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図書室と先輩~ネオ!~  作者: にま
彼の憂鬱、彼女の鬱憤
4/102

その4 彼女もお約束を守る良い子です。

「ねえ、ワタシも図書室行く!」


「えっ」


 HRが終わり、教室を出ようとした寺山芳樹(カレ)を思わず追いかけた。本好きとは思えない彼が、嬉々として図書室に向かう理由。それを知りたい。

 受け入れたくない一つの想像。果たしてそれは合っているのか? それを確かめたい。

 朝のこともあるから断られるかもしれない。でもその時は、借りたい本があると言えば否応もないはず。


「じゃあ一緒に行くかい?」


 少し身構えたワタシはその必要がなかったことに安堵する。ああ、そうだ。彼はひきずらないタイプだった。こういうところは変わってないや。嬉しいな。


「うん」


 少し戸惑ったような顔で待ってくれる彼の元に駆け寄る。歩数にして約7歩。この時ワタシは鼓動が少し早まるのを感じる。一緒に歩くのは久しぶり。ちょっと緊張するかな。


(少し大人っぽくなったな)


 首筋から肩にかけての線が太くなって、見た目の頼りなさが薄れている。顔はまだ幼さを残していて、そのアンバランスさが逆に魅力に感じる。

 まだ成長途中なのだろうけれど、それでも異性を意識するには十分すぎる。闊達なところは変わらない。イケメンというわけでははないけれど、女子ウケも悪くない。

 クラスでの好感度はNO.1。ソースはワタシ。

 そういえば、中3の時、こんなふうに並んで歩いたことがあったな。

 前の日に風邪で休んだワタシが、職員室にプリントをもらいに行った時、何か悪さをして先生に絞られていた彼と合流。

 いつものたわいのない会話の中でふいに彼に言われたっけ。

「おまえって美少女だよな」

 あの時内心は瞬間湯沸かし器でピー! でも先に手が出ちゃって。

 あれは失敗だったな。もし同じシチュエーションになったら、顔を赤らめてモジモジしてみよう。

 今度は大丈夫。できるはず。まあでも、そういうことにはならないだろうけど。

 そうしてワタシたちは、担任や他の先生たちのことを話題にしながら図書室のある特別棟に向かった。


「やっぱり背ぇ伸びた?」


 途中、彼に聞いてみた。隣に並んだ時に違和感があったから。


「少しだけ」


 その少しは重要だ。

 ワタシの彼を見る角度も「少し」変えなければならないのだから。


「男の子ってスゴイよね。ちょっと見ない間にぐんぐん伸びちゃうんだから」


「いや、毎日会っているでしょ」


「あれ、そうだっけ」


「一応クラスメイトで席も隣なんですが?」


「あはっ、そうだったー」


 なんだろう? すごく楽しい。

 彼の表情もだいぶ柔らかなっている。


「そういや、新開も」


「うん、なぁに?」


 漫画で覚えたテクニック。首をかしげて斜め45°からの上目遣い。

 かわいく見えるかな。


「だいぶ育ったよね」


 なっ! そっちか。そっちに行くか。

 変わってない。やっぱり変わってない。このスケベ!


「!」


 って、どこ見てるの。

 その目よその目。なに服すかして覗き込もうってしてるのよ!  

 

「テーラーヤーマーッ」


 バシッ!


「うおっ!!」


 あ、やっちゃった。

 モジモジが……、恥じらいが……。はぁ、やっぱり失敗する運命なのねワタシ。


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