17-3
「……お父様。つまりお父様は、王妃様……ソフィア様と第一王子の邪魔をするために側妃を送り込んだのですか? その上ありもしない噂まで流して、ソフィア様が苦しい立場に置かれるよう誘導していたというのですか……?」
私の問いに、お父様は悪びれることもなく答えた。
「ああ、そうだ。ソフィア様には目を覚ましてほしかったからな」
世界がぐらりと揺れるような感覚がした。
エリオット様は、昔から私の生家を好きではないようだった。最初に会った日から、私と婚約するのは国王陛下やシャノン公爵に嫌がらせをしたいからなのだと言っていた。
その理由は、きっと……。
「本当にお前には失望した。ようやく役に立ったと思ったら、ラピシェル帝国に行きたいなどと言ってエリオット様を困らせるなど……。あの方はソフィア様がこの世に残した唯一の存在なのだ。絶対に我がシャノン家との縁を断ち切らせてはいけなかったのに」
お父様の表情に一切罪悪感は見られない。
心が冷えていく気がした。
若くして亡くなられた薄幸の王妃様。彼女が追い詰められて弱ってしまったのは、お父様のせいだったのではないか。
私は静かにソファから立ち上がる。
「お父様、こちらを向いていただけますか」
「は?」
私は座っているお父様を見下ろしながら、怪訝な顔をする彼の服を引っぱった。
それから手を振り上げて、力の限りその頬を引っぱたいた。
パシンと乾いた音が室内に響く。
最初、何が起こったのかわからなかったのか、お父様は呆然とこちらを見上げていた。
それからたちまち目を吊り上げ、凄まじい形相で私を睨んだ。
「お前、自分が何をしたのかわかっているのか!? 父親に向かってこの無礼者が!!」
お父様は立ち上がり、私の首を掴んで持ち上げる。首を絞められた苦しさに呻き声が漏れた。
息苦しさに耐えながら、どうにか口を開く。
「お父様、あなたのやったことは最低ですわ……!」
「お前に何がわかる! 知ったような口を利くな!! 私はあの方の幸せを心から願っていたのだ!!」
「じ……、実際王妃様は不幸になったではありませんか! エリオット様も巻き込んで! お父様に王妃様への愛を語る資格はありません……!!」
そう言うと、さらに首を強く締められる。
ごほごほと咳が漏れた。苦しい。でも言ってやらなければ気が済まない。
シリウスがお父様に噛みついて止めようとしてくれるけれど、お父様にはシリウスの攻撃はすり抜けてしまい届かない。
部屋の端で控えていた侍女は、青い顔で私とお父様を見ていた。
苦しくてだんだん意識が朦朧としてくる。
それでも、私は何とかお父様の手に指をかけて、力を振り絞って言った。
「お父様、エリオット様に謝ってください……!」
お父様の表情がさらに歪んだ。
首を絞める力が強まっていく。苦しくてもう意識を保っていられそうになかった。
するとその時、突然部屋の中を大きな風が吹いた。
窓を閉め切ってあるはずの室内に、まるで嵐のような風が吹く。
「なんだ……?」
お父様は警戒したように辺りを見回した。
その拍子に手の力が緩み、私は急いでお父様から離れた。痛む喉を押さえながら大きく息を吸い込む。
その間にも部屋の中には嵐が吹き荒れ、その中を無数の光が舞っていた。
よく見ると、その光は精霊の形をしていることに気づく。魔力を抑えていないのに精霊が見えたのは初めてだ。
「一体なんなんだ……!?」
お父様は青い顔をして叫ぶ。




