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無職は今日も今日とて迷宮に潜る【3巻下巻12/25出ます!】【1巻重版決定!】  作者: ハマ
8.ネオユートピア

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ダンジョン攻略32

活動報告に3下巻のWEB用SSを記載してます。

内容は、3下巻のif物語となっております。

他に四種類のSSを書いております。特典情報はSS活動報告の下の方に載せております。

よろしくお願いします!

 どこまでも高い、終わりが見えないほど高く聳え立つ塔。

 塔は凄まじく巨大で、まるで宇宙の果てまで伸びているかのようだった。


 そんな塔だが、これまた巨大な蔦が巻き付いていた。

 この蔦から感じる魔力は、イルミンスールの物だ。

 それも、かなり昔に巻き付いているというのに、まるで枯れている様子が無い。


 試しに切ってみると、中から瑞々しい緑が顔をのぞかせた。その傷も、あっという間に塞がってしまい、まるで血管のように脈動した。

 この植物は未だに生きており、今もこの塔を飲み込もうと足掻いているのだろう。


 しかし何だろう、この塔を見ていると危ない物を見ているような気持ちになる。なんというか卑猥な……、


『ちょっと、この子達傷付けないでもらえる?』


「ごめんごめん、塔が縛られて可哀想に見えたんだよ」


 そう、まるでSMプレイかのように。


 イルミンスールから注意されるが、この感想は変えられない。一度見えてしまったら、もうそれにしか見えないのだから。


 とまあ、そんなことはどうでもよくて、入り口である。


 残念ながら、この塔に入り口は無い。

 何故なら塔に見えていたこれは、ただのエレベーターだからだ。


 上階から地下に進むエレベーター。

 ここに侵入するには、壁を砕くしかなかった。


 結晶化した槍を生み出す。

 貫くイメージをして、放つ。


 槍は塔に直撃すると大穴を開けて砕け散った。


 穴を開けたのは良いのだが、塔は穴を急速に塞いで行く。

 こりゃいかんとフウマに跨り、穴の中に飛び込む。


 塔の中は真っ暗で何も無かった。

 エレベーターなのだから当然だが地面も無く、ただ真っ暗な世界があるだけ。


「……見られているな」


 真下から視線を感じる。

 俺が知覚する範囲に見ている奴はいないが、こちらを認識して強く意識しているのは間違いない。


 イルミンスールの杖を手にすると、光り輝き暗闇を照らしてくれる。

 照らし出された塔の内部は、やはりというか何も無い空間が広がっていた。ただ代わりに、壁には多くの絵が描かれていた。

 写真や映像ではなく、ただの絵。

 それは、まるで子供が描いたような物から、プロの絵描きが描いたような物までと、幅広く並べられていた。

 その内容も違っており、目が無数にある人物から、地球には存在しないであろう場所の風景画。


 そんな絵が、上にも下にも無限に続いている。


「どうしてだろうな……心が惹かれる……」


 この絵を見て回りたいという欲求に駆られる。

 余りにも膨大な量なので、そんなことは不可能なのだけれど、もしも時間があったらと考えてしまう。


 本当にただの絵なのだろうかと、壁の風景画に触れてみる。


「やっちまった……」


 失敗した。

 無防備に触れたばかりに、この風景の記憶が流れ込んで来る。

 ここにある絵は、ダンジョンに飲み込まれる前まであった世界の記録だ。

 絵の一つ一つに、それぞれの長い長い記録が残されており、触れることで閲覧出来るようになっているのだろう。


 俺が触れた絵は、山の風景。

 その成り立ちから、ダンジョンに飲み込まれるまでの記録が流れ込んで来たのだ。


