修行
誰にも見送られず、正式なものは王都にのみ存在する城、水仙城に背を向けて歩き出す事、三十分後。
開かれた野原一面に白い水仙が咲き匂う中、奏斗と芽衣が横に並んで前を、聖月と箕柳が横に並んで後ろを歩いている時だった。
芽衣が急に駆け出したのである。
魔王か、もしくは、魔王の配下をその視力のよい目で以て見つけたのか。
否、そうだとしたならば、魔王を見つけただの、魔王の配下をみつけただの、一言何かあるはずだ。
けれどそれはなかった。
無言で駆け走ったのだ。
つまり、
急に修行したくなったわけだ。
奏斗、聖月、箕柳はいつもの事だと、生温かい眼差しをどんどんどんどん小さくなる芽衣を向けていた。
「一度倒せた相手とは言え、星の血とも言える温泉を吸血したのだ。俺たちが闘った時の乱斗とは別物。さらに星の血を吸って、さらなる力をつける前に早く見つけて倒した方がいい。道草を食う時間はないぞ」
箕柳は言った。
「まあでも、だったら余計に修行は必要だよね。箕柳。僕と闘いながら旅をする?」
奏斗は言った。
「乱斗の情報が全くないのも痛手ですよね。以前は、第六の首都の『彼岸花』の最西端に居ると知っていましたから、そこに向かえばよかったわけですが、今はどこに向かえばいいのか分かりません。ああもう本当に面倒くさい」
聖月は言った。
「とりあえず、芽衣が精霊に乱斗を探してもらっているし、王様も忍びに情報収集を命じているみたいだし。僕たちができる事は、あとは地道に情報収集するしかないよね」
「魔王が狙う星の血、つまり、温泉が分かれば、そこで待ち受けていればいいわけだが。よもや、乱斗はこの国におよそ三万もの温泉すべてを吸い尽くす気ではあるまいか?」
「ええっ!? それは困るよ!! 僕には乱斗と一緒に温泉に入るって言う使命があるんだから!!」
「乱斗が奏斗さんと一緒に入るわけないじゃないですか」
「分かってる。でも、諦めないよ。その後で僕は乱斗と一緒に秘湯屋になるんだ。勇者として、魔王の乱斗の監視をしつつ、乱斗と一緒に国中を歩き回って、秘湯に浸かって、秘湯の管理をして、秘湯の困り事を解決するんだ」
「ますます困難な道になりましたね」
「まあ、夢を語るのはいい事だ。叶うか叶わないかは別として」
「もう。聖月も箕柳ももっと僕を応援してよ」
「「………キャアガンバッテ」」
「棒読みだし、空っぽだし。いいよもう」
「おーい!!!」
超速急で戻って来た芽衣は一人ではなく。
「お願いします。魔法使いの七愛を見つけてください」
武闘家の雪花を名乗る女性と一緒であった。
(2025.1.8)




