ばーじょんあっぷ
「あっれ~?食堂どこ?」
宰相の静止を振り切り走りだしたのはいいが、前回来た時は食堂を使用していなかったため場所がわからないのだ。
「どこかに見回りの兵士は居ないものか…。」
鈴は適当に歩きまわり兵士あるいは食堂を探し始めた。
「だれかーいませんかー。だーれーかー。」
ぐぅぅ。
鈴の腹部から音がなる。
「おなか減った…もう無理。」
"ほら頑張って。“
『もう一歩も歩けない。』
"大丈夫行ける。“
『ならリンが行ってよ~。』
"私だってお腹減ってるし。“
『はぁ…。』
"だれか都合よく後ろから声でもかけてくれないかな…。“
その時鈴の肩に冷たい何かが置かれた。
「ひええええええ!?」
鈴のドレスは肩から上は生地が無いためそのひんやりとした感覚と突然の事に驚いてしまった。
「ど、どうしましたか?」
「あ。」
"フラグが立った。“
『やったじゃん!リンのフラグで兵士きたよ!』
内心ワイワイしている鈴達だが、兵士にとっては唖然としているようにしか見えない。
「もしもし?」
「あ。そうだ!食堂!食堂どこですか!」
「食堂ですか?それなら―。」
『リン!メモ!メモ帳!』
"おーけー!“
直ぐに人格同調を行うとメモ帳とペンを創造した。
「で!どこ!」
「あ、え?えー。この道をまっすぐ行って―。」
もちろん突然物が出てきたのには動揺していたが直ぐに持ち直した。
兵士が話す内容を直ぐ様メモしていく。
鈴は一言も聞き逃すまいとする。
「―でそこを右に曲がると食堂だ。いやー。俺も城の改築でやっと覚えたんだ―」
「ありがとうございます!では!」
兵士がしゃべり終わる前に鈴は挨拶をすると走りだした。
一歩も歩けないとは何だったのだろうか。
教わったとおりに道を行くと美味しそうな匂いが漂ってきた。
「食堂あったあああ!」
鈴の顔に満面の笑みが浮かぶ。
“よかったね。これで朝食食べれるよ。”
『さっそく入るのだー!』
鈴は食堂に入ると、そこには少数の兵士や使用人が朝食を取っていた。
おそらく今日の準備で食べれなかった人たちだろう。
鈴はカウンターに行くと朝食を頼んだ。
「朝食ね。話は聞いてるわよ~。若いのにすごいのね~。」
「いやぁ~アハハハ。」
体は正直なのかぐぅぅという音が鈴の腹部からなった。
「お腹空いてるのね。ちょっとまってて、すぐ用意するから!座ってて~。」
「はーい。」
鈴は空いている席に座ると朝食ができるのを楽しみにしていた。
『ごはん~ごっはん~ごはん~♪その後お昼寝~♪』
“私ながら食事の後すぐに寝れるのがすごいよ。”
『え?普通だよ?』
“……調べてきた。そういう人多いみたいね。特にぽっちゃり系貴族。”
『毎回思うんだけど、どこからそういう情報拾ってきてるの?』
“ああ、毎回後回しにしてたっけ。ほら私ってもともと体を持たない精神だから普通の人がたどり着けない普遍的無意識まで行けるんだよ。”
『ふへんてきむいしき?』
“そう。全ての人の心がつながっている海。そこから情報を拾い集めてるの。剣術から一般常識までね。”
『あれ?もしかして私よりすごい。』
“そうだね。”
『ぐぬぬ』
二人が脳内で話していると、目の前にお膳が置かれた。
「大急ぎで作りましたよ。どうぞ、お食べ下さい。」
「ありがとう!いただきまーす!」
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その頃披露宴を行っているステージでは魔導ライフルの試射が行われていた。
列にはイルミス達も並んでいた。
「銃を使ったことがないからね。魔導ライフルだけど撃ってみたいわ。」
「アイリスちゃん今日はずいぶんと好戦的だね。どうだい?俺とベッドの上で好戦―ぐふぅ。」
アイリスは他の人から見えないようにアラスの鳩尾に拳をねじ込んだ。
「アラス。あなた一言多いの。」
「ず、ずみまぜんでじだ。」
「そういっていつも反省しないのよね。」
「俺の女の子好きは誰にも止められないぜ。」
「すぐにこれよ…。誰よこいつパーティに入れたの。」
