その6 彼女は少々イタイ子です。
「こんちゃー」
カウンター内で本を読んでいた上級生らしき女生徒に寺山芳樹が挨拶をする。
「こんにちは、寺山君。今日は当番?」
「そうっす。カウンター代わりますよ」
なに、その「っす」は? なんでいきなり体育会系?
それに……。
なにデレてんのよ!
その顔よその顔! ワタシといる時にそんな顔したことないよね!
はぁ……。なるほど、ワタシの推理は当たってたんだ。
図書室で出会った誰かさん、もしくは図書委員の誰かさんに一目惚れして、そのコに会うために通い詰めるようになった、と。
それがこの先輩ってわけだ。ふーん。
……なによ。どこがいいっていうの?
顔ならワタシのほうがいいんじゃない?
それにスタイルだって……、うん、胸だけならワタシの勝ち。
「ちょっと! 今変なこと考えてなかった?」
ギクッ!
「いえ。そんなことないです、ないです」
ビックリした。
ワタシに言われたのかと思った。
彼がキョドりながら両手をふっている。
あ、さては同じようなこと考えていたな、コイツめ!
さて、彼が図書室に来るようになったのは、この先輩がいるから?
このごろのよそよそしさもそのせい?
うう、納得できない。それはないんじゃない!
なんか悔しい。
でも、勝てるよねワタシ。この先輩相手だったら勝ってるよね。
顔、胸、若さ。どれをとっても負ける要素無し。列挙法だったっけ。
とその時、この場合では最凶な意味を持つ熟語が頭の中に浮かんだ。
(相思相愛)
パン!本が閉じられる音。
そして、カウンターをはさみ熱い視線を交わす二人。
え、なに? 二人の世界? 惹かれあう二人? やだ、やめて!
「で、そちらはカノジョ?」
は?
あ、そう見えるんだ。
あれ、じゃ二人のことはワタシの勘違い? 早とちり? 良かったあ。
「いえ、単なる同級生です。借りたい本があるみたいだったんで」
くっ、なんで即答? しかも「単なる」はないでしょ! 蹴るぞ!
「っそ。じゃあカウンター当番は私がやるからいいわ」
じゃあ? ……もしかしてワタシたちを二人きりにさせてくれようと?
「えっ、せっかく来たんですけど」
何その不満気な顔は? この先輩の気遣いを無駄にすんなあ!
「カノジョのエスコート。それが今日のお仕事ね。頑張って」
今の「カノジョ」って、そっちの意味よね。
へへ。そっか、やっぱりそう見えるんだ。ふふーん。
なんだ、この先輩いい人じゃん。勝手に敵認定しちゃって悪かったな。
となると、やっぱり彼はカレシだよね。
カレシとカノジョ。いい響き。
それにエスコート? カレシに手をひかれ?
うれしはずかし図書室デート。キャハッ!
うーん、いいかもしれない! ううん、いいよ、絶対!
ハァァ……。
あれ、彼が変な顔して見てる。やだ、いまワタシどんな顔してた?