 もしも人のままだったら、間違いなく頭がおかしくなっていた。

 ここに入るなら、大怪獣共の領域にまで到達しないといけなかったのだろう。


 俺は絵から離れようと、フウマの腹を蹴る。

 だけどフウマは動かない。


「……フウマ? って⁉︎ 触れちゃってんじゃん⁉︎」


 フウマの鼻先が絵に触れており、呆然としていた。

 頭をバシバシ叩いて正気に戻すと、「ヒヒーン⁉︎」(痛いじゃろうがい!)とブチ切れていた。


 まったく、危ない危ない。

 ここの絵は危険だと改めて認識して、俺達は落下を開始、ひたすら下へ下へと降りて行く。


 落下する間も、多くの絵画を目にする。

 ダンジョンは、どれだけの世界を飲み込んで来たのだろう。多くの命を飲み込み、数え切れない悲しみを生み出して来た。元の目的が違っていたとしても、滅ぼしてしまっては意味がない。


「……止めないとな」


「ブル」


『そうね……』


 ト太郎は眠っているのか、返事は無い……ああ、出していないだけだった。

 一人だけ仲間外れみたいになってしまって、悪いことをした。


「……ト太郎?」


 収納空間から取り出した長剣から、ト太郎の意識を感じない。

 一体どうしたんだろうかと、二、三度振ってみるとイルミンスールから待てが掛かった。


『辞めなさい。聖龍は、転生の準備に入っているみたい。元々限界だったのにここまで頑張ったんだもの、ゆっくりさせて上げて』


 イルミンスールの言葉に、そっかと頷く。


『きっと、あなたが力を手にしたから、安心したんでしょうね』


「……だったら、成った甲斐はあったな」


 少しでも誰かの為になるのなら、こうなって良かったと思える。ましてや、それが仲の良い奴なら尚更だ。


「おやすみ、ト太郎」


 収納空間にト太郎を入れて、大切に保管する。

 ここから出たら、ちゃんと出してやらないとな。忘れてたら、一生このままの状態だから。


「ブル」


「ようやくだな」


 ずっと落下し続けて、やっと底が見えて来た。

 底は明るくなっており、途轍もなく広い白い空間だけがあった。


 白い空間には見上げるほど大きな扉が設置されており、その扉の前には以前会った人物が座っていた。


「よう、久しぶり」


 俺を見て、気軽に声を掛けて来る男がいる。

 この男に以前会った時は、右腕が機械になっていたはずだが、まるで普通の人間のような姿をしていた。


「えーと……あんたは確か、二号の敵だったよな?」


「二号? あー……そうだったな、自己紹介してなかった。俺は天津勘兵衛。こう見えても、元は人間だったんだ。次はお前さんの番だ」


 そう促して来る勘兵衛。

 こいつは、俺の心臓を奪った盗人だ。

 何で、そんな奴に自己紹介せにゃならんのだ。

 殺すぞボケ!

 なんて悪態を吐きつつ、様子を伺う。

 今目の前の男に、前のような凶暴さを感じない。魔人ではあるのだろうが、何だか違うような気もする。

 どちらかというと、普通の人。

 ナナシを穏やかにしたような普通の人だ。


 ……まあ、自己紹介くらいいいか。


「田中ハルト。間抜けにも、あんたに心臓を奪われたアホだよ」


「あー、あの時は悪かったな。自分で考えていたつもりだったが、こいつの言いなりになってしまってたんだよ」


 勘兵衛は壊れた機械の腕を掲げながら、申し訳なさそうな顔をする。

 だが、次の瞬間には、真剣な表情に変わった。


「んで相談なんだが、帰ってくれないか?」


「……は?」


「俺を殺してもいい、死ぬほど苦しめてもいい、だからここは見逃してくれ。頼む」


 膝をつき、首を垂れる勘兵衛。

 いわゆる土下座という奴だ。

 そこまでして懇願する理由は何だろうか?

 ここにある物が何なのか、理解しての行動なのか?