「…すまん。」
アームが申し訳なさそうに謝った。
「え?なんか俺はぶられる的な展開?うっそーん。」
「こんな奴でも貴重な戦力なんだ。察してくれ。」
「そうよねぇ。戦闘力だけは高いわね。」
「フゥハハハハ!戦闘力だけは高いんだぞ!…あれ?戦闘力だけ?」
「お、もうすぐ順番が回ってくるみたいだぞ。」
「そうみたいね。」
「あのあの、戦闘力だけってなんすか。」
「次はイルミスね。」
スルーされるアラス。しかし憎めないパーティのおだて役である。
イルミスの番になり、兵士から撃ち方を教わる。
鈴のを見ていたためある程度はわかっているイルミスは初段から鎧の中心に穴をあけた。
それを見ていた招待客は声を上げた。
そしてイルミスがただの招待客でないことを見抜いた同盟国の兵士長もいた。
「こんな感じか。以外に使えるもんだな。」
イルミスは一マガジン分撃ち尽くすと鎧の中心部は穴だらけになっていた。
兵士がイルミスから魔導ライフルを受け取ると新しいマガジンをセットし、次の人。
アームに手渡した。
「さて、撃ってみるか。」
アームは最初はパンパンと撃っていたが、途中からフルオートで鎧に撃ちこんだ。
「うおおおお…!」
弾は鎧の中心から少しずつズレた位置に着弾した。
「意外と反動がくるものがあるな。」
「それは反動制御を覚えるしかありません。」
「そうだな。あの連射力は脅威だ。」
アームは兵士と少し話すと魔導ライフルを渡した。
裏ではせっせとマガジンに弾丸を詰める兵士がいるのが見えた。
「(やっぱり大変そうだな。)」
次はアイリスだ。
係の兵士が体を押さえましょうかと言ってきたが、アイリスはそれを断り鈴がいつも撃っているように構えると模擬で兵士が行ったように三点バースト射撃を行う。
アイリスは内心これをきっかけに新しい魔法を思いつかないか考えていた。
「(反動が結構キツイわね。新しいアイデアも浮かばない。ダメね。それにしてもこんなのが配備されたら魔法使いの出番がなくなるじゃない。まぁ鈴がいるから私の出番も減ってるのだけどね。)」
そんな考えをしているうちに一マガジン分撃ち尽くしたアイリスは兵士に魔導ライフルを手渡すのであった。
「(何も思いつかなかったわ。)
「マガジンの準備をしているため少々お待ちください。」
消費の速度の方が早く二人係でマガジンに弾を込めているが間に合っていない。
その為待たせることになってしまったのだ。
その間に穴だらけの鎧も交換され新しい的の用意もできた。
一、二分ほどしてから再開の合図がなされた。
次はアラスの番だ。
「しゃー!俺は最初から全力だぜ!」
こういうのが弾込めの障害となる。
兵士の弾込めスピードが追い付かないのだ。
そんなことも知らずにフルオートで射撃するアラス。
「ほおお!楽しいぜ!」
ちなみにここで使用された弾丸と鎧は後ほど溶鉱炉で溶かされ銃弾に再利用される予定である。
一方鈴は…。
「ごちそうさまでした。イヤー食べた食べた。」
“御代わりし過ぎ。若干引いてたよ。”
『ふふふん。私が食べたいからいいのだ』
“コイツヨー。”
鈴は五回御代わりをしていた。
それもお膳に乗ったすべての料理を。
最初はよく食べる子だねぇっと思われていたが、五回ともなると食べ過ぎじゃないかと思われていたのであった。
そして鈴の次の欲が迫ってきた。
それは…。
「沢山食べたら眠くなってきたよ」
“もともと眠かったんでしょ。”
『そうだけどさー。沢山食べた後って眠くなるじゃん?』
“そりゃあ…わかるけどさ。”
『それじゃあ部屋に戻ろう!』
“ところで…部屋ってどこだろうね。”
『あ。』
鈴は食堂から出ると部屋を探しに城の中をさ迷い歩きだしたのであった。
運よく兵士を捕まえることができた鈴は客室がある場所を聞き出すと、そこへ向かったがどの部屋がアイリスたちが使っている部屋なのかわからないのである。
「こ…ここまで来てダメなの…?もうだめ…。」
“何言ってるのもう少しでしょ。”
『おやすみなさーい…。』
“ちょ!”
