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第4章 2、嫌い
ややあって、おそるおそる手を伸ばしてきた。
アニカの頬を撫でて、涙をぬぐう。
「……すみません」
「信じたあたしが馬鹿だったのよ」
「アニカ」
「もう、何も知らない! 放っておいて!」
寝台から降りて、そのまま窓から身を躍らせた。
跳躍して、向かい側の屋敷の屋根へ飛び移る。次々に屋根を飛び移り、気がついたころには街外れまで来ていた。
街を見下ろせる丘に立ち、はっと自分の身体を見る。
せめて旅装束に着替えてからくればよかった。
アニカが着ているのは、貴族の令嬢が着ているような質のよいドレスだ。
「……どこかで取り換えてもらわないと」
換金屋で頼めば、喜んで交換してくれるだろう。
さすがに近隣の街ではいつテオフィールの手の者がくるかわからないので、夜のうちにいくつか街を超えておこう。
そうすれば、テオフィールはアニカを諦めるだろう。
きっと、ヴァルターも。
二人はまた共同して、新しい金の腕輪の持ち主を探すに違いない。
それでいい。
それでいいはずなのに、胸の奥が締め付けられるように痛かった。
騙されていたことが、堪えているのだろうか。
たぶんそう。
だから、人間は嫌いなのだ。
大嫌い。
もう、考えたくもなかった。
よろしくお願いいたします。




