて知ってるでしょ?」


短い黒髪と深い黒目を持っている男は友人と話しているには緊張感が溢れすぎている声で白髪の女ーーミズキにそう問いかけた。


「その時は───」


「その時は?」


「その時考える!」


「ええ……」


「いやいや、逆にやる前からやる気無くさないでよ……」


「まあそうだけど……」


「じゃあもう始めるね!うん!決定!私はこっちでやっとくから!」


「いやちょっと待っ……!」


しかし、男が瞬きする間にミズキはそこから姿を消していた。


「はあ……相変わらず速いなぁ」


1人取り残された男はため息混じりに呟いた。そしてしばらく頭を抱えた後、最終的に怠そうに指示に従うことを決めた。この行動が今後意味をなすことを祈りながら。


「ほんとに成功させてくれよ、ミズキ……タダ働きは嫌だからね。」



 ──4月◼︎◼︎日・能力の授業中──



「次!マオ来い。」


まだ名前を覚えてられていない能力戦闘の先生が私の名前を読んだのを聞いた。私は嫌々体育館の真ん中に進んでいく。周りの何人かの人が私のことを見ていることを感じ、私の体に緊張が走る。


「じゃ、これまでに鍛えた能力を見せてくれ。」


体つきのいい日焼けのした先生が投げつけるように私に言い放った。


「……はい!」


私は一度深呼吸をして目を瞑る。そして両手を前に掲げて火球を想像して、そのイメージを頭から手へと伝達していく。だんだんと掌が熱くなっていく。今日はいつもに増してイメージが湧きやすい。火球の形、大きさ、色、温度、とだんだんと自分の中で火球が形成されていくのがわかる。今日こそは成功するかもしれない。そう思った一瞬の集中の綻びが失敗の原因となった。急激に私のイメージがどこかに消えていって、何も見えなくなる。最後の足掻きとしてどうにか火を創造しようとしたが、気づいた時には「ぽん!」という情けない音を出して掌から細い煙が出るだけだった。周りからクスクスという声が漏れ出ているのが聞こえる。もうこれ以上集中することなんて無理だった。


「もういいぞ。」


先生の無慈悲な声が響いた。



 ──放課後・帰り道──



「はあ……今日もうまくできなかったなぁ。」


狭い路地を歩きながら私はため息混じりに呟いた。ある夕暮れの帰り道、太陽が特段大きく見える時間帯に私たちはまだ新品と言える固い制服に身を包みつつ歩いていた。春の匂いというべきか、まだ暖かいと言える気温の中で漂う空気が私を励ましてくれているようで心地よかった。


「まあまあ、マオの能力は扱うのが特段難しいわけだし、仕方ないよ。」


そう慰めたのは私の幼馴染、ユキだった。ユキという名前だが、実際はその名前とは正反対だった。髪も金髪に染めているポニーテールだし、性格も雪というよりかは太陽だ。いっそ名前をヒナタとかに変えたほうがいいかもしれないと本気で思っている。一方私は赤が混ざったピンク色の短い髪をしていて、外見から一見明るい性格のようだとよく言われる。もちろん実際はそうではない。声も小さいし、能力も上手く扱うことができない。あっという間にクラスの中では有名人になった。悪い意味で。


「でもぉ……高校生になったんだから少しぐらい強くなれたと思ったんだよ……」


「私も最初はうまく行かなかったし、能力は感覚だから根気強く頑張ればいつかはできるようになるよ!ファイト!」


「……うん。ありがと。」


……また慰めさせてしまった。これは私の問題だというのに。後ろめたさと劣等感が胸にのしかかる感じがした。気遣いは嬉しいけど苦しい……やっぱりこういう話はしたくない。早く能力を上手く扱えるようにならないとと思うが、だからといってできないことを心のどこかで諦めていたのだろう。


「あ、もうついた。じゃあまた明日。」


「う、うん。またね。」


いつも通りの日。いつも通りの挨拶。だと思っていたのに、この日は違った。軽く別れの挨拶をしたのち、私は自宅の扉を開けた。そこで私の動きは完全に静止した。


まだ4月で、暑くも寒くもなく、本当に特筆すべきものがない高校一年の春だった。両親が他界して、静寂に包まれていたいつも通りの玄関──ではなかった。そこには白髪の少女──ミズキがいた。


「おかえり」


ミズキはさも自然に、それこそ昨日までもずっとここにいたようにそこにいた。私は一瞬言葉を失った。


「誰!?どうしてここにいるの?」


私は反射的に聞いた。周りにはもうユキも誰もいない。助けを呼ぶこともできないことをなんとなく感じた。


「私はミズキ。君に話があってきたんだ。」


ミズキはやわらかく微笑みながら、どこか軽やかに答える。だというのに彼女の声には芯が通っていて、どうしてか信頼できると感じてしまう。出会ってわずか1分も経たないのに。だからこそミズキの話を聞かずに追い出そうとは思えなかった。