「おい、ふざけるなよ。ここに何があるのか分かってんのか?」


「分かってる。それでも頼む、俺を正気に戻してくれたんだ。こいつを殺さないでやってくれ‼︎」


 必死の願いなのだろう。

 それでも、俺が引くことは無い。


「……そこをどけ、今更引く気はない」


「どうしてもか?」


「ああ」


「そうか……なら、仕方ないか……」


 諦めたのか、勘兵衛はゆっくりと立ち上がり、いつの間にか持っていた刀を恐ろしい速度で振り抜いた。


「……やっぱ駄目か」


 勘兵衛の神速の一刀は鎧に触れると同時に砕け、俺はゆっくりとした動作で殴り付ける。

 これでも、ゆっくりと動いたつもりだ。

 そのゆっくりとした拳は刀を握った右腕を粉砕し、勘兵衛の体内を滅茶苦茶にし、肉体がミンチになりそうな勢いで扉の近くに叩き付けた。


 生きているのが不思議な状態になった勘兵衛は、血反吐を垂らしながらも起き上がろうとする。


「おい、やめとけ。俺には、あんたを殺す理由はあるんだぞ」


 これ以上、向かって来るのなら容赦しない。

 ナナシの父親で、二号の恩人らしいが、俺には関係無い。

 何故なら、それ以上の怒りをこいつには抱いているからだ。

 ヒナタが死んだのは俺が油断したせい。それが全てだ。でもな、切っ掛けを作った奴には怒りが湧くんだよ!

 腕に操られていたとか、クソどうでもいい。そんな下らない言い訳を聞く気は無い。


「無理……だな。俺、……が、最後の……砦、らしい、からな」


 勘兵衛の肉体が変化して行く。

 ウロボロスに似たモンスターの肉体が侵食して行き、全身を覆う。一度肉体が肥大化すると、直ぐに元の大きさに戻ってしまった。


 凝縮された肉体。

 人型ではあるが、その力はウロボロスを上回る。だが、


「変身するならさっさとしろ」


 もう一発殴り飛ばして壁に叩き付ける。

 何、敵の前で変身してんだよ。こんなお約束を俺にやらせたこいつが悪い。


 勘兵衛は折れ曲がった首を戻しながら立ち上がる。

 今のでかなりのダメージにはなっただろうが、扉の奥から力が送られて、一瞬で回復してしまう。


 凝縮されたウロボロスの肉体を持った勘兵衛。

 新たなダンジョンの守護者になり、最後の砦として俺の前に立ち塞がる。


「ははっ……容赦ないな。じゃあ、次はこっちの番な」


 二本の刀が勘兵衛の両手に握られる。


「フウマ、離れてろ」


「ブル」


 フウマが離れると同時に、大剣と刀が衝突する。

 衝突した衝撃で辺りに亀裂が入るが、直ぐに修復される。

 これなら、耐えられるか?


「余裕だな」


「あんたじゃ、俺には勝てないからな」


「言ってくれるな!」


 勘兵衛は力を込めると同時に、姿勢を低くし刀にある力を宿す。


 それはヤバい。


「天断ち!」


 白銀の光が放たれ、俺を襲う。

 ギリギリで回避すると、天断ちはフウマを横切って上空へ消えて行った。


 勘兵衛の攻撃はそれだけに留まらない。

 二本の刀に天断ちを宿し、巧みな動きで攻めて来る。


 そうだったな、俺のアマダチはこいつに奪われてたんだった。


 アマダチは、存在の根幹を打ち砕く力。

 ウロボロスやアクーパーラのような、巨大な存在にも通用する神殺しの力。

 どれだけ強い相手でも、アマダチは通用する。

 もしも、ウロボロスが大地から力を補充していなければ、この姿に変化しなくても俺が勝利していた。

 アマダチには、それだけの力がある。


 勘兵衛は舐めていい相手から、油断ならない敵になった。

18時投稿。

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― 新着の感想 ―
ダンジョンが救済機構のような存在という認識はあってたぽいなー 心臓とられてたの懐かしい
あまりに心臓奪われた話が出ないからその話自体忘れてた(笑) あの心臓奪った相手って天津勘兵衛だったのね。ここまで話が進むとだから何だというレベルだけど
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