立ったままぐらつく鈴。
眠気の限界で立ったまま寝てしまった、そして倒れようとするところをリンが素早く出てきて地面との激突を回避する。
「…たった一日の徹夜でこんなことになるなんて情けない。あぁ。私の主人格…。」
リンはとりあえず部屋を探すことにした。
部屋の鍵は創造して作り出し、一部屋一部屋除いて確かめることにしたのだ。
他人から見れば不審人物確定だが、それしか方法がないのだ。
今さら会場に戻るわけにもいかない。
それ以前にまた迷子になる。
リンは部屋を開けては閉め開けては閉めを繰り返した。
そしてついにアイリスの杖が置いてある部屋を見つけ出した。
リンはその部屋に入ると、鍵を閉めベッドに横になった。
「私も寝よう。」
リンが寝に入るとまた白い空間に飛ばされた。
隣ではスズが寝ている。
そこに声がかかった。
「よ!元気にしてるか?」
「あっちの神か。今日は何のよう?」
「いや、それほどのことじゃないんだけどさ。自動翻訳の加護のバージョンアップだ。今の加護だと一部翻訳できていないのがあるだろう?」
「そうだね。魚とかがいい例。」
「そうなんだよ。ずいぶんと古い自動翻訳の加護だったから今回バージョンアップしようと思ってな。」
「そうなの。寝たいから早めによろしく。」
「おーけー。それじゃ加護掛けるぜ。」
そう言うと指を鳴らす。
それと同時にスズとリンの体が光、加護がバージョンアップされた。
自動翻訳の加護のため特に変わった様子もなかった。
「これでいいのね。」
「ああ。いいぜ。」
「それじゃ寝かせてもらうよ。」
「それじゃあな。楽しめ…ああ。そうだ一つ思い出した。」
「何?」
「スズにはリンから伝えてもらえるか?話っていうのは何なんだが、あっちが異世界観測を始めた。これは大変なことだ。二つに分けた世界が再び引き寄せられてしまう。もしその時が来たらそれを阻止してくれ。頼んだぞ。」
そう言うとあっちの神は消えていった。
リンは何を言っているのかさっぱりわからなかった。
「まぁ、起きたらスズにも伝えておくか。」
そう言うと白い空間は消滅し、リンは眠りに落ちた。
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宰相がアイリス達の部屋の扉をノックしていた。
しかし中からの応答はない。
「こまりましたな…。」
そこへ調度良く披露宴が終わりアイリス達が戻ってきた。
「宰相さんなにしているんですか?」
「アイリス様ですか。中に鈴様が居らっしゃるのですが何度扉をノックしても出てこないもので。」
「また寝てるのね。今鍵あけます。」
と、ここで飛鳥が疑問に思った。
「(鈴はどうやって鍵のかかっている部屋に入れたのじゃ?)」
アイリスは部屋の扉を開けると宰相を中へ招き入れた。
「ああ!鈴様!ドレスのまま寝るとは何事ですか!」
「大声だしても起きませんよ。」
「ではどうすれば?」
「魔法で水をかければ起きます。」
「それではドレスが濡れてしまいます。」
「大丈夫です。魔力で生成した水は直ぐに乾きますので。」
「それならいいのだが…。」
「では。<水よ。我が魔力を糧にここに集い水球となせ。ウォーターボール>」
鈴にバシャっと水がかかり、体がビクッと跳ねる。
「おはよう。鈴に変わるからもう一度お願い。」
そう言うとリンはスズと変わるともう一度横になった。
「めんどくさいわね。<水よ。我が魔力を糧にここに集い水球となせ。ウォーターボール>」
「びええええええ!?」
いつもより露出が多いドレスでは水の当たる面積が大きく、いつもより派手に飛び起きた。
「鈴様!ドレスで寝るとは何事ですか!」
「はへ?あー?あー。はー。ドレス。あー。そうですね~。」
「シワになっていたらどうするのですかな!」
「そこはアイロンをかけて…。」
「アイロン?何ですかそれは。」
「えっ。アイロンないの?」
電気がない時点でアイロンがあるわけがない。
「ふむ…シワにはなっていないようですな。」
「ならもう一眠り―」
鈴の言葉を遮るように宰相が話しだした。
「夜の晩餐会に向けての食べ方の練習があります。さぁ行きましょう!」
「嫌だ!もうそんなのは嫌だー誰かたーすーけーてー。」
鈴は宰相に引っ張られて連れてかれてしまったのだった。
「鈴は鈴で大変ね。」
「まったくじゃ。」