「……なんですか。」


私は警戒を残しつつも、ミズキに何か絶対的な信頼を託しても良いという自信を感じさせられた。こういうもののことをカリスマ性と言うのだろうか。


「おっ、話が早くて助かるねえ。最近の若者はみんな警戒心が強すぎるんだよねえ。うんうん。1人くらいこういうのがいてもいいよねえ。」


ミズキは相槌を打ちながら続けた。「一体何歳だよ!」と言いたくなったが、そんなことを言えるほど私は強くない。精神的にも、戦闘面でも。ミズキの言動は軽くて、つい警戒を許してしまいそうになるが、依然として声には芯が通っていた。


「とりあえず長くなりそうだから中で話そうか。実はご飯作ったんだよねえ。食べながら話そう。もう用意はできてるからあとは食べるだけだよ。……あ、この家のものは使ってないよ!」


そう言いながらミズキは家の奥に入っていった。躊躇なんてなかった。自然と自宅に馴染んでいたからかその行動すらも初めてみたはずなのにどこか既視感があった。これも私がミズキへの警戒を解いた理由だったのかもしれない。


「え?えぇっと……ええ……あの……ここ私の家……」


私はそんなことを弱々しく呟いたが、ミズキは止まらない。私はこういう人は何を言っても止まらないことを知っている。実際私の両親はそうだった。よって私はついていくしかなかった。



 ──夕方・マオ宅──



私とミズキは肉じゃがを食べていた。とは言っても私は何も口に入れず、実際食べているのはミズキだけだった。ミズキが皿に入っていた肉じゃがを全て平らげたのち、静寂を壊す様に開口した。


「さて、本題に入るけど……君の能力、物質創造ね。あれをもっと使いこなせるようにしてみたくない?」


その言葉に私は身体をこわばらせた。どうして私の能力を知っているのだろう?私はミズキにこれまで会っていない。もし会っていたとしたらそのことをすでに話しているはずだ。しかし、相変わらずミズキに敵意はない。ずっと変わらずヘラヘラとして私を説得している。


「えっと……何から聞けばいいのかわかんないけど……私のことをどうしてそんなにも知ってるの?」


警戒感が抜けきれていない声で私は質問した。当たり前だ。この世界で能力というのは一つの重要な個人情報として普通は守られているはずだ。だというのに目の前の少女はさも当然だというようにそのことを言ってきた。正確に、私の今の状況まで。


「そりゃあ前調査はするでしょ。私はこれでもマオを勧誘しにきたんだよ?」


ミズキは何か可愛い悪巧みをしているような顔で続けた。


「私は、才能を見つけてそれを育てたい。私の願いを叶えてもらうために。だからこそ私はそのための場所を愛脳高校に作ったの。それがミズキ特別教室。」


「ミズキ特別教室……?」


「うん。君みたいな強いけれど使いこなせていない子たちが集まる場所。まあ部活と同じ扱いだよ。そこでは、ただ能力を磨くだけじゃない。自分の在り方を探す場所でもあるんだ。そこにマオを招待したいんだ。」


それは思ってもみない提案だった。私の願いを叶えてくれるなんてどんなに幸せだろうと感じたが、そんな考えは理性によって一瞬で吹き飛んだ。しかし、その時には気づけば私の頭の中から、警戒という2文字は消えていた。


「そうなんだ……でも私、周りから弱いって思われてるの。」


「それがどうしたの?」


ミズキは力強く続けた。


「うまく扱えないなら、そうする術を覚えればいい。弱いと思われることなんて、誰かが決めつけた一つのレッテルに過ぎない。そしてそれを剥がした姿なんて誰もわからない。もちろん私もね。」


その言葉に私は胸の奥が少しずつ暖かくなるのを感じた。ミズキの態度には疑念や偏見がなく、ただ純粋に私を見ているようだった。それが私にとって、1番嬉しいことだった。


しかし、ミズキが話し終えたあと、私はだんだんと冷静になっていった。


「その特別教室には言ってみたいけれど……やっぱりもうちょっと考えてみてもいいかな?急な話でまだ準備ができてなくて。」


私は気づけばそう言っていた。今私が何をしたって私をみているのはユキだけだし、ユキならきっと何を言っても許してくれる。だというのに一度この誰がどう聞いても素晴らしいと言えるこの提案をはぐらかしたのは単純に特別教室に行くことが怖かったからだと思う。


「そっか。無理に今答えを決める必要はないと思うよ。しっかりと考えて、考えを明確にしてから決めるのがいいよ。もし来たくなったら授業が終わったあとに進路相談室3においで。私はいつでも待ってるから。それじゃあごちそうさまでした。また学校で会おう。マオ。」


ミズキはそう言い残したのち、消えた。瞬き一つした間にミズキは消えていた。後に残ったのは夜の静寂とほんの一部だけが光っている月だけだった。




「……なんだったんだろう、今の。」


私はリビングの椅子に座ったまま唖然としていた。実はあれは夢だったのかもしれないと思ったが、目の前に残された皿と空いた窓がその考えを否定する。その後悩んだ末に残された肉じゃがを食べて、残った分は冷蔵庫に鍋ごと入れた。


「特別教室だって。考えてみてもいい?」


『…マオがそう言うならそうすればいいぞ。それにそこでならマオは変わることができると思うな。』


ありがとうお父さん。


これが私とミズキ先生との出会いであった。

気になる点がありましたら教えてください。修正されるかもです。


一部変更しました。些細な部分なので、物語に影響はないはずです。

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