表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています  作者: 水谷繭
17.過去のこと

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/96

17-2

「なぜそこで王妃様の名前が出てくるのですか」


 尋ねると、お父様は苛立たしげな顔をこちらに向ける。それから、血走った目で言った。


「あの方の高潔で美しい魂は、あの方がこの世を去った後も受け継がれるべきだからだ」


「どういうことですか……?」


「お前に説明してもわからないだろう。しかし、私はあの方と心の深い部分で繋がっていたのだ。私にはあの方の願いがわかる。私はソフィア様に一番近しい存在として、あの方の意思を受け継がなくてはならない」


「近しい……? あの、お父様……、王妃様とはどのような関係だったのですか? まさか、恋人か何かだったのでしょうか」


「違う。私とソフィア様はそんな浅い言葉で言い表せるような関係ではない。ソフィア様は私がいくら真剣に交際を申し込んでも、私と結婚してシャノン公爵家の女主人になってほしいと頼んでも頷いてはくれなかったが、あの方は私を信頼していてくれたはずだ。私はあれだけあの方に心を尽くしてきたのだから」


 お父様は滔々と語る。


 私は困惑してしまった。お父様の話は随分と一方的に聞こえるのは気のせいだろうか。


「ソフィア様は本心では私を好いていてくれたはずだ。しかし、貞淑な淑女であるソフィア様には、両親の言いつけに背くことが出来なかったのだろう。ソフィア様の生家であるハンフリー家は、随分と娘を王子と結婚させることに執着していたからな」


 お父様はいまいましげに言う。


「ソフィア様はきっと王宮に入りたくなどなかっただろう。しかし、不幸なことに当時の国王陛下はソフィア様の聡明さや美しさを気に入り、第一王子の妃になってくれないかと打診してきた。ソフィア様もそれを承諾してしまったのだ。あの方には陰謀渦巻く王宮の暮らしなど向かないのに……」


「それは……」


 王妃様は本当に第一王子の婚約者になることを嫌がっていたのですかと尋ねたかった。しかし、滔々と語るお父様の狂気を孕んだ目を見て、言葉を飲み込む。


「だからソフィア様に考えを改めてもらえるよう、シャノン家の分家から側妃を出させたんだ。わざわざ第一王子の気に入りそうな娘を選んでな。目論見通り国王は側妃をいたく気にいって、ソフィア様を放っておくようになった。第一王子から見放されたソフィア様は自由になれるはずだったんだ。それなのに……」


「……え?」


 急におかしなことを話し出すお父様に困惑してしまった。


 側妃……? 誘導した?


 お父様は何を言っているのだろう。そんな話、聞いたことがない。


 私の困惑をよそに、お父様は話を続ける。


「ソフィア様は私の言葉にちっとも耳を貸してくれなかった。私と共にくれば、何の憂いもない生活を約束するとお伝えしたのに……。あの方はあくまで王宮に残るとおっしゃったのだ。きっと、国王陛下やご両親の言葉に逆らうことが出来なかったのだろうな。あの方は責任感の強い方だったから……」


 お父様は憐れみの混じった口調で語る。自分の言葉に間違いがあるかもしれないなんて、少しも考えていない様子だ。


 お父様は熱に浮かされたように、延々と王妃様について話し続けている。


 だから自分はソフィア様が考えを改められるよう、心を鬼にして側妃への支援を続けた。彼女が早く王家に見切りをつけられるように、王宮内に彼女の悪い噂を流して居心地の悪い場所にした。彼女のそばに仕えていた侍女を買収して、嫌がらせをするよう仕向けた。


 しかしいくら心を砕いても、彼女は決して自分の元へ来てくれることがなかった……。


 お父様は、まるでどうにもならない悲劇に見舞われたかのように、悲しげな口調で語っている。


 私は混乱する心をどうにか落ち着かせて尋ねた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