エフを消して
『六花彩湯国』のどこか。
さらに禍々しさを増した七愛の殺気を全方位から喫した奏斗。巨大な水仙の姿をしたゴーレムの、時に大振りな、時に予測不能な攻撃を躱しつつも、ゴーレムの背後に佇む七愛へと意識を集中させる。
焦燥が、否応なく募り続ける。
不明確な部分が山積みというよりも、もう、七愛の存在が須らく不明確過ぎて、どうすればいいのか分からなかった。
ゴーレムへの対処方法は分かる。
ゴーレムの身体のどこかに刻まれている【flower(花)】の頭文字である【f】を消して、【lower(弱める)】にすれば、ゴーレムは機能停止に陥る。
(嫌な予感がする。とっっっても嫌な予感が。早くゴーレムの身体に刻まれている文字を探し出して、頭文字を消して。七愛さんを止めないと。でも、どうやって。兄ちゃんの『たんぽぽの手袋』は。うん。まあ。うん。心強いし。それで。それだけで十分。うん………うん? あれ? ゴーレムの身体のあちこちに本物の水仙が次から次へと生えてきている? 生えて来て。うにゃりうにゃうにゃ。無数の葉が。ってて!?)
カンコンカンコンカンコンカン。
吸収して。
そうゴーレムに命じた七愛の声が頭の中で小気味よい音を立てながら、勢いよく跳ね返り続ける。消える様子は今のところ、ない。
「ふふ。でも、残念。僕はこういう細かい攻撃を捌くのは得意なんだよね」
四方八方から襲いかかる無数の鋭く長い緑色の葉を、回復不可能なまでに勇者の剣で細かく斬り刻んでいく。
いついつまでこの攻撃が続こうが、へこたれない諦めない地道に正確にこつこつ斬り刻み続ける。
(って。これで全部解決するなら、一日中でも斬り刻んでいくんだけど。はあ。早くゴーレムの文字を。って。今度はゴーレムから掌に乗る大きさのエルフが出て来たんだけど。次から次へと。しかも。尖った耳はこれでもかって尖りに尖ってるし、顔が真っ赤で、眉毛は吊り上がって、肩は頬にくっつくまで上がって、まるで怒っているみたいだし)
「もう! 何なのよあんた! さっさと水仙の葉に捕まりなさいよね!?」
訂正。
怒っているみたい。
ではなく。
エルフは怒っていた。
(2025.1.14)




