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無職は今日も今日とて迷宮に潜る【3巻下巻12/25出ます!】【1巻重版決定!】  作者: ハマ
8.ネオユートピア

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ダンジョン攻略30

12月25日3下巻発売されます!

 分かっていたことだ。

 どれだけ頑張っても、どれだけ足掻いても、どんなに抗っても勝てないと。


 存在する次元が違う。

 人が神に勝てるわけがないのだ。


 勝つには、同じ領域に立たなければならない。


 俺はまだ、人でありたいと願っていた。

 人として生きて、人として寿命を迎えて看取られる最後を送りたい。

 これが、どんなに我儘な願いだったとしても、望むくらい許されるだろう。


 俺はただ、普通の人生を歩みたかった。



---



「はあ! はあ! はあ! フウマ、無事か?」


「……ヒヒーン」


 フウマが起き上がりながら、自身に治癒魔法を使っている。

 黒炎に炙られ、破壊の光に曝され、巨大な質量であるウロボロスに弾き飛ばされる。


 これで、まだ動きが遅くなっていれば対処出来るのだが、素早さは最初から変化は無い。


「こんなん反則じゃねーか……」


 顔を上げれば、まるで空そのものがウロボロスになったかのように、視界が埋め尽くされる。


「こりゃ、ト太郎も負けるわな」


 アーカイブで調べたので、戦いの結末は知っている。

 聖龍であるト太郎が全身全霊で挑んでも勝てなかった。いくら弱体化していたとしても、その結末は変わらなかっただろう。


 収納空間に不屈の大剣を納める。

 代わりに、ト太郎が宿る長剣を取り出した。


 せめて、ウロボロスの弱点なりなんなり見付けてから使いたかった。


 これが失敗すれば、もう後は無い。


「行くぞフウマ、これで勝つぞ」


「ヒヒーン‼︎」


 長剣にアマダチを宿す。

 強化された不屈の大剣でも、残念ながらアマダチは宿せない。力に耐えられず、崩壊してしまうからだ。


 だが、ト太郎が宿る長剣は違う。

 アマダチを宿すだけでなく、その威力を引き上げてくれるのだ。


 ウロボロスが動き出すのと同時に、俺達も動く。

 大口を開けるウロボロスは、牽制のつもりか黒炎を操り動きを妨害しようとする。

 確かに、これまでなら回避しなければならなかった。


 だが、今回は違う。


「【森羅万象】」


 知覚する範囲が増大し、俺の支配下に入る。

 迫る黒炎に向かって、魔力の波を立たせて全てを消し去る。


 まさかの現象に驚いたのか、ウロボロスは不完全な状態で破壊の光を放った。


「アマダチ」


 白銀の光が破壊の光を斬り裂き、勢いを落とすことなく突き進み、ウロボロスの頭部を激しく切り裂いた。


 ここに来て、初めて悲鳴を上げるウロボロス。

 GAAAーーーッ⁉︎⁉︎ という、怪獣のような悲鳴で、聞いてて耳が痛くなる。

 悲鳴を無視して、俺はフウマの背から飛び降りると、ウロボロスの背に降り立つ。


 長剣をウロボロスの背に突き刺し、ありったけの力を込める。

 アマダチで斬り落とせば、ウロボロスでも武器には出来ない。


「おおおーーーっ!!!!!!」


 半ばから断ち切り、ウロボロスの肉体を落とす。

 確かな感触。ウロボロスの悲鳴が、大きなダメージを与えたのだと確信させてくれる。

 更に頭部に向かって走り抜けながら、ウロボロスの胴体を切り刻んで行く。


 当然だが、ウロボロスも抵抗する。

 しかしそれも、森羅万象で空間に縛り付け、その動きを封じ込め、決着を付けるべく加速する。


 このまま最後まで行けるんじゃないかと、淡い期待を抱いてしまう。

 この程度で、封じ込められる相手ではないというのに。

 これで死ぬはずがないというのに……。


 魂をも消滅させる刃に悲鳴を上げたウロボロスは、全身を爆発させて俺を振り落とそうとする。

 爆発を避け、空中を蹴り、高速で移動してウロボロスを切り刻みながら駆け抜ける。

 最後に頭部まで到着して、長剣を振りかぶり……何も出来なくなってしまった。


 巨大な肉体は残っているのに、ウロボロスが消えてしまっていた。

 ここにあるのは、魔力が宿った抜け殻だ。


 落下する頭部。


 背後を見ると、そこには先ほどよりも巨大になったウロボロスがいた。




 ウロボロスは、己の肉体を大きくも小さくも出来る。

 その幅に限界は無く、ミジンコより小さくもなれれば、惑星よりも大きくなれるかも知れない。

 知れないというのは、そこまでの姿を見ていないからだ。

 一応、予備動作で一瞬動きが止まるのだが、それだけでしかない。


