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番外編 雄介と夕凪のお料理一

  俺と夕凪が結婚して半年が過ぎた。


  家事は分担していて料理と掃除は夕凪が俺は洗濯を担当している。夕凪の料理は母さんには劣るかもしれないが。それでも高校生の頃からお義母さんからビシバシとしごかれて和食と洋食くらいは作れるのだ。得意料理はカレーと肉じゃがであった。俺も簡単なのは作れるが。夕凪には敵わない。最近は凝った料理も作り出してぶり大根や鳥の唐揚げ、ポテトサラダなんかも夕食にあがるようになった。今日も夕食のメニューを一生懸命に考えているらしい。俺が会社に行こうとしたらこう訊かれた。


「……ねえ。雄さん。今日の夕食は何がいい?」


「……今日かあ。じゃあ、トンカツがいいな」


「わかった。頑張って作るよ」


  夕凪はそう言ってにっこりと笑う。俺は手を振って玄関のドアを開けた。カバンを持つ。


「んじゃ。行って来る」


「行ってらっしゃい!」


  見送りのキスはしないが。それでも夕凪は満面の笑顔で送り出してくれたのだった。


  会社に着き、同僚に挨拶する。沢村というんだが。俺と同い年の24歳で隣のデスクだ。よく一緒に居酒屋に飲みに行く仲だった。


「よう。沢村」


「ああ。おはよう。光村」


  沢村はニカっと笑って返事をする。割と明るくて気さくな奴だ。俺は自分のデスクについてパソコンの電源を入れた。


「……光村。今日も朝から機嫌がよさそうだな」


「何の事だ?」


「しらばっくれるなよ。お前、新婚ホヤホヤだからさ。奥さんと家ではいちゃいちゃしてんじゃねえの」


  沢村はニヤニヤと笑いながら言った。ちょっとこの笑い方はいただけない。こいつ、何を想像してやがる。


「……別に普通だが。うちの嫁について邪推されても困る」


「邪推ってなんだよ。俺は悲しいかな。独身なんでな」


「沢村。くだらない事言ってないで。仕事しろよ」


  注意すると「へーへー」と言って沢村は自分のパソコンに向かう。俺はため息をついて仕事に取り掛かったのだった。


「光村。今日は飲みに行こうぜ」


「悪い。夕凪に早めに帰ると言っていてな。また今度な」


  俺は終業時間になって沢村に飲みに行こうと誘われたが。丁重に断る。来週は埋め合わせをしないとな。そう思いながら帰路につく。速歩きで自宅に向かう。現在、俺と夕凪は小さな借家で暮らしている。いずれは俺の実家で生活する事になるだろうが。今は借家で我慢していた。十分くらい歩くと自宅にたどり着いた。ドアに鍵を差し込んで開けた。大きな声で呼びかける。


「……ただいま!」


「あ。お帰りー!」


  すぐに夕凪が出迎えてくれた。今は真夏なので彼女はラフな半袖の青いシャツに黒の半ズボンという格好だ。俺もクールビズでポロシャツにズボンという格好だが。革靴を脱いで上がる。


「じゃあ、手を洗って着替えて来て。お仕事もお疲れ様」


「ああ。夕凪もお疲れさん」


  そう二人で言い合い、俺は寝室に向かう。借家は平屋建てで二階がない。襖を開けて中に入った。閉めてから蛍光灯の電源を入れる。カチッと音がして部屋が明るくなった。カバンを机の上に置く。タンスに向かい、着替え用のシャツとズボンを出す。ポロシャツとズボンを脱いでからもそもそとラフなのに着替えた。ふうと息をついた。洗面所に行き、手を石鹸で洗ってからキッチンに行った。


「あ。雄さん。トンカツができてるよ」


「お。うまそうだな」


  テーブルの上を見たらきつね色に程よく揚がったトンカツと千切りにされたキャベツが盛り付けられたお皿にホカホカと湯気が出るご飯、お味噌汁にほうれん草のお浸しがあった。どれもうまそうだ。俺は椅子を引いて座った。


「……いただきます」


「雄さん。手は洗ってきた?」


「洗ってきたぞ」


  答えながらお箸を手に取る。トンカツにソースをかけてから一口大に切ってあるのを口に運んだ。ジュワッと滲み出る肉汁にサクッとした衣。ソースの味も相まってめっちゃうまい。ご飯も食べるとトンカツの味と甘味が混ざって唸った。夕凪、腕を上げたな。ごくんと飲み込む。お味噌汁を吸い、お浸しも食べた。お味噌汁もおダシが効いているしお浸しも薄味だが。ちゃんと健康を考えた味と言えた。


「……うまい」


「ふふ。そうかな?」


  素直に言うと夕凪は嬉しそうだ。俺は笑いながら頷いた。明日は俺が夕食を作ろう。そう思うが。ふと夕凪に何がいいかを聞くことにした。


「夕凪。明日は俺が夕食を作ろうと思うんだが。何か食べたい物はないか?」


「……え。そうだなあ。雄さんの得意な餃子が食べたいかな」


「ん。わかった。餃子な。後は肉団子のスープも作るよ」


「やった。あ、青椒肉絲(チンジャオロースー)もできれば作ってくれる?」


「いいぜ。明日は中華オンリーだな」


「そうだねえ。楽しみだなあ」


  夕凪は嬉しそうだった。俺は冷蔵庫に材料はあったかなと思考を巡らせた。後で要チェックだな。そう思いながらトンカツを口に運んだのだが。パクパクと食べる内にご飯が無くなった。仕方ないので自分でおかわりをしに行く。こうして俺はご飯を二杯食って完食したのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 良い微糖でした∩^ω^∩ 微糖だと余韻を楽しめて良いと思いました(^^) 甘々の「きゃ〜♡」というのも良いですがあれはコーヒー入りますので(笑)楽しむ余裕がない事に気付きました(笑) 夕…
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