表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/25

第4章 6、化け物の恋

 人と違うことがバレて迫害にあったのも、一度や二度ではない。

 人を殺したことだってある。

 野盗に襲われたときなんて、少し脅してみせたら「化け物」だって罵られた。


 化け物だから、アニカは幸せになれない。

 ただ生きていくだけが、今のアニカにできることなのだ。


「なら、私だって化け物ですよ」

「ヴァルターは違う」

「なぜです」

「だって、優しいもの。優しくできるってことは、人であることを忘れてないってことだわ。ヴァルターは人間でもある。だから、あたしとは違うの」

「優しいのはあなたでしょうに」


 ため息交じりの言葉に、アニカは視線だけをあげた。


「テオフィール様を心配なさっていたではありませんか」

「それは、自分の立場とちょっと似てたから同情しただけよ」

「それでもじゅうぶんです。それに、人間である必要なんて、我々にはないでしょう。人でなくなっても、あなたはじゅうぶん魅力的ですから、安心してください」


 ヴァルターは、繋いでいた手をつなぎなおした。

 アニカはどこか呆然として、ヴァルターを見つめる。

 しん、と静寂が落ちた。

 ぴり、と法術師が放っている術で、少しだけ身体が痛む。


「……本当に一緒にいてくれるのね?」

「ええ。寿命が尽きるまで」

「そ、そんな先のことまで約束しないで。どうなるかなんて、わかんないんだから」


 消極的なアニカに、ヴァルターは少し考える素振りをみせた。


「でしたら、明日も一緒にいると誓います。明日になったら、次の明日も一緒にいると誓いますから」

「……うん。それなら」


 ごにょごにょと頷いたアニカに、ヴァルターは笑う。


「行きましょう」


 ヴァルターはにっこり微笑んで、アニカに向き直った。

 なにをするのかと思っていると、突然アニカの背に手を回して、ひょいと抱き上げる。


「ぎゃ! なにするの!」

「俗にいうお姫様だっこですね。途中で逃げられても困りますから」

「逃げないってば!」

「少しくらいいいじゃないですか。私にもいい思いをさせてください」

「……お姫様だっこのどこがよ。恥ずかしいだけじゃない」


 むぅ、と膨れてみせるアニカは暴れてみせたが、ヴァルターが離してくれないと知るや、諦めてむっつり黙り込んだ。


 とん、とヴァルターが地面を蹴る。


 そのまま、街と反対方向へ駆けていく。

 遠くなる故郷に少しの寂しさと、これからを思う期待でアニカの胸はいっぱいになる。


「どこかで落ち着ける街を探しましょうか」

「旅は嫌?」

「嫌ではないですけど、子どもを作るとなるとやはり落ち着いた家が必要に」

「ちょ、ちょっと待って!」

「はい?」

「子どもの件はまだいいって言ってないからっ」

「近い将来、了承していただけるものと思ってますから」


 にっこり素敵すぎる笑顔で微笑むヴァルターに、アニカは思わず言葉を失った。

 きっとこの笑顔には叶わない、そんな気がして、ふいっと顔を反らす。


「そ、そのうちね!」

「はい」


 そらした頬が真っ赤になっているのを見て、ヴァルターはくすりとほほ笑んだ。


 了

閲覧、ありがとうございました。

完結までお付き合い、感謝致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