 膨大な魔力はまだまだ顕在であり、尽きることは無い。

 どうやら、大地から魔力を吸収しているようで、この土地が枯れない限りは幾らでも回復可能なようだ。

 しかも、条件が悪いことにここはダンジョンの中心部に近く、魔力が無限に湧いて来る場所である。


 そりゃ消耗させられんわ。


 イルミンスールの杖を手に、魔法を練り上げる。


 地属性魔法を使い、結晶化した槍を作り出す。

 風属性魔法を使い、強烈な竜巻を宿す。

 光属性魔法を使い、槍の内部に強力な爆弾を仕込む。

 スキル血液操作を使い、俺の血液で威力を倍増させる。


 十の魔法陣を展開する。

 ひたすらに威力が増大する魔法陣を並べ、突進して来るウロボロスに向かって放つ!


 槍は真っ直ぐに突き進み、ウロボロスと衝突。

 ウロボロスの肉を突き破り体内に侵入。

 槍は体内で弾けて、内包された魔法が解放した。

 その威力は凄まじく、広範囲でズタズタにしたという手応えを覚える。


 だが、それだけだった。


 ウロボロスが口から血を吐き出すが、突進する速度が多少減退する程度だった。


「ちっ、反則じゃねーか」


 分かっていた。

 アマダチ以外では、痛みは与えても明確なダメージにはならない。

 それは、森羅万象を使っていても同じこと。


 イルミンスールから意志が届く。


 逃げろと、このままでは殺されると告げて来る。


「ははっ、そうだな、このままじゃ殺されるな……」


 もう直ぐ、森羅万象も使えなくなる。

 俺の魔力が尽きてしまう。


 イルミンスールの杖から長剣に握り変え、アマダチを宿す。


 最後に一度だけ足掻こう。

 これが、人である俺の最後の一太刀になる。


「……フウマ、準備しとけよ」


「ブルッ!」


 なんでテンション高ーんだよ。


 緊張感の無さに、フウマらしいなと笑いが込み上げる。

 これで笑えるってのは、俺も緊張感が足りないんだろうな。


 ウロボロスは大口を開けて迫って来ており、今度は直接飲み込むつもりのようだ。

 俺なんかを飲み込んだら、食当たりを起こしそうなものだが、それでも食べたいようだ。


 だったら食わせてやろう、とっておきのアマダチを。


「アマダチ‼︎」


 白銀の光はウロボロスの口に入り、頭部を破壊する。

 それだけに留まらず、アマダチは肉体も破壊していく。


 これでも死なないのは分かっている。

 頭部を失っても、別の肉体で頭部を再生させるのだ。どうやっても倒す手段が無い。今のアマダチは、ウロボロスに新たな武器を与えないためだけの物になってしまった。


 ウロボロスという神を殺しきるのに、圧倒的に威力が足りていないのだ。


 それでも、再生する為の時間は稼げる。


 そう思っていた。


「ちっ‼︎」


 先程のアマダチでも勢いを止められない。

 失った頭部と肉体の中から、半分の大きさになった新たな頭部が現れたのだ。


 油断していた。

 フウマは動き出そうとしているが、間に合わない。

 森羅万象で動きを阻害しても、もう止められない。


 くそ!


 大口が迫るのを見ながら、ごめんと心の中で謝罪する。


 恐らく、こいつにも自我が芽生える可能性はあった。

 それなのに、生き延びる為に犠牲にする決断をしてしまった。


 収納空間から【自動人形生成】により作り出した戦艦を取り出した。


 戦艦は外に出た瞬間から砲撃を開始する。

 だけど、それらは通用しない。

 口内に着弾しても、わずかなダメージにもならない。

 ダンジョン81階では敵無しの戦艦でも、ウロボロスを相手には出来ない。


 ウロボロスの大口が戦艦を襲うのと同時に、フウマに掴まりその場を脱出する。


 無数の牙が戦艦に突き刺さり、あっという間に粉砕してしまう。


 砕かれた音が、まるで悲鳴のように聞こえて、己の愚かさを痛感させられる。


 俺は、どれだけ力を手に入れても、馬鹿な本質は変わらない。

 愚かで、調子に乗りやすく、肝心な所でやらかすんだ。


 そんな俺は、ひたすらに踏ん張り続けるしかない。


 何があろうと足掻いて足掻いて、どんなになっても、命のある限り、どんな無様な姿になっても足掻き続けるんだ!


「さあ、やるか!」


「ヒヒーン‼︎」


 俺は、人間を辞めた。

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― 新着の感想 ―
真の……デブに
最初の『俺はただ、普通の人生を歩みたかった』で号泣してしまった。
日向やイグドラシルが本当に止めたかったのはコレなのかな ハルトが死ぬことじゃなくて人間を辞めてしまう事を恐れていたのか
感想一覧
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