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無職は今日も今日とて迷宮に潜る【4巻8/20出版決定!】【1巻重版決定!】  作者: ハマ
8.ネオユートピア

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374/402

ダンジョン攻略29

12月25日3下巻発売されます!

 美しい都ユグドラシル。

 もしかしたら、最後になるかも知れない景色。

 その美しい景色をこの目に刻み付けて、俺達は飛び立った。


 都ユグドラシルを発って直ぐに夜の世界が訪れる。今回の夜の世界がどれだけの長さなのか不明だが、少なくとも次の昼の世界が訪れるまで、俺達は飛び続けた。


 フウマの速度が上がっていても、これだけの時間が必要だった。それだけこの世界が広いというのもあるが、これまでどれだけの世界を取り込んだのだろうかと考えると恐ろしくなる。


 ……見えて来た。


 視線の先には、どこまでも聳え立つ塔。

 薄らとしか見えていないが、それだけ巨大な建造物があるということだ。


 あそこは、ある存在が守っている。

 だから、二号は行くのを断念した。


 真下から強大な魔力が現れる。


 いきなりか⁉︎


 まるで火山が噴火するかのように、真下から黒炎が迫る。


 ちっ‼︎

 収納空間から不屈の大剣を取り出し、リミットブレイク・バーストを発動。魔力を込めて、黒炎に向かって剣閃を放つ。


 剣閃は黒炎を切り裂き突き進むが、やがて勢いは落ちて行き黒炎に飲み込まれてしまう。

 だが、役割は果たした。

 俺達が、黒炎の範囲から逃れるだけの時間を稼いでくれた。それで十分だ。


 黒炎の範囲を脱すると、大地から巨大な存在が姿を現した。


 かつて見たアクーパーラを喰らう姿は、俺がどれだけ矮小な存在なのかを思い知らされた。その存在感だけで、死を連想するほどだった。

 聖龍であったト太郎を瀕死の状態まで追い詰め、イルミンスールを殺した化け物。

 俺が今生きているのは、こいつの気まぐれに過ぎない。


 ウロボロス。


 世界を支える巨大な蛇の神様が、俺の敵として目の前にいる。


 ははは……。


 恐ろしい。

 その身から溢れる魔力量は、俺よりも圧倒的に多い。

 だが、質だけでいえば、俺も負けていない。

 イルミンスールの杖を収納空間に納めると、フウマの上で不屈の大剣を振り、切先をウロボロスに向ける。


 なあ、あの時、あんたは俺を認識していたか?


 その返答は、巨体を活かした突進だった。


 ビルよりも巨大な体躯は、全身を爆発させて一瞬で加速。フウマに匹敵する速度で迫って来る。

 それに反応したフウマは、全力でウロボロスを避ける為に、俺を背中から吹き飛ばした。


 は?


 おおおおーーーっ⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎


 咄嗟だった。

 空中で体を捻り、全力で不屈の大剣を振り抜いた。


 不屈の大剣の刃は、ウロボロスの肉体を裂き、飛び出した剣閃は真っ直ぐに巨大な肉を切り裂いて行く。

 それは確かなダメージとなり、ウロボロスから溢れ出した血は大爆発を巻き起こし、俺を吹き飛ばした。


 くそっ! あれじゃ、ダメージを与えても追撃は難しい。

 つーか、あのクソフウマ! 俺を囮にしやがった!


 逃げたフウマを見つけると、あいつは更に上空に上がり魔力を溜めていた。


 そして、


「ヒヒーン!!!!」


 これまでにないほど嗎声、魔力を爆発させる。

 フウマはリミットブレイクを使い、サラブレッド型に変身すると、風を操り爆発するウロボロス目掛けて落下した。


 フウマの前には、視認出来るほど強力な風の刃。

 まるでギロチンにも見えるそれは、正確にウロボロスを狙っており、勢いを落とさずに通過した。


 そう、ウロボロスを通過した。


 巨大なウロボロスの頭部が落ちる。

 それは余りにも現実味が無く、呆然と見つめることしか出来ない光景だった。


 フウマの一撃で、ウロボロスを倒した。


 一瞬、そんな奇跡のような言葉が浮かんだが、世の中そう甘くはないようだ。


 やっぱそうだよな……。


 ウロボロスの肉体が一回り大きくなり、切り落とされた部分から新たな頭部が現れる。更に、切り落とされた部位は黒炎を纏い空中に浮かんだ。


 ウロボロスはダメージを負う度に、新たな武器を手に入れ、肉体を強化するようだ。


 最悪な敵だな……くそ。


 悪態を吐きながらも、俺は不屈の大剣を握り締めた。





 幾つもの剣閃を飛ばし、黒炎の塊を切り裂いた。

 しかし、黒炎は分裂して、まるで意思があるように俺を追い掛けて来る。


 フウマ‼︎


 大声で呼ぶと、フウマは一瞬で俺を回収し黒炎から逃走を開始する。

 あらゆる軌道を描きながら、迫って来る黒炎。


 どうにかして消し去りたいが、それが出来ない。

 切っても分裂するだけで意味は無く、ウロボロスを直接狙っても攻撃手段を与えるだけ。魔力の波なんてまるで通用しない。

 何とも厄介な敵だ。


 真下にいるウロボロスの口に、膨大な量の魔力が溜まって行く。


 なんかヤバい⁉︎


 嫌な予感がして急いで距離を取る。


 ウロボロスの口から放たれたのは、黒炎ではない黒い球体の何か。


混沌天輪(こんとんのてんりん)


 本能が告げる。

 あれに触れたら終わる。


 黒い球体の大きさは、ウロボロスの頭部と同じくらいある。それは凄まじい速度で動き出し、俺達を追って来る。


 逃げろフウマ‼︎


 早く! 早く! 早くっ‼︎


 黒い球体は黒炎を飲み込むと一段と大きくなり、更に進めば進むほど大きくなって行く。そして、あっという間に十倍にまで膨らんでいた。

 速度も増して来ており、フウマの脚でも逃げ切るのは難しい。


 くそ!


