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金の力はパステリー  作者: 河合 翔
金の力はパステリー(2)
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第五十五話 梨璃雪の心情

「で、それは何だ?」

「ああ。この病は火を近くで干渉したり肌で感じ取ったりすると恐怖を覚えるものでな」


 すごくそのまんまだな。


「発祥する原因となるのが、幼少期の頃火炎に関する何かしらのトラウマから来ているようなのだ。理由さえ解って、それを克服しようものなら、自然的にこの病は消える」

「原因となるもとを断たねえといけないってわけか。途方もなく大変そうだな」

「そうね。とても大変そう。でも、火って単語を口にしてた紫依ちゃんは、なんだか悲しく辛そうな表情を浮かべていたわ」


 一度金に関するトラウマをを克服した経験を持つ椿姫は何か決意を固めたように、


「あたし、ちょっと紫依ちゃんに会ってくる。お節介になるかもしれないけど、でもやっぱりほっとけないわ。見て見ぬふりをするなんてあたしには出来ない!」


 今まで我関せずだった椿姫が、ここまで気力を見せるとは。


 椿姫は鞄だけ持つと、体操服のまま教室を飛び出していった。不謹慎かもしれないが、廃止され無くなりつつある今、ブルマ。すごくいいと思うぞ、ブルマ。うむ、嫌いじゃない。



 椿姫の体操服姿を見て不埒な思考回路に弄り変えていると、


「さて、俺も本部へと連絡を入れねばならないからな。長居無用でそろそろおいとましよう」

「えっと、私もパステリーコントロールの時間が迫ってきてるので、お先に失礼します」


 壁から背を離す御堂と律儀にも礼をする梢の二人は、並んで教室を後にしていった。


「……んじゃ、俺はそのまま岐路きろに着きますか」


 いつの間にかの流れ解散に乗じて去って行こうとするところを、なぜか知らないが瀬央に肩を捉まれ脱出を阻止される。


「時間があるなら、ちょっと付き合いな」


 おおい、そこの兄ちゃあん、ちょいとツラ貸しなよぉと同等の意味を含む誘いに有無を言わせぬ鋭い眼光のセットでは成す術がないのも当然で、「はい」と軽く受け答えをしてしまった遼は可愛い(けども)彼女とは縁遠く不良娘に連行されるが如く、体操服の袖を引っ張られ、とある場所へと移動する羽目になった。


 ……鍵、開いたままなんだけどいいのだろうか。



 二人とも体操服なため、どこかの運動部員と素で間違えられそうなものだが、体操服にぴったりと張り付いて揺れる瀬央の大きな胸と、この歳でも見れるのかと歓喜の声を挙げたい本心のもと、ブルマにチラリと視線をやって、乗り気ではない足を傾ける遼は、ムッツリスケベにランクダウンしてもなんらおかしくはないかもしれない。




                  $ $ $




 ふぅぅ、今日は午前の授業だけだったのにずいぶんと疲れたなぁ。部屋に戻ったらベットで横になろうかな?



 肩がこる原因は胸にあるかもしれないが、全く気にも留めようとしない梨璃雪は、一人女子寮の中を歩いていた。


 内心とは裏腹に足取りを軽くして、自室の二○三号室まで迫ろうとしていた。エレベーター環境のないのは男子寮と同じで、奥の階段から登ってくる人物にはとても心当たりがあり、方向を逆にして話し掛けようとする梨璃雪だったが、急遽きゅうきょ思い留まる。


 転校二日目にして体操服を身に付け寮室へと向かう揺寒の後方、なんとそこには、


「……遼?」


 若干死角はついてるものの、あと少ししたら十分視界に入る位置にもいて、ここでもわたわたと動きを作ってしまう。



 ど、どうして女子寮に遼が? それに、揺寒ちゃんと一緒なんて、少し意味深……わわ。私何考えてんだろ。こんな時に! そ、そんなことより大分近づいてきて――



「何びびってんだよ。男なら腹括ってドンと構えな! まあ、見つかった時は自業自得ってことで一人せっかんをくらうこった」

「んな理不尽な! おっと声を大きくして万が一俺の姿を見られては、ん? げっ! 早速見つかって……あん? なんだ梨璃雪か。びびらせんなよ、寿命が一年と二ヶ月縮まったぜ」


 おっとりとは異なり男勝りに意気を貫く揺寒と、せわしくすこぶる遼を見比べ、今更ながらに見つかってしまった! とタイムラグ後の驚きを示す。普通逆の立場だというのに。


「お、お二人とも~、こんなところで奇遇だね? だよね?」


 僅かながらに声が上ずっている梨瑠雪には気付かず、手を振りつつ遼が返答した。


「ああ偶然じゃなくきっと奇遇だな。それで合ってる。あと一つ直言しておくことがあるんだ、聞いてくれ。今、ここ、女子寮にて、俺と出会ってしまったことを他言するなよ。というか頼む!」

「え、えっとお……」


 哀願する遼はおいとくとして、いまいち状況を把握できない梨瑠雪に「はぁ」と一息吐いたのが余裕でいる揺寒だった。もしかしたら遼に対して吐いた溜息だったかもしれないが。


「あたしがこいつを呼んだんだ。それなりに大事な話があるってな。不条理ながらも察してくれ」

「あぁ理不尽な要求に対する実感だけはあったのか」

「うるさいな。少し黙っとけよ」

「なぁにぃ?」

「ふん!」


 まるで白昼からの痴話喧嘩だ。いや、白昼なんて関係ないかもしれないが。


 そういえば、遼が下駄箱から抜き取った手紙って、もしかして揺寒ちゃんからだったんじゃ……。


 決め付けも早く、勝手に脳内で『手紙=ラブレター』へと変換操作を行っていく。



 そんな中揺寒は「おっと」と口を突いて、


「勘違いだけはするなよ。こいつとはリアルになんでもないんだからな。なっ」

「そうそう、瀬央とはなんもナッシング。ホント、この件に関しては他言無用で内密にな?」

「う、うん」

「女子寮の校則如きにビクビクすんなってんだよ。それじゃウチ等こっちだから、またな」

「ちょっ、置いてくなって。んじゃ梨璃雪。また明日」

「またねー……ん」


 感情の変化に後ろめたさを感じつつも、揺寒と遼の遣り取りに、やっぱり何かあったんじゃと隠し事を見破る面持ちで、胸を詰まらせる梨璃雪。



 あの手紙、もしかしてラブレターじゃ、ない、よね……?



お久しぶりの投稿になります、SYOUです。

ちょっとした家庭の事情があって投稿を断念していましたが、大分回復の兆しが見え始めたので再度投稿を頑張っていきたいと思います。


万が一にも投稿をお待ちの方がいましたら、大変申し訳ありませんでした・・・(いるかなぁ・・・)。

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