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お芋ちゃんの恩返し?②

 ベルちゃん大変!

 これ…とうとう恋の季節がきたんでねーの?

 自分のベッドを二度見どころか現在五度見中の、ベルこと成留鈴花でございます。


 部屋に戻ったらね…私のベッドの上に、置いてあったの。

 すっごくおっきな真っ白い何か。

 プ、プレゼントかな?

 だ、誰かな?ドキドキ。

 

 あ?なんだこりゃ…すっごく軽い。

 バスケットボール以上の大きさなんだけど…軽っ。

 これ…恋の季節ではないっすね…絶対。

 ベルちゃんごめん、ぬか喜びだったよ。

 

 でもこれ…本当になんだろか。

 とにかくみんなに聞いてみよう。

 私が知らないだけで、異世界ではあたりまえの何かかもしれないからね。


 ◇◇◇


「せんせ~、アリーせんせ~。これ、私のベッドの上に置いてあったんだけど、貰っても良いのかなぁ」

「これ…なぁに?…植物かしら?」

「知らないの…私のベッドの上に置いてあって」

「うふふ。あらあら?誰かからのプレゼントかしらね?」


 うん、お互い脳内お花畑だな。


「じゃぁ、貰っても良い?」

「もちろん。ベルのベッドの上にあったんでしょ?好きにしなさいな」

「わー!ありがとう!!」


 一応、何だか知らないけど所有権ゲットよ。

 煮るも焼くも蹴りとばすも…もう私次第。


 ◇◇◇


「あらあらまぁまぁ~、大きいけど…これ、なんだか蚕の繭に似てるわねぇ」

 

 そう言ったのは、孤児院で私たちのお世話をしてくれてる鳥人族のふっくらさん。

 確かに、サイズを気にしなければ繭っちゃ繭に似てる。

 …いや、そう言われれば繭にしか見えなくなってくる。サイズは無視してだけど。

 ちょっと面白いから、糸が取れるかやってみようかな~。

 …取り方、知らんけど。


 あれ、小学校でやった?蚕の繭から糸とるやつ。

 私の通ってた小学校でもやった…だけどさぁ、内容なんてもちろん何一つ覚えてないからね…。

 だいたい異世界転生とかする人って、そういう事をばっちり覚えてるもんじゃないの?

 いや…アニメとか小説の話だけど…。


 もしこれが繭なら、何か知ってるかもしれないって思って、裁縫親衛隊に話を聞いてみる。

 そうしたらね、なんと、お針子志望のお姉さん、レイラが嬉しい提案をしてくれたの。

 レイラ自身は全然わからないけれど、職業訓練で通ってるアトリエに、すっごく糸に詳しい人がいるから、その人に聞いてきてくれる、って事になったのよ!


 ◇◇◇


「レイラ!お帰り~!!」

「ベル~、あれ、大変だよ~!」

「え?なんかマズい物だった?ど、毒があるとか?」

「違う違う。なんかね、すっごい珍しい蚕の繭で…それの巨大化繭じゃないかって…」

「珍しい繭?まぁ…大きいもんね」

「大きさもそうだけど…アトリエの人がね、ちょっとほぐれてたところの糸を調べてくれたの。そしたらさ…ボヨンビヨン・モリっていう蚕の巨大化繭じゃないかって…」

「ぼよよん」

「ボヨンビヨン・モリ、ね」

「それ…何?」

「うん、ビヨーンって伸びる、とっても丈夫な糸が取れる蚕の事なんだって」


 色んな意味で、な・に・そ・れ!!

 …いや、むしろボヨンがなんやねんって話を…あ、それはどうでもいいのね…。


「普通は人間族の大人の指先位の大きさなんだけど…」

「え?逆に普通はそんなに小さいの?」


 そこは地球と同じだった。


「そう、それが普通の繭サイズ…でね、アトリエが経営してる製糸工房の人にさ、『こちらで巻糸に致しますので、10分の1程だけでも、販売しては貰えないでしょうか?もちろんお譲り頂けなくても、製糸は是非うちでさせて頂きたく…』とか、言われちゃったんだけど…」

「ひぇーー!なんか凄いものだったんだねぇ」

「うん、そうみたい。それで…ごめん!すっごい高級品なんだって聞いたら、持って帰るのが怖くなっっちゃって…アトリエに預けてきちゃった。ベルはあの繭をそのまま取っておきたいの?」


 いや…逆にそれはすんごく困るわ。


「まさかぁ!巻糸にしてくれるなら、こっちこそお願いしたいよ。そのままアトリエやら工房の人とで適当に取って貰っちゃって構わないし」

「ダメダメ!すっごく珍しいものなんだよ。貴重な蚕の糸を扱えるチャンスを頂けるなら、喜んで無償で巻糸を作りますって意味なの。売る気があるなら、先生に言ってちゃんとしてもらわなきゃダメ!!」

「あっ!そうだよね!!アリー先生に話してくる。前に聞いた時は、私が貰ってもいいって言ってくれてたけど…こうなると話は別だもん」

「うん…これは先生に相談した方が良いと思う。アトリエにも先生と話をしてもらうようにって言っておいたから」

「ありがと~。おおごとになっちゃって…ごめんね」

「ふふ。アトリエでいつもは顔色一つ変えない人がさ、きゃあきゃあ言ってるのが見られて、こっちはすっごく面白かったからさ、気にしないでよ」


 ◇◇◇


 あれ…そう言えば、蚕って確か何個かで一本の糸にならなかったっけ…違ったっけ。

 小学校の授業、あだ名付けられた事しか覚えてないわ。

 蚕の授業ねぇ…恐ろしいほど記憶にないんだよなぁ…。

 おっきいから、実は一個の繭で糸が出来たりして…まさかね。


「ねぇ、蚕の糸って一個の繭から糸ができるの?」

「それがね、普通だったら何個かの繭からでる糸を紡いで一本の糸にしていくらしいんだけど、巨大な繭の糸ってとにかく丈夫でね、どういう訳か太さが均一なものばかりなんだって。紡がないで丈夫な糸が取れるらしいよ。それもあって、もの凄く珍重されてるらしいんだけど。なんだっけ…ひとつ…一つ繭糸って言うんだってさ」

「へ、へ~」


 そのまさかだったー!

 もう蚕糸の概念が変わっちゃってる気がしないでもないけども!!

 これは蚕糸カテゴリーに入れて良いの?


「巨大繭の糸ってだけでもすっごく珍しくって、数十年に一度あるかないかなんだって。普通の蚕の巨大化繭だと、私の握りこぶしくらいになるらしいけど。それがボヨンビヨン・モリであの大きさでしょ?製糸工房の人が興奮しちゃって…。ボヨンビヨン・モリってね、山の中で生息する野生種…工房で養蚕できない種類の蚕らしいの。しかも、同じ場所を生息域にする事がないらしくって…だから繭も偶然でしか、手に入れる事しかできないみたいなんだよね。あそこまで大きければ目立つかもしれないけど、普通は指先サイズだもん。ほぼ見つけられないんだって」

 

 レイラは製糸工房の関係者とお話できるようになったって、すっごく喜んで…私のおかげだってお礼を言ってくれる。

 

 うん…私、何にもしてないけどね…。

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