 不屈の大剣を収納空間に入れると、全てを断ち斬る大剣を右手に生み出す。


「アマダチ!」


 白銀の刃が黒い球体に衝突すると、しばし拮抗すると球体を断ち切り、アマダチも霧散してしまった。


 ああ、これはまずいな……。


 アマダチで黒い球体を対処可能なのは分かった。

 だが、ウロボロスは魔力の消耗がほとんどしていないのに比べて、アマダチの使用で俺はかなりの量を消耗してしまった。

 いくら魔力循環があるからといって、永遠には戦えない。


 ならば、短期決戦!


 フウマの腹を蹴り、ウロボロスに向かって加速する。


 本日二度目のアマダチを作り出し、膨大な殺意を込める。


 それを危険と察知したのか、ウロボロスは姿を消してしまった。


 は?


 意味が分からなかった。

 視界を覆うほどの巨体が、突然消えてしまったのだ。

 俺もフウマも、一瞬動きを止めてしまった。


 ウロボロスの居場所を視線を巡らせて探る。

 魔力の痕跡があちらこちらにあり、どこに行ったのか追えない。空間把握に見切り、己の感覚を研ぎ澄ませるが見つけられない!


 どこに行った⁉︎

 見回しても見つからない以上、奴がいるのは地中。

 しかも、俺が感知出来ないほど地下深く。


 地上に降りて、トレース、地属性魔法を使いウロボロスの痕跡を探る。そして、見付けた。


 ただし、それは地中ではなく上空。


 口に破壊の光を灯して、俺の真上から見下ろしていた。


「アマダチ‼︎」


 咄嗟に放ったアマダチは、破壊の光と衝突する。

 拮抗する二つの力は辺りに破壊を撒き散らし、地面を醜く壊して行く。地面が陥没し、足場が揺らぐが地属性魔法で固定して踏ん張る。このままだと、魔力が尽きて押し切られる。


 きっと、俺一人だったらやられていた。


 本当にフウマがいてくれて助かった。


 フウマはウロボロスに向かって魔法を使う。大気が揺れ動き、ウロボロスを激しく殴打する。

 エアハンマーと呼ぶには、余りにも威力のある衝撃。

 それを顎下から喰らったウロボロスは、口を閉じてしまい破壊の光が頭部を消滅させる。


 フウマの攻撃はまだ続く。


「ヒヒーン‼︎」


 勢いよく飛び出したフウマは、ウロボロスの背に乗ると魔力を込めた蹄で強烈な一撃を見舞う。

 ドッ‼︎ と凄まじい衝撃が広がり、その威力に紫電が発生してかっこいいエフェクトを演出していた。

 それが気持ちよくなったのか、はたまたテンションが上がっただけなのか、連続してウロボロスに打ち込んで行く。


 おい、おい止めろ‼︎


 一撃一撃はダメージとして届いているが、その度にウロボロスの血液な一部が落ちて爆発を巻き起こしていた。しかも、落ちた肉体の一部は黒炎を発生させており、奴の武器に変化していた。


 ウロボロスの肉体は再生し、更に巨大になってしまう。


 ……こいつ、どこまで大きくなるんだよ。

 短期決戦じゃないと、俺は……。


 どこまでも大きくなるウロボロスを見て、この戦いは長くなりそうだとうんざりした。



---



 大地は捲れ上がり、巻き込まれた多くのモンスターが消滅する。

 常に大気は震えており、大爆発により空間を破裂させる。

 衝撃だけで大地は破壊され、その範囲は拡大して行く。


 速度はこちらが上、手数もこちらが上。

 でも、魔力も耐久力も攻撃力も、ウロボロスに負けている。


 がっ⁉︎


 ウロボロスの尾に轢かれて、フウマ諸共弾き飛ばされる。

 避けようにも、巨大過ぎて間に合わない。


 風を操り衝撃を和らげるが、地面に激突して何度もバウンドしてしまう。


 くそ!


 戦って分かったのは、このままでは負けるということ。


 奥の手である森羅万象を使っても、一時は圧倒しても解けた時点で圧倒されてしまう。ウロボロスは大きくなり続けているというのに、魔力はまったく減ったように見えない。


 傷は直ぐに再生し、更に強力になる。

 膨大な魔力があり、戦力が衰えることはない。


 だが、不死身というわけでもない。


「アマダチ!!」


 大きくなった分、攻撃も当てやすくなる。

 姿が消えるのも、予備動作がありタイミングも掴めるようになって来た。


 アマダチはウロボロスを斬り裂き、その存在を確実に削り取る。斬られた場所は再生せず、血が溢れ出て爆発を撒き散らす。

 無数の目が動き、怒りを宿した目で俺を睨み付ける。


 怒ったウロボロスに向かって、中指を立て挑発する。


 次は殺してやる。


 そう告げると、ウロボロスの動きは苛烈を極めて行った。


 少しでも魔力を使わせるんだ。

 こいつの底が見えなければ、弱点を見付けられなければ、今の俺に勝ち目は無い。

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